短歌本質成立の時代

万葉集以後の歌風の見わたし

折口信夫




      

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姿()
春の野に菫つみにと 来しわれぞ、野をなつかしみ、一夜寝にける
明日よりは春菜つまむとめし野に、昨日も、今日も、雪はふりつゝ
百済野の萩が古枝フルエに、春待つと 来居キヰし鶯、鳴きにけむかも(万葉巻八)
此等は、美は美であつても、趣味に触れると言ふ程度のものである。
ぬばたまの夜のふけゆけば、ヒサギ生ふる清き川原に、千鳥しば鳴く
みよし野のキサ山の木梢コヌレには、こゝだも さわぐ鳥のこゑかも(万葉巻六)

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調
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大原や小塩ヲシホの山も、今日こそは、神代のことも、おもひ出づらめ(古今集巻十七)
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()()()()()※(「にんべん+舞」、第4水準2-3-4)

      

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月やあらぬ。春や昔の春ならぬ わが身一つはもとの身にして(古今集巻十五)
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 宿
調
綿
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調調
ひぐらしの鳴く山里の夕ぐれは、風よりほかに、訪ふ人ぞなき
調
調
木の間より洩り来る 月のかげ見れば、心ヅクしの 秋は来にけり
蜩の鳴きつるなべに、日は暮れぬ と思ふは、山の陰にぞありける
鶯の鳴く野べごとに来て見れば、うつろふ花に、風ぞ吹きける
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調調
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調調()
()※(「足へん+宛」、第3水準1-92-36)


      

()()使

朝戸あけて 見るぞさびしき。傍丘カタヲカの 楢の広葉に ふれる白雪(千載)
ひたへてめ縄の たわむまで、秋風ぞ吹く。小山田の庵(続古今)
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宿
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三島江の入江のまこも。雨ふれば、いとゞしほれて 刈る人もなし(新古今)
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今宵 わが 桂の里の月を見て、思ひ残せることのなきかな(金葉)
花の散るなぐさみにせむ。菅原や、伏見の里の岩つゝじ見て(経信集)
()西


調

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姿


調綿
木の葉散る山偏付カタツきの笹の庵は、埋れぬべきふし処かな(待賢門院堀川)
西調
誰も皆、今日のみゆきに誘はれて、きえにし跡をとふ人もなし(堀川)
此歌の「誰も皆」は、実生活から来た口語式発想に近いものである。好忠・俊頼の新傾向や、僧家の歌や、連歌などから養成せられた現代語趣味は、平安朝末の抒情歌、主としては「述懐」風のものに用ゐられたが、其も一時のはやりで、仏徒の外には用ゐなくなつて了うた。
これ聞けや。花見る我を 見る人の、まだありけりと驚かすなり(頼政)
西
西西西()西西

心なき身にも、あはれは 知られけり。鴫たつ沢の秋の夕ぐれ(西行)
見渡せば、花も紅葉も なかりけり。浦の苫屋の秋の夕ぐれ(定家)
()
沿
姿

千載集えらび侍りける時、古き人々の歌を見て、
行く末は 我をもしのぶ人やあらむ。昔を思ふ心ならひに(新古今)

如何に言ひ、いかにはむと 思ふ間に、心もつきて、春も暮れにき(玉葉)
調調

おもかげに 花の姿をさき立てゝ、幾重越え来ぬ。峰の白雪(新勅撰)

夕されば、野べの秋風身に沁みて、うづら鳴くなり。深草の里(千載)

調

      

西西西()調()()姿
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調調
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()西
調
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桜さく比良の山風、吹くまゝに、花になりゆく 志賀の浦なみ(千載集)


おもかげに花の姿をさきだてゝ、いくへこえきぬ。峯のしら雲(新勅撰)
姿()

春の夜の夢のうきはし、とだえして、峯にわかるゝ横雲の空(定家)
霞立つ末の松山。ほの/″\と、浪にはなるゝ横雲の空(家隆)
調()
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使()
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うつり行く雲に、嵐の声すなり。散るか、まさきの葛城の山(雅経)

アフチ咲く外面ソトモの木かげ 露おちて、五月雨るゝ風わたるなり(忠良)

調調()西
よられつる野もせの草の かげろひて、涼しく曇る 夕立の空(新古今)

調
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見わたせば 山もと霞む水無瀬川。夕は秋と なにおもひけむ(新古今)
姿
思ひいづるをり焚く柴の夕煙。むせぶもうれし、忘れがたみに(新古今)

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姿

末遠き若葉の芝生 うちなびき、雲雀鳴く野の 春の夕ぐれ(定家)
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稿


      

調
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   19957210
 
   19294425

   19261512
麿


200755

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調