二都物語

上巻

チャールズ・ディッケンズ

佐々木直次郎訳






綿()()()()()()()  ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()()()
 
 
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一九三六年八月
佐々木直次郎




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ロンドン、タヴィストック館にて、 一八五九年十一月。
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 ※(「木+覊」の「馬」に代えて「月」、第4水準2-15-85)





〔緒言〕

  
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タヴィストック館  一八五一年から五九年までの間ディッケンズの住んでいたロンドンの家。

〔第一巻 甦る〕

〔第一章 時代〕
  
心霊的な啓示が…………  迷信が盛んであったことをさす。
  
ウェストミンスター  今日はロンドン市の一区であるが、以前は別の町であったのである。旧ロンドン市の西南にある。
  
ただの音信が、つい先頃、アメリカにおける英国臣民の会議から…………  一七七五年の七月にアメリカにおけるイギリス植民地の住民から「代議士選出権なき課税」に対してイギリス本国に抗議して来たことをさす。
この音信の方が……人類にとってもっと重要なものであるということが…………  これがアメリカ独立戦争の導火線となり、アメリカ合衆国の独立によってデモクラシーの思想は新旧両世界を風靡し、遂にフランス革命が起るに至ったからである。
楯と三叉戟との姉妹国  イギリスをさす。「楯と三叉戟」は海神ネプテューンの標章であり、イギリスの紋章ではブリタニアをあらわす女人像が海の女王の象徴として楯と三叉戟とを持っているのである。
紙幣を造ってはそれを使い果して…………  財政窮乏のために紙幣を濫発して、国勢が衰えつつあったことをいう。
歴史上にも怖しい……枠細工  フランス革命当時に用いられた歴史上にも有名なかの断頭台をさす。枠細工の上の方に重い刃物が附いていて、それが差し伸べられている処刑者の首へ滑り落ち、その首が転がり込む嚢が附いていたのである。
本市  ロンドン市の中央の最も繁華な商業区。昔の本来のロンドンの区域であった処。
「首領」  当時の有名な追剥の名。
  宿宿宿
ターナム・グリーン  ロンドンの西方の郊外にある地名。
喇叭銃  口径の大きな、銃口が漏斗形をした、短い、往時行われた銃。
セント・ジャイルジズ  ロンドンの、本市の西、ウェストミンスターの北東の一地区。貧困と悪行との一中心地として名高かった。
  西
ウェストミンスター会館  昔のウェストミンスター宮殿の一部。ここで国事犯に対する審問が行われ、その入口のところで時事問題を論じたパンフレットが焼棄されたのである。
〔第二章 駅逓馬車〕
シューターズ丘  ロンドンの南東八マイルのところにあるかなり高い丘。
ブラックヒース  シューターズ丘とロンドンとの途中にある広濶な公有地。
  綿
宿駅  駅逓馬車の継替えの駅馬を繋留してある家。
一クラウン  イギリスの五シリングの銀貨。
半ガロン  一ガロンは約二升五合の液量。
  西
もし甦るなんてことが流行って来ようものなら…………  このジェリーの言葉の意味はずっと後になって明かになる。
〔第三章 夜の影〕
忍返し  人の忍んで越え入るのを防ぐために、尖頭を外にして塀や垣や柵壁などの上に打ちつける釘状のもの。ジェリーの髪の毛を忍返しに喩えることは、これから後たびたび用いられる。
蛙跳び  前方に屈んでいる人の背に手をつけてその人の上を跳び越す遊戯。馬跳び。
犂  牛または馬に曳かせて耕す鋤。
〔第四章 準備〕
ロイアル・ジョージ旅館  当時はジョージ三世の治世であり、その名を屋号にした宿屋などが多かった。
カレー  ドーヴァーの対岸にあるフランスの港。
海の駝鳥のように…………  駝鳥は追い詰められると頭だけ砂の中へ隠して見えないつもりでいると言われているので、海から上って頭だけを断崖の中へ突っ込んでいるようなドーヴァーの町を、戯れてその駝鳥に喩えたのであろう。
夜間にぶらぶら歩き※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)って…………  対岸のフランスからの密輸入が盛んに行われていたことを暗示するのである。
クラレット  ボルドー産の赤葡萄酒。
  
少し外国訛りがあったが…………  その理由は少し後になって判明する。
ボーヴェー  パリーの北方約四十マイルのところにある都市。カレーからパリーへ行く途にある。
  
  
九ペンスの九倍は…………  ペンスもギニーもイギリスの貨幣で、十二ペンスが一シリングであり、一ギニーは二十一シリングに当る。
親衛歩兵の……桝目のもの  イギリスの親衛歩兵第一聯隊の兵は大きなバケツ型の毛皮の帽子をかぶっている。それを「桝」に喩えて滑稽に言ったのであろう。
スティルトン乾酪  もとイングランドのスティルトン村で造り始めた上等のチーズ。
嗅塩と……酢と  嗅塩は婦人などに用いる鼻で嗅がせる気附薬、炭酸アムモニウムのこと。酢はやはり嗅剤で気附薬にしたもの。
〔第五章 酒店〕
サン・タントワヌ  パリーの東方の廓外、バスティーユ牢獄とセーヌ河との間の一区域。下層階級の住んでいた地域であった。
  
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実際それらは海上に…………  この「灯」はフランスの運命を、「船」は国を、「船員」は国民を、「嵐」は革命を象徴するのであろう。
痩せこけた案山子たち  貧民をさす。「案山子」という語は「襤褸を著た人」をも意味するからである。
その点灯夫のやり方を改良して…………  革命の時に、街灯柱を絞首台代りにして、民衆の敵を滑車綱で吊り上げて絞殺したのである。
鳴声も羽毛も美しい鳥ども  貴族をさす。
肩を竦める  不快、当惑、平気、冷淡などをあらわす身振り。
ドミノーズ  二十八箇の牌子を使って二人または数人でやる遊戯。
ジャーク  この名はフランス革命の運動を組織したと信ぜられる秘密結社の合言葉であった。
洗礼名  洗礼式の時に附けられる名。ここでは、もちろん、「ジャーク」のこと。
マダーム・ドファルジュは……編物をして…………  このマダーム・ドファルジュが常に編物をしている理由はよほど後(第二巻第十五章)になって明かになる。
ノートル・ダム  パリーの有名な大寺院。サン・タントワヌの西方市の中央にあり、その大伽藍の上には二つの巨大な塔が聳え立っている。
〔第六章 靴造り〕
何と有難いことでしょう!  彼の涙によって彼の智能が幾分か甦ったことがわかったからである。

〔第二巻 黄金の糸〕

〔第一章 五年後〕
フリート街  旧ロンドン市の西の境界であったテムプル関門から東へ通じている街。
悪しき交りがそれの善き光沢を…………  新約全書コリント前書第十五章第三十三節の「悪しき交りは善き行いを害うなり。」という句から言ったのであろう。
  
  西
青黴  チーズなどに生ずるものをいう。
ハウンヅディッチ  ロンドンの東部の一区域。
代理人を立てて……誓った時に  「洗礼式の時に」という意味を諧謔的に言ったのである。すなわち、このクランチャーはジェリーという洗礼名であり、第一巻に出て来たあの使いの者なのである。
ホワイトフライアーズ  ロンドンのテムプルに近い一区域。フリート街からテムズ河までに拡がる。
クランチャー氏自身はわが主の紀元のことを…………  「わが主の年にて」すなわち「キリスト紀元」という意味のラテン語を英語読みにして「アノー・ドミナイ」という。それをわがクランチャー君はアナという名の女がドミノーズを発明した年という意味だと思っていたのである。
ハーリクィンのように…………  ハーリクィンは黙劇パントマイムに出て来る道化役の一人で、常に派手な雑色の衣裳を著ているので、クランチャーが補綴だらけの蒲団をかぶっているのを、ハーリクィンに喩えたのである。
彼が銀行の時間がすんでからきれいな靴で……奇妙な事柄  これも、第一巻第二章の終りのジェリーの言葉や、この後のジェリーについての言葉などと共に、後(第二巻第十四章)になってわかるのである。
  殿
〔第二章 観物〕
  
四つ裂き  叛逆罪で処刑された人間の体は四つに切断して、その各部分を諸所の都市に分配して曝し、他の犯罪者に対する見せしめとしたのであった。
タイバーン  今のハイド公園の近くにあったロンドンの往時の処刑場。一七八三年すなわちこの時より三年後までここで処刑が行われ、それから処刑はニューゲートの監獄に移されたのである。
二マイル半ばかりは…………  オールド・ベーリーから処刑場のタイバーンまでの道程は二マイル半ほどあった。「他界への非業の旅」と言っても、その二マイル半だけは天下の公道を通って行くのである。
  
笞刑柱  罪人を笞つ時にその人間を縛りつける柱。
殺人報償金  死に当る大罪人を告発したり、主人や恩人などを敵に売って殺させたりした報酬として受ける金。
  
社会の戸口だけは…………  社会が犯罪人を生んで盛んに法廷へ送り込んだことをさす。
網代橇  昔、叛逆者、死刑囚などをそれに載せて縛りつけて刑場へ曳いて行った網代の枠のようなもの。
  
大洋がいつかはその中に沈んでいる死者を…………  新約全書ヨハネ黙示録第二十章第十三節に「海その中の死人を出し‥‥彼等おのおのその行いに循いて審判さばきを受けたり。」とあることから言ったのである。
〔第三章 当外れ〕
君はかつて…………  以下、被告の弁護士が相手方の証人のジョン・バーサッドに向って質問をするのである。すなわち対質訊問をするのである。
階段から蹴落されたこと  何か不正なことなどをして家から蹴出され放逐されることを意味する。
ブーローニュ  カレーの西南にある、やはりドーヴァー海峡に面したフランスの海港。
ジョージ・ウォシントンは歴史上ジョージ三世と…………  ジョージ三世は第一巻の註に記したように当時のイギリス国王である。後に合衆国の初代の大統領となったジョージ・ウォシントン(一七三二―一七九九)は当時アメリカ軍の総指揮官であって、独立戦争開戦以来各地に転戦していた。
対質訊問  相手方のために召喚されて調べられる証人に対して反問すること。
呪うべきユダ  銀三十枚を得てキリストを売りユダヤの有司に渡して磔にさせたイスカリオテのユダ。
指の節を額に触れる  尊敬または認知のしるしである。
〔第四章 祝い〕
  
彼の顔はダーネーをひどく詮索的な眼付で…………  マネット医師がチャールズ・ダーネーの顔に何を認めてこのような表情をしたのかは、この物語の終り近く(第三巻第十章)にならなければ判明しない。
放免された囚人の友人たち  当日の法廷の見物人を戯れて言ったのであろう。
轎  一人乗りで二人の轎夫かごかきが棒で肩に担いで運ぶもの。十七八世紀にヨーロッパの諸都市で流行した。
ポルト葡萄酒  ポルトガルのオポルト原産の有名な葡萄酒。
  ()西西
一パイント  わが三合余に当る。
蝋垂れが…………  イギリスでは、蝋燭の蝋垂れの垂れ落ちる方向にいる人の身の上に凶事殊に死が来る、という迷信がある。
〔第五章 豺〕
  
  
仮髪の花壇  仮髪を著けている裁判官、弁護士たちの席を意味する。
  
巡囘裁判  昔は裁判官が折々田舎を※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)って裁判した。その時は弁護士もその裁判官に附随して巡囘した。
  使
  
ジェフリーズ  この物語の時代から百年ほど前の、残忍と放逸とをもって有名であった裁判官ジョージ・ジェフリーズ(一六四八―一六八九)をさす。
シュルーズベリー学校  イングランドの西部、ウェールズに近いシュルーズベリーの町にある小学校。一五五二年に創立されたという古い歴史を持っているので有名である。
河  テムズ河である。テムプルはテムズ河の畔にある。
〔第六章 何百の人々〕
  
  
オックスフォド街道  ロンドンの西部と本市とを繋ぐ大街道。当時はこの街道から北はことごとく市外であった。
南向きの塀が…………  果樹を南向きの塀のところに植えておくと、暖かいために果実がよく熟するのである。
この巨人は表広間の壁から金色の片腕を…………  この巨大な金色の片腕というのは、金細工師の看板なのである。それをこのように滑稽に説明したのである。
この時分までには……あの一種特別の表情  その家具類の配置などの「創案者」であるリューシーの額に現れるあの特殊な表情をさす。
自分の周囲のどこにも目につくその空想上の類似  家具とリューシーとの表情の類似。
  
応報の排列表  人の行為の善悪に対しての来世における応報についての順番表というような意味。
ゴール人の子孫  フランス人のこと。ゴールは今のフランス及びその近隣の地域にわたって古代にあった国で、フランス人のことを戯れてゴール人とも言う。
  殿殿※(「鼬」の「由」に代えて「奚」、第4水準2-94-69)
青い部屋  フランスの中世紀の有名な物語にある青髯という男が、幾度も結婚してその妻を皆殺し、死体を青色の部屋に隠しておいて他の者に入るのを許さなかったということから、誰をも入れなかったプロス嬢の室を諧謔的にこう言ったのであろう。
  
あなた方も御存じのように、私はあすこへ…………  ダーネーは例の叛逆罪の廉で捕えられていた時にしばらくロンドン塔に監禁されたのであろうか。
DIG  英語の「掘れ」という語。
彼は片手を頭へやって突然…………  マネット医師がなぜこの時このような挙動をしたかは、この物語の終りの方(第三巻第九章)に至って明かになる。
聖ポール寺院  ロンドン市の中央にある大寺院。ソホー広場の東方約一マイル半、クラークンウェルの南にある。
〔第七章 都会における貴族〕
  殿
チョコレート  ここではチョコレート飲料をさす。チョコレートを砂糖湯または牛乳に溶かしたもの。
  
  
  
面紗をかぶる  修道院の尼僧になることを意味する。
 使
その社会の天使たち  上流社会の婦人たちをさす。その中にはさすがの間諜でも一人の母性をも見つけ出すことが出来ないほど、上流社会の家庭は乱れていた、というのがこの前後の意味である。
  
類癇  全身硬直する病気。
テュイルリーの宮殿  以前パリー市の中央にあったフランス国王の宮殿。ルイ十四世時代からは華美を尽していた。
扁底靴  踵のごく低い、または踵のない、エナメル革の浅い靴。主として舞踏の時などに用いられるものである。
車輪刑  罪人の手足を車輪に縛って死に致した残酷な処刑。
ムシュー・パリー  パリー市の死刑執行吏をこう言った。普通にはムシュー・ド・パリー。
監督派流儀に  未詳。この監督派というのはプロテスタント監督教会派をさすのであって、その唱道した監督制度主義とは教会の主権を法王のような一主権者に委ねないで教会の監督たちの手に委ぬべきであるとしたものであった。
一絞刑吏に根ざしたある制度  大革命時代の断頭台による処刑を意味する。
  
  
〔第八章 田舎における貴族〕
侯爵閣下の面上の赤味は彼の立派な躾の…………  赤面したりするのは貴族たる者の立派な躾に反するからであろう。
蛇髪復讐女神  ギリシア神話の復讐を司る三女神。長い蛇の頭髪をしていたので、馭者の振う長い鞭をその女神の蛇の髪に喩えたのである。
歯止沓  車が坂を下る時車輪が滑らぬように輪底に取附ける鉄片または木片。
幽霊のように脊が高く  この「脊が高い」という一語によって、侯爵の旅行馬車の下にくっついて他の地方からやって来た男が前章のパリーで子供を侯爵の馬車で轢き殺されたガスパールであることが、ここでは微かに暗示されているに止まる。
六人ばかりの特別に親しい友達  この「特別に親しい友達」という言葉は特殊の意味を持っていて、後になるほど数が増して来る。
永い間……一つの大きな悲惨の、この悲惨な表象  「大きな悲惨」とはその地方全体の貧窮をさすのであり、「悲惨な表象」とはキリストの木像をさすのである。
一二リーグ  一リーグは三マイルである。
〔第九章 ゴルゴンの首〕
ゴルゴン  ギリシア神話の醜怪な容貌をして頭髪は蛇であったという女怪であって、一目でも見る人をことごとく石に化せしめたという。
決して断絶することがないはずの王統  フランスのブルボン王統をさす。ブルボン王統は永久にフランスの王座を保つであろうと予言されていた。
消化器のような恰好  円筒形で、先が円錐形をなして尖っている形。
彼はイギリスでチャールズ・ダーネーとして…………  前に侯爵がこの甥を「ムシュー・シャルル」と言ったが、フランスでシャルルという名は同じ綴字で英語ではチャールズと発音するのである。
  
その屋根の鉛が…………  大革命時代からナポレオン戦争時代にかけて、建物の屋根瓦の鉛が溶かされて銃弾にされたのである。
イギリスはたくさんの人間の避難所になっている  ヨーロッパ諸国の亡命者などは多くイギリスへ亡命したのである。
  姿
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解説



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第一巻 甦る



 
  
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  辿使


 
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第五章 酒店
  場面はパリーの貧民窟サン・タントワヌに移る。前章から数日後の冬の日。街上に葡萄酒の樽が壊れて、流れる赤葡萄酒を飢えた人々が争って飲む光景。この街上の葡萄酒は、後にこの区域から始った大革命の流血を前兆するのである。ここに描かれたサン・タントワヌ街の窮乏と汚穢との画面はその臭いまでも読者に感じさせ、極めて傑れている。荘重で峻厳なカーライルの文体を思わせるところがある。この街の酒店の主人ドファルジュとその妻とがここでその風貌を描写される。共に年齢三十歳前後。この二人がいかなる人物であるかは第二巻第三巻に至って次第に明かにされる。しかし、この物語の「姿なき主人公」とも言い得る「革命」は、この章において微かにその前奏曲が奏されている。飢餓、貧窮、欠乏、狩り立てられ、追い詰められかけている人民の野獣的な顔付、ジャークという同一の名を持つ者の秘密結社。マダーム・ドファルジュは既にその編物を始めている。このサン・タントワヌの酒店にマネット嬢とロリー氏とが現れる。そして、彼女の父マネット医師の昔の召使人であったムシュー・ドファルジュの案内で、酒店の附近のある建物の六階の屋根裏部屋へとムシュー・マネットに会いに上って行く。なお、ドファルジュがいかなる人々からマネットを引取ったかは、はっきりとは書いてない。ドファルジュがジャークという同じ名の連中にマネットを覗かせるのは、貴族の圧制と暴虐との一標本を見せるためなのである。


 
  

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第二巻 黄金の糸

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  姿姿


 
  


 
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  宿宿

 
  ※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
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第二巻未完。






 
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2005616
2015416

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JIS X 0213

JIS X 0213-


「木+戈」、U+233FE    129-2、129-3


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