古代民謡の研究

その外輪に沿うて

折口信夫




     一

おもしろき野をば きそ。旧草フルクサに 新草ニヒクサまじり ひば生ふるかに(万葉集巻十四)

       
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わすれ草、我が紐につく。香具山のふりにし里を、忘れぬがため(万葉集巻三)
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武蔵野は(春日野は〔古今集〕)今日は焼きそ。わかくさの つまもこもれり。われもこもれり(伊勢物語)
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調
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姿
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ふゆごもり 春の大野をやく人は、やき飽かぬかも。我が心やく(万葉集巻七)

使()
武蔵野は 今日は 焼きそ。わか草の嫩芽ツマもこもれり、冬草まじり
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山城の久世の社に 草な手折タヲりそ。しが時と、立ち栄ゆとも、草なたをりそ(万葉巻七)
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天なる ひめ菅原の茅な刈りそね。みなのわた かぐろき髪に 芥し着くも(万葉巻七)
譬へば、此歌なども、叙事詩から断篇化した歌らしい。軽大郎女を憐んだ歌だらうと言ふ人もある程だ。処が、此旋頭歌は、呪文に使はれたものと見る方がよさゝうだ。すると「おもしろき」も野焼きの火に過ちなき様になど言ふ原義を没した用途を持つてゐたのかも知れぬ。
妹なろが つかふ川門カハトのさゝらヲギ あしとひとコト 語りよらしも(万葉巻十四)

退

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雨障アマヅヽミ常する君は、久方のきのふの雨に、懲りにけむかも(万葉巻四)
笠なしと 人にはいひて、雨乍見アマヅヽミ とまりし君が 容儀スガタし おもほゆ(万葉巻十一)
……とぶとりの 飛鳥壮アスカヲトコが、霖禁ナガメイミ 縫ひし黒沓 さしはきて、庭にたゝずみ……(万葉巻十六、竹取翁の歌)
       
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()()()()()()宿

       
西

はねカヅラ 今する妹をうら若み、いざ、イザ川の音のさやけさ(万葉巻七)

       
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※(「骨+低のつくり」、第3水準1-94-21)
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宿
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使

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花の色は 移りにけりな。いたづらに 我が身世に経る ながめせしまに(古今巻二)
起きもせず 寝もせで 夜を明しては、春の物とて ながめ暮しつ(古今巻十三)
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使使
使
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調
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   19957210
 
   19294425
 
   19272912



2007815

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調