死者の書 續篇(草稿)

折口信夫





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廿()()
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風流なことだ。櫻を惜しむの、春のなごりのと、文學にばかり凝つて、天下のことは、思つて見もしないのだらう。この大臣は――。
さう言ふ語を飜譯しながら、あの流暢な詞を、山鴉が囀つてゐるのである。
自然の移りかはりを見ても、心を動してゐるヒマもございません。そんな明け暮れに、――世間を救ふ經文キヤウモンの學問すら出來んで暮して居ります。
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()※(「くさかんむり/(月+曷)」、第3水準1-91-26)()()()
西()()()
宿()()()()


宿()()

※(「蚌のつくり」、第3水準1-14-6)
西
大臣は、自分の耳を疑ふやうな顏をした。
なに、木枝を投げて卜ふ――。

其を聞してほしいものだ。……波斯人とやらが傳來した法かも知れぬ。
俄かに、友人に對するやうに親しい感情が漲つて來た。




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大臣は、日京卜の文獻が、曾て自分の所藏であつたと言ふやうな氣持ちになつて居るのであらう。
だが――何とか調べる方法はないかね。
律師は、返事をしないで、敬虔で空虚な沈默の表情を守つてゐた。

姿



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()
()()使()使()()
姿

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()鹿()

※(「くさかんむり/(月+曷)」、第3水準1-91-26)()()()()()()()
使
()()殿使()()※(「綏」の「糸」に代えて「木」、第3水準1-85-68)姿
西西()()
姿
姿()
()()姿()西()()()姿
暗記を復誦しながら、如何にも空想の愉しさに溺れてゐるやうな大臣の顏である。
西姿西



()()滿
姿




宿()()
()()祿()()()宿()()()()()()()
※(「蚌のつくり」、第3水準1-14-6)()()
※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)

()()()()()()()

()

()()()()()()西

姿※(「蚌のつくり」、第3水準1-14-6)姿
姿
廿※(「蚌のつくり」、第3水準1-14-6)()()()
殿()()殿()()




※(「てへん+勾」、拘の俗字、第3水準1-84-72)

うよ。こうよ。
すつかり明るくなつてゐる妻戸の外に、衣摺れの音が起つた。
召しますか。
殿()
寺の者どもに聞け。ようべ、この山里には、何事もなかつたかとの――。

輿

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召しもなくあがりました。※(「蚌のつくり」、第3水準1-14-6)惠に勤まるやうな御用ならばと存じまして……。
をゝさうだつた、と言ふ輕い反省が起つた。
()
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※(「蚌のつくり」、第3水準1-14-6)
※(「蚌のつくり」、第3水準1-14-6)()
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※(「蚌のつくり」、第3水準1-14-6)惠阿闍梨は、山の僧綱の志を代表して、麓の學文路カムロ村まで、大臣の乘り物を見送らうと言ふつもりで、山を降つた。だが紀の川を見おろす處まで來ると、何かなごりの惜しい氣持ちが湧いて來た。せめて大和境の眞土の關まで、お伴をしようと考へるやうになつた。國境の阪の辻まで來ると、何か牽くものゝあるやうな氣持ちが壓へられなくなつて、當麻寺まで送り屆けよう。山の末寺でもあり、知己の僧たちにも逢ひたくなつたのであつた。



使


西西











 廿
   19553065
   1967421025
   197449420
 稿



20031227

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調