自由人

豊島与志雄





悲しみにこそ生きむ
楽しさにこそ死なむ
 この二つの文句が、どうしてこんなにわたしの心を乱すのであろうか。二つが妖しく絡みあい、わたしの胸に忍びこみ、わたしの心を緊めつけて……誘うのである。いずこへ誘うのか。何の誘惑なのか。
 その文句を、わたしは思い違いしてるのではあるまいか、そんな気持ちがふっと湧くこともある。だけど、いいえ、わたしの思い違いではない。たしかにそうなのだ。あの人は、机の上の原稿用紙に、鉛筆でいたずら書きをしていた。鳶が鳴いていたので、片仮名で、ピーとか、ヒョロとか、ヒョロヒョロとか、そんなのが幾つも書き散らされてるうちに、とつぜん、悲しみにこそ、が二度つづいて、生きむ、生きむ、生きむ、と三度かさなり、それから、楽しさにこそ、が一度、そして、死なむ、死なむ、と二度で終った。たしかに、悲しみに死ぬるのでもなく、楽しさに生きるのでもない。いいえ、そんなこととは全く違う。
悲しみにこそ生きむ
楽しさにこそ死なむ
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 


 
 


 
 
 
 
 

 
 
 

 
 


 

 調

 
 稿
 
 
 姿
 

 
 
 

 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 便
 
 調

 調
 
 

 
 
 


 
 

 

 

 


 
 
 
 



 
 
 
 調
 
 
 使
 
 

 


 姿
 
 
便



 

 









 

 
 




 

 

 

 


 
 
 
 宿
 
 
 



 
 
 
 

 
 
 

 調
 

 
 調
 調
 西
 姿







 調



 ※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)

 




 

 





 
 
 使
 
 
 
 
 





 調
 
 


便



 









 



 
 



 


 

 
 祿
調















調
 

 
 
 

 






 




 






 

 

 

 
 禿祿
 


調


 

 


 

 
 

 
 

 
 姿
 

 

 



 

 



 

 
 








 

 
 
 








 






 


 
退
 

12123



 








 

 

 



 
 

 使




 














 

 

 




 

 
使
 










 

 調
 



 
 


 
 調

 
 


 


 

 
 

 

 

 

 





 

 



 

 














 




使





 


 

 


 


 



 

 禿
 
 

 
 

 
 


 


 



 



 
 



 


 

 


 



 

 




 

 
 
 









 
 


 

 調
 








 

 調調使調
 
便
便


 









 

 







 

 
 調
 
 
 

 

 

使
 

 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 沿
 使
 
 
 
 
 
 
 
 調
 沿姿
 姿
 
 
 
 
 使
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 調使
 



 
 
 
 

 
 
 
 
 西
 

 

 
 

 

 
 



 稿退
稿
 

 
 




 






 


 

 
 





 
 

 




使
使
 
使
 
使
使使



 
 


 
 
 
 
 

 





 



 

 



 



 


 


 



 
 

 

 




 
辿

辿
辿退







 

 
 
 
 


 使調調
 調調使
 
 











 






 

 
 
 






 

 



 

 
 

 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 辿
 
 
 宿
 
 



 
 
 

 
 調※(「穴かんむり/兪」、第4水準2-83-17)

 



 
調
 
 
調
 退
 

 

 

 
 
 
 姿



姿


 



 


 





 

 

 





使










 調

 


 

 


 

 





 

 





 




 
 



 

 
 
 
 
 
 

 
 




 


 

 禿
 姿

 


 



 

 



 

 

 調
 
 





 

 


 







 
 
 
 

 


 
 
 

 





 
 
 

 

 




 
 





 






底本:「豊島与志雄著作集 第四巻(小説※())」未来社
   1965(昭和40)年6月25日第1刷発行
初出:「芸術」
   1948(昭和23)年7月、9月、11月
   1949(昭和24)年1月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※「憂鬱/憂欝」の混在は底本の通りです。
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年7月4日作成
2011年4月14日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




●表記について


●図書カード