覚海上人天狗になる事

谷崎潤一郎




     

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※(「りっしんべん+喬」、第3水準1-84-61)

     

()()()西※(「片+旁」、第4水準2-80-16)※(「片+旁」、第4水準2-80-16)鹿使

     


()()()()※(「火/(火+火)+欠」、第4水準2-15-90)※(「羸」の「羊」に代えて「虫」、第4水準2-87-91)西調※(「りっしんべん+喬」、第3水準1-84-61)U+6C52220-5
此れに類似の本生譚は今昔物語等にも多く見受けられるけれども、天王寺海浜の蛤と云い、熊野参詣の馬と云い、いかにも高野の上人の前生にふさわしい。即ち上人は大師のお告げに依って自分の来世を豫知していたのである。しかし豫知していたが故に南勝房法語の如き信仰を建立したのか、此の信仰の故に天狗に生れるべく運命づけられたか。何れが因で、何れが果か。伝に依れば後者のように思われる。

     ○

上人の廟は山中の遍照ヶ岡にあるが、一説には華王院境内の池辺に葬ったとも云い、その他も現に増福院の庭中に存している。覚海伝の賛の終りに曰く、「遍照岡崛ノ枯枝落葉毫釐モ之ヲ採ルトキハ厳祟ヲ施ス、其ノ威其ノ霊信ズ可ク懼ル可シ、其ノ悉地ヲ成ズル上カ中カ下カ、都ベテ即身ノ佛カ、嗚呼奇ナル哉遊戯三昧」と。





底本:「聞書抄」中公文庫、中央公論新社
   1984(昭和59)年7月10日初版発行
   2005(平成17)年9月25日改版発行
底本の親本:「谷崎潤一郎全集 第十三巻」中央公論社
   1982(昭和57)年5月25日
初出:「古東多万」
   1931(昭和6)年9月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※底本は新字新仮名づかいです。旧仮名によると思われる部分のルビの促音は、大書きしました。なお旧字の混在は、底本通りです。
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校正:酒井裕二
2016年1月1日作成
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●表記について

「さんずい+氓のへん」、U+6C52    220-5


●図書カード