あはれ、今、﹁愛﹂の路みち行ゆく君たちよ、 止とまりても見よ、世の中なかに、 われのに似たる悲かなしみをする人ありや。 願はくば、わが言ふところ、聞き終り、 さもこそと、憐あはれみ給へ、 われこそは憂いう愁しうの宿やどなれ、戸なれ。 功いさ績をしのたえて空むなしきわれなるに、 ﹁愛﹂は情なさけのいと深く、 心樂しきうまし世にわれを据ゑ置き、 人皆のうらやみ草ぐさとし給ふに、 脊そが向ひにて囁く聲こゑす、 ﹃この若わか人うどの、いかなれば、かくも榮ゆる﹄ あな、氣けう疎としや、勢いきほひはすべて痿なえけり、 諸もろもろの﹁愛﹂の寶たからもほろびけり。 はかなくも殘れる身には、 來こしかたの追おも憶ひでも憂うし。 さながら、われは零落の身を恥はぢらひて 貧しさを掩おほはむとするなれの果はて、 おもてには快けら樂くをよそひ、 心には惱みわづらふ。