よそ人のあざむが如く、君も亦あざみ給ふか 我君よ、君はた知らじ、覺りえじ、世に不思議にも 俤おもかげのかくは移ろひ、變りたる深きいはれを、 そは君がたへなる色を仰ぎ見し惑ひ心地ぞ。 我心、君もし知らば、﹃憐あは愍れみ﹄のいかで堪ふべき かうやうのつらき恥目に我心惱ましむるぞ。 見よ、﹁愛﹂は君います邊あたり、のびらかに心のどけく、 廣大の無むへ邊んり力よくをぞ安んじて振ひ行ふ。 それ茲に怯おびえ戰をののくわが生氣、逐ひやらはれて 家も無く、あるは苦み、あるは失せ、今たゞ﹁愛﹂は 殘りゐてふみ止まれる獨ひと住りずみ、心地もよきか、 思ふまゝ君を仰ぐも羨まし、これわが顏の さま變る故と知らずや。默もだしつゝ唯茫然と われこゝに佇みきけば、官能の逃げ惑ふ聲。