相川おけさ

村松おけさ、佐渡牛などのこと

江南文三




 
 
 
 
 
 
 
 西鹿西西()調
 調調
 調
「中音の相川おけさ」のキャプション付きの楽譜
「二上りの相川おけさ」のキャプション付きの楽譜
「一下がりの相川おけさ」のキャプション付きの楽譜
 調※(四分音符、1-2-93)調
楽譜

楽譜

 ()()
楽譜
調
 
楽譜
 調調
楽譜
 
 
思ひ切りや切れるよかねの鎖も切りや切れる
など言ふ歌は字が足りてはならない歌だと思ひます。

 其他の歌――
佐渡と越後は竿さしや届く橋をかけたや船橋を
 勿論越後に向つた小木の方の歌です。「何故に届かぬわが思ひ」とも歌ひます。
佐渡で搗く餅越後でならす佐渡と越後はひとねばり
「飾つきや」とも、「越後でこねる」とも歌ひます。
金があるとて高慢ぶるな佐渡ぢやみみずがふんに出す
 
あひが吹かぬか荷が無うて來ぬか但しや新潟にひがたの川留か
 あひの風は相川では東北北の風、小木邊では東南の風です。
空のよいときや新潟が見える殿はにがたの川裾に
澤根通れば團子が招く團子招くな錢はない
 西滿
酒は酒屋に團子は茶屋に女郎は相川の市町に
と言ふ歌もあります。
來るか來るかと上沖見れば矢島經島影ばかり
面の憎いは澤崎鼻だ見たい帆影をはやう隱す
 殿
水は水だがうぶすなのそえかえびす女に戸地男(そえはせえの意)
 この狄は北狄と言ふところでして、とぢと何れも佐渡の北側にあります。東側の夷とはちがひます。東側の夷は殆んど完全に日本化して居りますが、相川以北の所謂海府地方ではまだ全然人種の違つた、昔のえびすらしい人達が住んで居ます。えびす女にとぢ男、何れも此邊の人は、同じ島でも小木邊の人とは全然違つて、鼻筋が通つた、美しい筋骨を持つた、眼の引つ込んだ、眉毛の長い、脊の高い人達です。どんな肌のなめらかさも、髮の毛の美しさも、骨格と筋肉との持つてゐる力に比べると木つぱのやうなものだと言ふことを、私は佐渡へ行つてはじめて經驗しました。利口さやリフアインさでは無い、炎天の水、饑ゑたときの食物のやうな力で、反省の暇がない位力強く生命そのものを引きつけるのは生きた健康です。美では無い力です。筋肉です。骨格です。想像や夢の生んだ戀で無く戀することの出來る女、そして結婚して男を饑ゑさせない女、疑はずに男を愛しうる女。
いやきやさればおけ主のやうなかぼちや一つ種蒔きや千もなる
男に奴隷のやうにこびりついて上べだけの自由を欲して我儘を言ふ他國の文明人とはちがつた處があります。
可愛い男は百尋たつ沖で烏賊を取るやら眠るやら
烏賊釣りは潮時がありますので、星を時計の代りにして、釣れる時釣れる時のあひまに小舟の上で眠るのです。
可愛い男はみな下通ひに下に松前なきやよかろ
下は北海道方面です。
殿がかあいけりや乘るかごまでも濱に据ゑおく船までも
これは小木の歌でせう。
見送りましよとて濱まで出たが泣けてさらばが言へなんだ
泣いてくれるな出船の時にや綱も碇も手につかぬ
これも港の歌です。
殿が炭たきやわしや幌かけに殿がばいた切りや枝そぎに(ばいたは薪です。)
山で木を切る音なつかしや殿が炭たく山ぢやもの
北は大佐渡南は小佐渡中は國なか米どころ

 谿
 
 
 
 使退退鹿






   1926158

   1926158


200953
200965

http://www.aozora.gr.jp/







 W3C  XHTML1.1 



JIS X 0213