短歌様式の発生に絡んだある疑念

折口信夫





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あしびきの山より出づる月まつと、人には言ひて待つ吾を(万葉巻十二)
この歌は、おなじ万葉の、
もゝたらず山田の道をナミく藻のウツクツマと語らはず別れし来れば……霊あはゞ君来ますやと……たまぼこの道来る人のちとまりいかにと問はゞ答へやるたつきを知らにさにつらふ君が名言はゞ色に出でて人知りぬべみ あしびきの山より出づる月待つと人には言ひて待つ吾を
  反歌(略する)
(巻十三)







石見の海都農ツヌの浦わを……いや高に山も越え来ぬ。夏草の思ひしなへてしぬぶらむ妹が門見む。靡け。この山。
  反歌(二首略する)









底本:「折口信夫全集 4」中央公論社
   1995(平成7)年5月10日初版発行
初出:「橄欖 第四巻第七号」
   1925(大正14)年7月
※底本の題名の下に書かれている「大正十四年七月「橄欖」第四巻第七号」はファイル末の「初出」欄に移しました
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2009年10月31日作成
青空文庫作成ファイル:
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