独どい逸つの名なだ高かい作者レツシングと云いふ人は、至いたつて粗そそ忽つかしい方かたで、其その上うへ法ば外かに忘れツぽいから、無むや闇みに金か子ねや何なにかゞ失なくなる、﹁是これは何なんでも下か婢ひか下げな男んが窃くす取ねるに相さう違ゐない、一番ばん計はか略りごとを以もつて試ためしてやらう。と云いふので、レツシング先生或ある時とき、机の上へ金か銀ねをバラ〴〵散らかしたまゝ、スーツと友達の家うちへやつて参まゐり、レ﹁此この頃ごろ無むや闇みに金か子ねが失なくなつて仕しやうが無ないから、これ〳〵斯かう云いふ事にして来きた、是これで誰たれが取ると云いふのがチヤンと解わかるね。友﹁へーえ、夫それは旨うまい事を考へたが、全ぜん体たい幾いく許ら置いて来きたんだ。レ﹁ア、金かねの勘かん定ぢやうを仕しずに来きた……夫それでは何なんにもなりませぬ。