軌道(黙劇)

岸田國士




人物





場所
大都会の郊外に通ずる高速電車の小停留場。

時代
現代。
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酔漢から、やや離れて、腰をかける。
手提袋から大形の角封筒を出す。手紙であるが、その封を切つて、中身を読む。












女は、此の時、男の顔を見上げる。
男は、慌てて女の視線を避ける。と、同時に歩き出す。
女は、それを、眼で追ふ。

姿







その跫音で、女は振り返る。






男は、絶望的に、腰を卸ろす。

調




女の姿が、いま消えようとする。









駅夫が出会ひ頭に現はれる。
「もう来ますよ」といふ合図をする。
男は、手早く、駅夫に切符を渡す。
駅夫は、それが何のためかわからずに、受け取つた切符を見つめてゐる。
そのひまに、男は、姿を消す。
駅夫は、男を見失つて、一寸、とぼけた顔をする。
が、「なんだ、さうか」といふ顔附をして、鼻を啜る。
プラツトフオームを、機械的に歩きながら、口の中で何か独言をいふ。













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kompass

20111223
2016413

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