死者の書

釋迢空




        

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※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()()()

あゝ耳面刀自ミヽモノトジ
ヨミガヘつた語が、彼の人の記憶を、更に彈力あるものに、響き返した。
()()()()
()()()()()
()姿()()

記憶の裏から、反省に似たものが浮び出て來た。
()
()()()()()()()()()()
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()()()※(「需+頁」、第3水準1-94-6)()()
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()鹿
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()()()()()()()()()※(「月+昔」、第3水準1-90-47)
()()()
うつそみの人なる我や。明日よりは、二上フタカミ山を愛兄弟イロセと思はむ
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()
※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
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※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)

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※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
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姿
()()()()()()()()()()()()()()()()※(「目+匡」」、第3水準1-88-81)
こう こう こう。
先刻サツキから、聞えて居たのかも知れぬ。あまり寂けさに馴れた耳は、新な聲を聞きつけよう、としなかつたのであらう。だから、今珍しく響いて來た感じもないのだ。
こう こう こう――こう こう こう。
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姿
()()()()
こう こう こう。
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 ()()()()()()
 
()  

こう こう こう。

()()()

()
()()

()()()()()()
別の長老トネめいた者が、説明をいだ。
()()()()()()()()()()()()()()()
以前の聲が、まう一層皺がれた響きで、話をひきとつた。
()()()()()()
()()
今一人が、相談でもしかける樣な、口ぶりを※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んだ。
()()()()宿()()()
()

 
皆は、鬘をほどき、杖を棄てた白衣の修道者、と言ふだけの姿ナリになつた。
()()()
長老トネの語と共に、修道者たちは、再魂呼タマヨバひのギヤウを初めたのである。
こう こう こう。

をゝ……。

こう こう こう。

をゝう……。






        

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姿

使()()()()()()()()()()()使()()()姿

()()()
()()()()姿
()()()()※(「亥+欠」、第3水準1-86-30)()
()()()姿()()()
郎女イラツメさま。
緘默シヾマを破つて、却てもの寂しい、乾聲カラゴエが響いた。

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姿()()()()()

        

  ()()()
()   
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   ()()()()()
   ()
()    ()()
()()()   ()()
    ()()宿

遠々に    が見るものを、
たか/″\に が待つものを、
()()()   ()
()   
    ()()()()
 ()()
   
   
  ()()()

ひさかたの  天二上アメフタカミ
二上の陽面カゲトモに、
生ひをゝり  み咲く
馬醉木アシビの   にほへる子を
が     り兼ねて、
馬醉木の   あしずりしつゝ
はもよシヌぶ。藤原處女

()()()
 ()()()()()()()()

()()()()()()()
()()()()()()()
もゝつたふ 磐余イハレの池に鳴く鴨を 今日のみ見てや、雲隱りなむ
()()()()
()()()()()()
()()()
()()()()()()()()()婿()()
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()()()()()()()()

宿()()姿
姿()()()()()()()
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おれはきた。

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()()()姿()()()
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()※(「目+爭」、第3水準1-88-85)

()()()()谿()()
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()()()※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)()()姿
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()()()()()()()()()()※(「目+爭」、第3水準1-88-85)()()()()()()()()()()()()()
()()()()()宿()()()()()
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()()()()()
()()()()()
()()()()姿
※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()西
()()()()()()()()()()()()姿辿()()()

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()滿()()()()()()
()
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()()()()()※(「にんべん+慊のつくり」、第3水準1-14-36)()
西()()※(「片+總のつくり」、第3水準1-87-68)
()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()()殿()()()
()()()()()()()()()()()
()()()殿()()

()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()()()※(「鼠+吾」、第4水準2-94-68)()
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()()西

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西()()西()()()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)姿()()()()()()
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()

        

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()()()()()()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()
西辿()()()
姿()()()()()()
()()辿()()()()()

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()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
()()()()()()()()
 ()()()()()()()殿()()()()()()()()()()()
()()()()()
()()()殿()()()()()()()()
()()()姿()()
()()※(「目+爭」、第3水準1-88-85)()()()()
そこにござるのは、どなたぞな。
()()使

()()()
()()




山ををがみに……。
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()()()()()()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
()()殿()()()姿
()()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()
()()()()()()
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()()()()()()()()()()()()殿()()()()()()()()()()西()()()()殿()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
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()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
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()()()()()()姿()()()
()()()()()()()()()
()()()()()()()()()滿()()()
()()()()()()()姿
さあ、其がの――。
と誰に言はせても、ちよつと言ひ澁るやうに、困つた顏をして見せる。
()()()()()()()殿()()()

()()姿()
若しや、天下に大亂でも起きなければえゝが――。
こんな※(「口+耳」、第3水準1-14-94)きは、何時までも續きさうに、時と共に倦まずに語られた。
()殿()()()()()
()()()()()()()()

        

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ほう これは、京極キヤウハテまで來た。
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こんな家が――。
※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
()()()()()
()()()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
おれには、だが、この築土垣をることが出來ぬ。
()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()
こんなにも、變つて居たのかねえ。
ある坊角マチカドに來た時、馬をぴたと止めて、獨り言のやうに言つた。
……フル草に ニヒ草まじり 生ひば 生ふるかに――だな。
()※(「にんべん+舞」、第4水準2-3-4)()()()
() ()
けゞんな顏をアフムけてゐる伴人トモビトらに、柔和な笑顏を向けた。



今一人が言ふ。
()()()()
殿()()
うつり行く時見る毎に、心イタく 昔の人し 思ほゆるかも
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()()()()()()()()()
()()()()()
()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)

二人の聲が、おなじ感情から迸り出た。
年の増した方の資人トネリが、切實な胸を告白するやうに言つた。
()()()()()()()()
こんな事を言はして置くと、折角澄みかゝつた心も、又曇つて來さうな氣がする。家持は忙てゝ、資人の口をめた。
()()
 ()()()()
 
()()()西()
これは/\。まだこゝに、殘つてゐたぞ。
()
()()()()()()
荒れては居るが、こゝは横佩墻内ヨコハキカキツだ。
さう言つて、暫らく息を詰めるやうにして、石垣の荒い面を見入つて居た。
()()()殿




詮索ずきさうな顏をした若い方が、口を出す。

()()()()()()



        

()()()()()()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)宿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()
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()
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宿

八千矛の神のみことは、とほ/″\し、高志コシの國に、クハをありと聞かして、サカをありとキコして……
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もう、自身たちの教へることもなうなつた。
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ザエを習ふなと言ふなら、まだ聞きも知らぬこと、教へてタモれ。
素直な郎女の求めも、姥たちにとつては、骨を刺しとほされるやうな痛さであつた。
()()
志斐オムナの負け色を救ふ爲に、身狹乳母ムサノチオモも口を※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)む。
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()()()()()()()()()()()()殿()()
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難波とやらは、どちらに當るかえ。
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をゝ、あれだけの習しを覺える、たゞ其だけで、此世に生きながらへて行かねばならぬみづからであつた。
()()()()()()()()()()()()()

        

ほゝき ほゝきい ほゝほきい―……。
()()()()()()()宿()()()()()()
ほゝき ほゝきい。
()()
ほゝき ほゝきい ほゝほきい。
()
()()()()()()()
()()()()()()()()
ほゝき ほゝきい。

()()
ほゝき ほゝきい。
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※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)()()()()()()()()()()()

()()()滿()()
()()()()()
()
()()()()()()()()()※(「片+總のつくり」、第3水準1-87-68)()()
※(「目+框のつくり」、第3水準1-88-81)
()()()()※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()()()
()
これが、フル山田寺だ、と申します。
勿體ぶつた、しわがれ聲が聞えて來た。
そんな事は、どうでも――。まづ、郎女イラツメさまを――。
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()()()()()()姿()
()()()()()()()()()()調()()

        

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()
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()()
其は、寺方が、理分でおざるがや。お隨ひなされねばならぬ。
()()()()()()()
()殿()()
()使
()()()()()()
()()()()()()()()()滿
()()()
()()()()()()
()
ともあれ此上は、難波津へ。
使殿※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)
()()()()()()
()()()()()


これはえ――。
すみれ、と申すとのことで御座ります。
かう言ふ風に、物を知らせるのが、あて人に仕へる人たちの、爲來りになつて居た。
ハチスの花に似てゐながら、もつとコマやかな、――繪にある佛の花を見るやうな――。
ひとり言しながら、ぢつと見てゐるうちに、花は、廣いウテナの上に乘つた佛の前の大きな花になつて來る。其がまた、ふつと、目の前のさゝやかな花に戻る。
夕風がヒヤついて參ります。内へと遊ばされ。

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()




        

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()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()

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つた つた つた。
()

つた。
郎女は刹那、思ひ出して帳臺の中で、身を固くした。次にわぢ/\ヲノヽきが出て來た。
天若御子アメワカミコ――。
ようべ、當麻語部嫗タギマノカタリノオムナの聞した物語り。あゝ其お方の、來て窺ふ夜なのか。
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()()() 
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なも 阿彌陀ほとけ。あなたふと 阿彌陀ほとけ。

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なう/\。あみだほとけ……。
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辿
()()()()
なう/\ 阿彌陀ほとけ……。
()()()()姿()()()()()


        

貴人ウマビトはうま人どち、やつこは奴隷ヤツコどち、と言ふからの――。
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姿()()()
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兵部大輔は、やつと話のつきほを捉へた。
()
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家持は、此了解に富んだ貴人に向つては、何でも言つてよい、青年のやうな氣が湧いて來た。
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瞬間、暗い顏をしたが、直にさつと眉の間から、輝きが出て來た。
()()()

今度は輕い心持ちが、大膽に押勝の話を受けとめた。
()()()()
()()()()宿()()
大師は、笑ひをぴたりと止めて、家持の顏を見ながら、きまじめな表情になつた。
殿()()()()()()()()()

()()()()()()
押勝の眉は集つて來て、皺一つよせぬ美しい、この老いの見えぬ貴人の顏も、思ひなし、ひずんで見えた。
()()()()

()()殿()()()()()()
人の惡いからかひ笑みを浮べて、話を無理にでも脇へ釣り出さうと努めるのは、考へるのも切ない胸の中が察せられる。
()()殿()()()使姿()()
()()()()()()()()()()()
()()殿()()()()鹿()()()()()()()()()
()()()()()西()()()()

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()()()()()
()
日ずかしです。お召しあがり下されませう。
改つて、簡單な饗應の挨拶をした。まらうどに、早く酒を獻じなさい、と言つてゐる間に、美しい采女ウネメが、盃を額より高く捧げて出た。
をゝ、それだけ受けて頂けばよい。舞ひぶりを一つ、見て貰ひなさい。
家持は何を考へても、先を越す敏感な主人に對して、唯虚心で居るより外はなかつた。

()()()
上もな、身がシフ心で、兄公殿を太宰府へ追ひまくつて、後にすわらうとするのだ、と言ふ奴があるといの――。やつぱり「奴はやつこどち」ぢやの。さう思ふよ。時に女姪メヒの姫だが――。
()()
()()()()

()

大師藤原惠美押勝朝臣の聲は、若々しい、純な欲望の外、何の響きもまじへて居なかつた。

        十五

つた つた つた。
()()
()()()()()()()()()姿

()()()()()()()()()()()()
()()
()()()
()()()()()()使
()()()()()()()()
()()()()
宿()()()

こゝの田居の中で、植ゑ初めの田は、腰折れ田と言うて、都までも聞えた物語りのある田ぢやげな。
()()()()()()
()()()()()()()()()()
()()()()()
※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)
()()()()()()() 





        

()禿()()()
()()
()()()()()

使
()()
()()()()()()
()()()()姿()()()()()()()()()()()
()()
()()()()()()()()()漿()()()()
()()
()()()()()()
郎女イラツメ樣。御ラウじませ。
竪帳タツバリを手でのけて、姫に見せるだけが、やつとのことであつた。
ほう――。
()※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)姿
この身も、その田居とやらにおり立ちたい――。
めつさうなこと、仰せられます。
()()()()
()()()

乳母オモよ。この絲は、蝶鳥の翼よりも美しいが、蜘蛛のより弱く見えるがよ――。


なる程、此はサク過ぎまする。

()
田居とやらへおりたちたい――、
を反覆した。
刀自は、若人を呼び集めて、
もつと、きれぬ絲を作り出さねば、物はない。
と言つた。女たちの中の一人が、
それでは、刀自に、何ぞよい御思案が――。
さればの――。
()()

この身の考へることが、出來ることか試して見や。
()
夏引きの麻生ヲフアサむやうに、そして、もつと日ざらしよく、細くこまやかに―。

()()()

()()

私も、みませう。
()()()()()
もう今日は、みな月に入る日ぢやの――。
()()()()()()()()()()()()()()()

        

 ()()()()
西()()()()()()()()()()

郎女樣が――。

()
ぞ、弓を――。鳴弦ツルウチぢや。
人を待つ間もなかつた。彼女自身、壁代カベシロに寄せかけて置いた白木の檀弓マユミをとり上げて居た。
()()()()
()()147-2()()
あっし あっし。
あっし あっし あっし。
狹い廬の中を蹈んで※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)つた。脇目からは、遶道ネウダウする群れのやうに。
郎女樣は、こちらに御座りますか。
()()()
なに――。
皆の口が、一つであつた。
郎女樣か、と思はれるあて人が――、み寺のカドに立つて居さつせるのを見たで、知らせにまゐりました。
今度は、乳母オモ一人の聲が答へた。
なに、み寺の門に。
婢女を先に、行道の群れは、小石を飛す嵐の中を、早足に練り出した。
あっし あっし あっし……。
()()()()()()
※(「片+總のつくり」、第3水準1-87-68)()
※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)()()
()()()()()()()()()()()()()滿

    姿()()
今すこしシルく み姿顯したまへ――。
()()
()()
 殿()()姿()()()
()()姿

なも 阿彌陀ほとけ。あなたふと 阿彌陀ほとけ。
姿
()
あっし あっし。
()()

        

()()
()()()()()()()()()
()()()()使()()()
()()()()()()()()()()()

()()()()()
話相手にもしなかつた若い者たちに、時々うつかりと、こんな事を、言ふ樣になつた。
かう絲が無駄になつては。
今の間にどし/″\んで置かいでは―。
()()

()()()()()()
()()
殿()()
あて人に仕へて居ても、女はうつかりすると、人の評判に時を移した。
やめい やめい。お耳ざはりぞ。
()()()()()

()()
滿()()()()姿


ちよう ちよう はた はた。
はた はた ちよう……。
()()

どうしたら、よいのだらう。
()
あゝ、何時になつたら、したてたコロモをお肌へふくよかにお貸し申すことが出來よう。
もう外の叢で鳴き出した、蟋蟀の聲を、瞬間思ひ浮べて居た。
どれ、およこし遊ばされ。かう直せば、動かぬこともおざるまい――。


見てたもれ。


はた はた ちよう ちよう。
元の通りの音が、整つて出て來た。


おわかりなさるかえ。これかう――。
姫の心は、こだまの如くサトくなつて居た。此才伎テワザ經緯ユキタテは、すぐ呑み込まれた。
織つてごらうじませ。
姫が、高機に代つて入ると、尼は機陰に身を倚せて立つ。
はた はた ゆら ゆら。
音までが、變つて澄み上つた。
()() ()()()()殿()※(「片+總のつくり」、第3水準1-87-68)()()
 ()()()()()()
()()()()()()()()()()()
() 

はた はた ゆら ゆら。ゆら はたゝ。
美しい織物が、筬の目から迸る。
はた はた ゆら ゆら。


        

()()()()()()

※(「糸+慊のつくり」、第3水準1-90-17)()()()()
()()()()()()()

()()()()()()()()

()()
()()()()()()()()()
()()
郎女樣は、月ごろかゝつて、唯の壁代をお織りなされた。
あつたら、惜しやの。
()()
()()

        

()()()()()()※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)退()
()()
()()()()使()()
()()()()()()()()()


()()()()()()()()()()()()()()()()
()()()()()()()()()()
姿()()()()()()()()()()()()()()()姿
()()姿()()()殿()()()()()()()()()()()()()姿()
()
()()()()()()()

()()()()()()()()()()姿()()()






   19472271


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p36-12 
p41-4 ()p103-4 ()()
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p43-12 ()()
p50-8 
p61-2 ()
p69-12p72-1 ()()
p70-3 ()()
p87-3 ()
p88-1 ()()
p89-11 ()()
p100-5 
p116-4 ()
p121-8 
p133-1 ()()()p131-9()()使
p137-6 
p140-8 ()※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)
p163-10_11 
()()()()()
JIS X 02086.6.2 



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「馬+畢」    147-2