森の生活――ウォールデン――

WALDEN, OR LIFE IN THE WOODS

ソーロー Henry David Thoreau

神吉三郎訳






  Thoreau Walden, or Life in the Woods()()() sober
 
 稿稿
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 西稿
 
 
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 西
 

  Houghton Mifflin  The Concord Edition 
一九五一年五月
訳者





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 ()()()※(始め二重山括弧、1-1-52)※(終わり二重山括弧、1-1-53)
 ()姿姿()()退()
    
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“Inde genus durum sumus, experiensque laborum,
Et documenta damus qu※(サーカムフレックスアクセント付きA小文字) simus origine nati.”(Ovid: Metamorphoses

 ローレイ〔サー・ウォルター・ローレイ、一五五二―一六一八年、英国の軍人で政治家で詩人〕はこれを彼の調べ高い韻文でこう訳している――


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※(始め二重山括弧、1-1-52)※(終わり二重山括弧、1-1-53)
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 ()※(「木+吶のつくり」、第3水準1-85-54)()()()
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※(「木+眉」、第3水準1-85-86)        
            
      
         
           
              
          


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  ※(4分の3、1-9-21)   
        
           
                        
                       
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西()()                      
                         


 左様、わたしは全部で八ドル七十四セント食った。だが、もしわたしが読者諸君の多くもわたしと同罪であることを、諸君の行ないも活字にしてみれば似たようなものであることを知らなかったら、わたしはこんなに恥知らずにわたしの罪を公開しなかったろう。次の年にはわたしは時々食膳にのぼせるためにひとすくいの魚を取った。一度はわたしの豆畠を荒らしたヤマネズミをぶち殺すことまでやった――韃靼人だったんじんの言葉を借りていえば彼の転生輪廻てんせいりんねを実施し――半ば実験的な気持で彼をむさぼり喰らった。それは麝香めいたにおいにかかわらず、一時的味覚をたのしませたが、常用するのは善い習慣ではないと判った。村の肉屋にそのヤマネズミをちゃんとりょうらせたらどんなものだか知らぬが。
 同じ期間内の衣料費および臨時的出費は八ドル四十セント四分の三になっているが、この項目からは特に得るところもないであろう。
油、および諸道具     二ドル
 洗濯とつくろいはたいがい外に出したが勘定書きがまだ来ないから除くとして、結局わたしの金銭支出は全部で次のとおりであった――これは世界のこの地点で金銭の支出が必要である筋の全部、いや全部以上である。

住居           二八ドル・一二※(2分の1、1-9-20)
畠(一年分)       一四・七二※(2分の1、1-9-20)
食費(八カ月分)      八・七四
衣類、その他(八カ月分)  八・四〇※(4分の3、1-9-21)
油、その他(八カ月分)   二・〇〇
       合計    六一・九九※(4分の3、1-9-21)


 さて、わたしはここで読者諸君のうちで自活しなければならない人々に呼びかけるが、これに対処するためにわたしは畠の作物として、
二三・四四ドル
を売り、
日雇い労働の賃銀、
一三・三四ドル
合計
三六・七八ドル

 
 ()()
 Portulaca oleracea() oleracea 
 
 ()綿()便()()()Panem depsticium sic facito. Manus mortariumque bene lavato. Farinam in mortarium indito, aquae paulatim addito, subigitoque pulchre. Ubi bene subegeris, defingito, coquitoque sub testu.()()()
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トマス・ケアリ〔一五九八?―一六三九年? イギリスの詩人〕
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   ※(「くさかんむり/遽」、第4水準2-87-18)()()使 使使使 使  
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 ※(始め二重山括弧、1-1-52)()()※(終わり二重山括弧、1-1-53)()()()()()()()   ()()調退()()()
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  ()Oh-o-o-o-o that I never had been bor-r-r-r-n! That I never had been bor-r-r-r-n!  bor-r-r-r-n! 
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 ()()()maximeque pius qu※(リガチャAE小文字)stus()()()
   spica  speca  spe  graingranum  gerendo   




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 ()退()()調()()()
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“Nec bella fuerunt,
Faginus astabat dum scyphus ante dapes.”
「ブナの椀のみが求められし時には
戦いが人をなやますことなかりき。」

「政治をあずかる人々よ、何で刑罰をもちいる必要があろうか? 徳を愛せよ、しからば人民は有徳となるであろう。上に立つ人の徳は風のごとく、大衆の徳は草のごとしである。風がその上を吹けば草は伏す。」〔上有好者下必有甚焉者矣。君子之徳風也。小人之徳艸也。艸尚之風必偃。――孟子〕
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 西()()()()()()()()()
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 Leuciscus pulchellusreticulatus guttatus()()()Hirundo bicolorTotanus macularius
 
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 ()西()使()()()()()()()()()()()()()()()
 Iris versicolor()()調
 ()  調  




 殿()殿()()Celtis occidentalis shingle ()
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「おまえの入口はたのしい原、
その一部を苔むす果樹は
かがやく小流れにゆずる
その流れの住人は滑りはしるジャコウネズミと
矢のようにおよぎまわるすばやいマス。」
〔著者の友人エレリー・チャニング(一八一八―一九〇一年)の詩『ベーカー農場』の引用〕

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 殿湿()()()()()()()使()()()使()殿() ()()()()姿()()()()
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 ()()鹿鹿西()()() ()()()

おお、ベーカー農場!
「風景――そこの最も貴い要素は
けがれを知らぬ、ささやかな日のひかり。」……

「お前の横木の垣をめぐらした草原には
酒宴におもむく者もない。」……

「お前は何ぴとともいいあらそいをもたず
問題にわずらわされることも絶えてなく
初めて見たときも今も同じようにおとなしく
そのじみな赤味がかったゆるやかな外套にくるまっている。」……

「愛する人たちよ来れ
そして憎む人たちも、
神聖な鳩の子たちも
ガイ・ホーク流の逆賊も、
そして陰謀を、木々の丈夫なたるきから首をくくってぶら下げよ!」
〔著者の友人エレリー・チャニングの詩を引用したもの〕

 人々は夕方、かれらの家庭の物音の反響がつきまとう、すぐとなりの畠または町からおとなしくもどってくる。そしてかれらの生活は自分たちの吐いた同じ息をくりかえし呼吸することによってえていく。朝夕のかれらの影はかれらの日中の足取りよりも長くとどく。しかるに、われわれは毎日、新しい経験と性格とをもって、遠くから、冒険と危険と、発見とから帰宅すべきなのだ。
 わたしが池に着く前に、何か新しい衝動が彼をうながしたと見えてジョン・フィールドは気が変わって、この日没前に沼地を掘りかえすことをやめてやってきた。ところが気の毒にも、わたしは相当の漁があったのにわずか二、三尾を追いまわしている始末だった。彼はそれが自分の運なのだといった。ところがボートのなかの二人の位置を取換えて見たが、運の方も位置を取換えてしまった。気の毒なジョン・フィールド!――(わたしは彼がこの記事をまさか読むまいと思っている、読むのならそれによって啓発されるがよい)――彼はこの原始的な新しい国で何か昔ながらの古い国のやり方で生きようと思っている――シャイナーでパーチをつかまえるつもりで。それは時としては善い餌になることはわたしも認めるが。彼の眼界は彼独特のものだが、しかし彼は気の毒な男で、気の毒であるべく生まれ、彼の伝来のアイルランドの貧困または貧しい生活をもち、彼のアダムのお祖母ばあさん流のへまなやり方をもって、彼自身と彼の子孫とはこの世ではうだつがあがらないようにできている。――かれらの徒歩かちわたりをし、みずかきでもありそうな、沼地をよちよち走りまわる足のかかとにマーキュリーのつばさでもはえないかぎりは。
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 () duellum  bellum ()()()()()()退()()()()()()()()   
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  姿調
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 ()() ()()()使 Patremfamilias Cellam oleariam, vinariam, dolia multa, uti lubeat caritatem expectare, et rei, et virtuti, et gloriae erit.()
 ()()()()()()()()()竿使便()()退()()
 ()()()()()()()()()()()西
 退()
 ()()()()()()()()便() Unio fluviatilis 

 ()辿()()()()()()()()()()

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 ()() purprestures 殿()()()()Lucum conlucare()()
 調
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「あかるい炎よ、お前のなつかしい、人生を映す、身ぢかな同情は
わたしに拒まれてはならない、
わたしの希望のほかの何がそんなに燃えさかったであろうか、
わたしの運命以外の何がそんなに夜、消えしずんだであろうか
なぜお前はわれわれの炉と広間から追いはらわれたのか
みんなに歓迎され愛されたお前が?
かくも単調なわれわれの生活の平凡な光りには
お前の存在はあまりに空想をそそるものだった、
お前のあかるいかがやきはわれわれ気の合った魂たちと
神秘な交わりを、あまりに大胆な秘密を、取りかわしたのか?

まあ、よい、われわれは新式の炉のそばで安全かつ健在だから。
ここではうす暗いかげがかすめず
何物も心を浮き立たせたり沈ませたりせず
火があって手足をあたためるだけ――それ以上にのぞみをせることもない。
この炉のまとまりのよい実用的なかたまりのそばで
今の者は坐りこみ、眠りにつくことができる――
うす暗い過去から立ちあらわれ、昔風の薪のちらちらする光りのそばで
われわれと語らった幽霊どもをおそれることもなく。」
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 ()Rhus glabra()()Solidago stricta
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 ()退()()()
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 ()Sciurus Hudsonius()()()()※(「口+它」、第3水準1-14-88)()()()
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 Lepus Americanus()()()()()()Lepus livipes︿()
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 ()()湿()() lobe λειU+1F77378-1βω, labour, lapsus λοβοU+1F79378-2※(ギリシア小文字ファイナルSIGMA、1-6-57), globus  lobe︿globe︿ lap︿flap︿ leaf fvblobe lbbbBlglobe  glb g()()辿()()()
 湿() palm lobe umbilicaria  labium labour()()
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 ()
 

“Eurus ad Auroram, Nabathaeaque regna recessit,
Persidaque, et radiis juga subdita matutinis.”
()()



()()


〔オヴィディウス『メタモルフォセス』よりの引用〕

 ただひと雨で草は幾段も緑を増す。そのように、よりよい思想が流れこむとわれわれの前途の見込みはかがやく。もし、われわれが常に現在に生き、わがうえに降るごくささやかな露の影響もそっくり示す草のように、われわれのうえにふりかかるあらゆる偶然事を活用するならば、そして過ぎ去った機会をなおざりにしたことのつぐないをするためにわれわれの時を過ごし、それが義務をはたすことだと呼ぶようなことをしないならば、われわれは祝福されるであろう。われわれはすでに春が来たのに冬のうちにさまよっている。こころよい春の朝のうちではすべての人の罪は赦される。このような日は悪徳に対する休戦である。そのような日がもえつづけるあいだは極重罪人も戻りうるのである。われわれ自身の恢復された無罪を通じてわれわれは隣人の無罪をも見わけることができる。われわれは昨日われわれの隣人を盗人として酔漢として肉欲者として知り、単に彼をあわれみさげすみ、世の中に絶望したかもしれない。しかしこの最初の春の朝、日は世界を再創造して明るく暖かく照り、われわれは彼が何かほがらかな仕事をしているのに出あい、いかに彼のつかれけがれた脈管がしずかなよろこびでふくらみ、新しい日を祝福し、幼年の無邪気さをもって春の影響を感じているかを見ては、すべての彼の罪科は忘れられてしまう。彼の身辺には善意の雰囲気がただよっているばかりでなく、たぶん新たにうまれた本能のように盲目的に非効果的にではあろうがかすかに神聖さの香りすら表現をもとめてまさぐりつつあり、しばらくのあいだは南の丘辺はいかなる野卑なざれごとをもこだまさせない。彼の節くれ立った外皮からは、無垢な、うるわしい新芽が、最も若い植物のようにやわらかく新鮮に萠えだして新たな一年の生活をこころみようと準備しているのが見られる。彼もまた彼の主なる神のよろこびに参入しているのである。なぜ牢番は彼の牢獄の戸を開けはなたないのか――なぜ判事は彼の事件を中止しないのか――なぜ説教師は彼の集いを解散しないのか! かれらは神がかれらにあたえる暗示にしたがわず、神がすべての者に惜しみなくさし出すゆるしを受け入れないからである。
「毎日、朝のおだやかなめぐみぶかい空気のなかではぐくまれる善への復帰は、人をして、善を愛し悪を憎む点においては、伐りたおされた森の木の新芽のように、人間の本性にいくらか近づかしめる。同じように一日のうちに人がなす悪は、ふたたび芽ぐみはじめた善の萠芽がそだつことをさまたげ、それをほろぼす。
「善の萠芽がこのように何日となくそだつのをさまたげられると夕べの恵みぶかい空気もやがてそれを維持することができなくなる。夕べの空気がもはやそれを維持するに足らなくなると人間の本性はたちまち畜生のそれと多く異なるところのないものになる。人々はこの者の本性が畜生のそれと異ならないのを見て、彼は固有の理性のはたらきをはじめからもたなかったとかんがえる。それが人間の真の、そして自然の情であろうか?」





()





西()()



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 ()()()()調
  








 西  西  西  ()() 貿()()()西

“Erret, et extremos alter scrutetur Iberos.
Plus habet hic vitae, plus habet ille vitae.”
「かれらをしてさまよい、遠きはてなるオーストラリア人を観察せしめよ、
われは神をより多くもち、かれらは路をより多くもつ。」

 西
 ()
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 鹿() () ()()
  ()()()()()()
 
 () 
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 退 ()()
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底本:「森の生活」岩波文庫、岩波書店
   1979(昭和54)年5月16日改版第1刷発行
   1994(平成6)年11月15日第30刷発行
※「註文」と「注文」、「痩」と「瘠」の混在は、底本通りです。
※ページを参照している箇所は、該当する見出しを記載しました。
入力:Cavediver
校正:砂場清隆
2019年6月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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 W3C  XHTML1.1 



JIS X 0213



JIS X 0213-


鋭アクセント付きι、U+1F77    378-1
鋭アクセント付きο、U+1F79    378-2


●図書カード