筬の音

――わが幼時の記憶――

折口信夫







※(「車+網のつくり」、第3水準1-92-45)


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様は遠州浜名の橋よ、いまはとだえて音もせぬ。
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若子、今うち落しゝ物、かへし給へ。
こはき顔して見入るに、われは噤みぬ。
かへし給はずや。
いな/\、われは柿はとらじを。
と云ふに、女の肩いよゝをのゝき、把られたるわが手、亦、いたくふるひぬ。
よし/\、かへし給はずば、明日にも若子が家人に告げん。
と云ふに、捕へられたる手うちはらひて遁れんとする袂より、紅の珠二つ三つ、ころ/\と転び出でぬ。
それ見給へ。







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若子は、ねおびれたりや。





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底本:「日本の名随筆25 音」作品社
   1984(昭和59)年11月25日第1刷発行
   1999(平成11)年4月30日第17刷発行
底本の親本:「折口信夫全集 第三十巻」中央公論社
   1968(昭和43)年4月初版発行
入力:門田裕志
校正:多羅尾伴内
2003年12月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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