聞書抄

第二盲目物語

谷崎潤一郎




挿絵
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挿絵
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挿絵
挿絵
挿絵
()稿()()廿歿調()()()西()西
挿絵
()()()()()()()()()()()()()
()()()()()()()()()()()調
挿絵
()()()()()※(二の字点、1-2-22)()※(二の字点、1-2-22)()便()()()()()()()()()()()()()
挿絵



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挿絵
挿絵
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わらふ一炉焼返魂  早梅香動出前村
即今欲問三年別   十月桃花終ものいはず
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挿絵
挿絵
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挿絵
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()()()()姿殿※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)
一、石田治部、備前宰相、島津両三人於捕来は為御引物其所之物成永代無役に可下旨御掟候事
一、右両三人とらへ候事於成は討果可申候、当座之為引物金子百枚可下旨被仰出候事
一、其村中差送候においては路次有様に可申上候、於隠候は其者之事は不申、其一類、一在所、曲事に可仰付候旨事
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()()()()()殿()調
()()
()
()()殿
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挿絵
殿

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()()()()()
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殿()殿()()殿()()()()殿殿殿()()殿殿殿
宿()()()殿()()()()()()()()殿()()殿
挿絵
殿()()()()()()()()()殿()()()()()
挿絵
殿殿()※(「口+它」、第3水準1-14-88)()殿殿()()()殿()姿()()()殿退殿()殿殿()()()()殿()()殿()殿()西殿殿()()
殿殿()()姿()()()殿()()()殿殿
挿絵
殿()()()()殿殿()沿()()()()()()()殿()()()()西()()()()()



挿絵


姿宿()()()()()()()()
()()()()()()()()()()
挿絵
()()()()()()()()()宿()()()()()()()()
()
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治部殿の知行所ちぎやうどころは石田にて
   ひでりとなればみつなりもなし
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()()()殿()()()()()





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挿絵




()()()()
()()殿()()

()()()()
()()()()()()()()()()()()()()()()
()()※(「髟/(冂<はみ出た横棒二本)」、第4水準2-93-20)()()()()()()()()宿()()
()()()()()()()()歿()()()()()()殿()()()()()
挿絵
挿絵
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天下は天下の天下なり、関白家の罪は関白の例を引き行はるきの事、もつとも理の正当なるべきに、平人へいにんの妻子などのやうに、今日の狼藉らうぜき甚だ以て自由なり、行末ゆくすゑめでたかるべき政道にあらず、あゝ、因果のほど御用心候へ、御用心候へ
とそう云ってから、
世の中は不昧因果の小車や
   よしあし共に廻りはてぬる
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挿絵






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()()殿




()()殿()()
調
()()殿
()調
挿絵
殿()※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)()()()()()()鹿()()()殿西殿殿殿殿()姿
()()()()()()()()()()姿()
挿絵
()殿殿()()殿殿()()()()()殿()()殿殿殿殿殿

殿
挿絵



殿()()


()()
()()()()殿


殿


()
殿


調
()殿()()()殿()()()()()殿()()()()()



()()()()()殿()()()殿()殿
姿()()殿湿()()()宿()()



()()()殿()()()殿()()殿()()宿()
挿絵
殿()殿()()()()宿()()()()()
挿絵



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挿絵
()()()()()()()()()

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※(「髟/(冂<はみ出た横棒二本)」、第4水準2-93-20)
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挿絵
調()()()()()()()()()()()()()()()使()※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
一 ざとうしゆ参候はゞ御さか月給づきたまひ御ひき給候べく候、あなたがたに候はんずるざとうしゆ参候はゞ御ねんごろは候べく候、なれ/\しくは御おき候まじく候、ついでに心へ候へ、ざとうとてもおとこのめのくらきにて候、女中がたへあんないなしに立入物にてはなく候、(中略)きんねんざとうと申せばいづれもおくがたへ参候、心へがたく候へども御国ぶりにて候まゝ一人して申されず候、たゞしみん一など参候はゞ御心やすく御よび候てもくるしからず候、おさなくより御しり候、又としよりぬるがふつゝかの物にて候、御ねんごろよく候べく候、さ一これ又おなじごときの物にて候、その外はなれ/\とはめし候まじく候、さて候ともざとうしゆなど三こんなどのうちには御しやうばんにはめし候まじく候、御つぎにてたび候か、又御またせ候てのちに御さかな給候て、くこん給候べく候
挿絵
寿()()()使()()()()

()()()()()()()()※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)()()()使※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)歿()()

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挿絵
()()()()()()()()※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)()()()()()()()()()
おん坊京に上るなアら
びや箱なんぞは置いて行け
あとでつるりやつんつるりや
いてなり慰もう
()()()()()()()※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)()()()()()()()()
挿絵
()()()()()()()()()()()()()殿殿()殿()()()殿()()()()()()()()()殿()便()()()()
()()()()()宿
この間よりすこしかいき(咳気)いたし候まゝ文にて不申、文のかきはしめにて候、又にのまるとの(二丸殿、淀君のこと)みもちのよしうけたまはり候、めてたく候云々
()()()()()()()()()()※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)()()()()
挿絵
挿絵
殿()()()()()()()使()()殿()()宿退()()()

()()()
姿殿()()()()()()()()殿殿

()()西()()()※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)()()()()()()()()()()()※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)()()()
挿絵

()()()()()()()姿()()
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挿絵
※(「てへん+僉」、第3水準1-84-94)※(「てへん+皎のつくり」、第4水準2-13-7)()()()()()()()殿()()()()()()
挿絵
()()()()殿()殿姿()()便()殿()()()退()()()()()()()()()
調
()()()()()()()※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)()()




挿絵
()殿()()殿
()()()
はや/\とまつら人(松浦人)おこし候事、まんぞくにて候、そもじよりれい申候べく候、さだめてまつうら、こをひろい候て、はや/\と申こし候間、すなはち、このなはひろいこと可申候、した/\まで、おのじもつけ候まじく候、ひろい/\と可申候
()()
()()()()()()駿()()()()()退()()()()()()()()()()()()
挿絵
()()()()便()()
木津川の端に生ひたるかば桜
   ちるこそ花の綴目とぢめなりけれ
()()()()()()()()()()()()
夜もすがら月をみむろも明け行けば
   宇治の川瀬にたつはしら波
()()()()()西()()()()()()()()殿()()()()()()()()()()()()()()()()
挿絵
()()()()()()()()()()()()()()()()()()
殿()()()()()()()殿西鹿()()
諒闇の世を憚らぬ狩なれば
   これや殺生関白せつしやうくわんぱくと云ふ
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挿絵
()姿()()()()()殿()()()()()()()殿()

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年月を心にかけし御芳野の
   花の木蔭にしばしやすらふ
かた分けてなびく柳も咲きいづる
   花にいとはぬ春のあさかぜ
みるが内にまきのしづえも沈みけり
   芳野の滝の花のあらしに
それから又、
千早振ちはやぶる神やみるらん芳野山
   からくれなゐの花のたもとを
治まれる代の形こそみよしのゝ
   花にしつやも情くむ声

挿絵
殿殿殿()()漿()()()()()殿
芳野山梢の花のいろ/\に
   おどろかれぬる雪の曙
また関屋の花の木の下にて、
芳野山誰とむるとはなけれども
   今宵も花のかげにやどらん
関白殿のお歌には、
木々は花苔路は雪と御芳野の
   わけあかぬ山の春の袖かな
()()()宿殿()()殿
いつしかと思ひ送りし御芳野の
   花をけふしも見そめぬる哉
()()殿()()()()()殿()()
挿絵

()殿()殿殿()()()()殿殿殿()殿退()()()()()殿()()()()西()()()()()()()()()()()()
挿絵
殿()()()()()()()()()()殿()()()殿()()()殿宿()()()殿()()()()殿()()()()()()殿()()()()殿殿殿()()※(「勹<夕」、第3水準1-14-76)()()殿調()()殿()殿
()()()()()鹿()()()()()()()
挿絵
挿絵
殿使殿殿殿()()殿()()()()殿()()殿殿殿殿()()
近き頃太閤様聚楽へ御成とて、御用意様々御座候、中にも北山にて鹿狩のめとて、国々より弓鉄胞てつぽうの者を選びすぐり、数萬に及び召し上せられ候、是は全く狩くらの御為めならず、御謀叛むほんとこそ見えて候へ、対面にて申したく候へども、返忠かへりちゆうの者といはれん事口惜しく候、又申さぬ時は、重恩をかうむり候主君へ弓を引くべし、此旨を存じ、我名を隠してくの如し
殿()()()調使殿殿殿()()()殿()()殿()殿()()()()()()()()()()()殿()()()殿()()()()殿殿()()()殿()()()()()殿殿殿殿殿()殿
挿絵


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殿使()※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)()()()()()殿殿殿()()()殿()
挿絵
調
殿殿()()()()殿殿()使()()

挿絵
殿宿使便()()()殿()殿殿使殿()()()()殿()()()()殿()姿殿穿()()()
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挿絵
()()殿殿()()()()()()()殿()()()()()()()()()()()()調()()殿姿()()()



()宿()()()()()()()便()()()殿
挿絵
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挿絵
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十七番はおみや御前云々、是は一の台殿の御娘なりしを聞召し及び、わりなく仰せられて、召迎へ給ひしとなり、されば此由太閤相国聞食きこしめし、あるまじき事の振舞かな(中略)とて、愈※(二の字点、1-2-22)御憤り深く思召しければ、様々に頼りて、御様おんさま変へ、命ばかりをと申させ給へども、御許なきとぞ聞えし
と。
又石田軍記「秀次公之君達きんだち誅事つけたり卅餘人嬪妾の事」に云う、
十七番は於宮おみやの前なり云々、太閤深くそねみ思はるゝとかや。最後の体、おとなしやかに念佛して、
秋といへばまだ色ならぬ裏葉まで
   誘ひ行くらん死出のやまみち
又太閤記に載っている辞世の和歌には、
うきはたゞ親子の別れと聞きしかど
   同じ道にし行くぞうれしき

()殿()()()()()便()
挿絵
挿絵
()()()()()()()殿()()()()()()()()()()()()



()()()()()()()()姿
挿絵
挿絵
()()()()()宿退()()()()()()()()()
鹿()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
と。又いわく、
同十五日北野へならせ給ふに、盲者一人杖してとをり侍るを、秀次公御覧なされ、酒をのませ候へとて、手をひかせ給ふか、即右の腕をうち落し給へり、盲者中々きもをけし、をちこち人はなきか、いたづらものめが人殺しを致し候に、おりあへや人々、助よやものゝふと、高声にのゝしりぬ、熊谷大膳亮だいぜんのすけ其あり様にても助りたく思ふかと問し時、盲者察し、年頃としごろ此辺にて殺生関白が辻切を物し侍るよし聞及びし、必定是なるべしと思ひつゝ、かく盲目と成さへに、如何いかなる悪業あくごふにせめられて、此身と成ぬるよとかなしく存候に、如何してながらふべき、急ぎ我首を取て、殺生関白の名を後代までさらし給ふべし、敵の首をとらん事は思ひもよらざる事也、此職に在ては、天下の邪法を正し給はんこそ、国たましゐの役なるべきに、みづから邪法を行ひ給ふ事、桀紂けつちうが再誕うたがひなし、其因果そのいんが幾程もなかるべきぞと、悪口せしが、づた/\に成てみえにけり
と。太閤記の作者は此の項の後に附記して曰く、
不昧因果と云まじや、又物の自然と云てんや、符節を合する事こそあんなれ、其故いかにと云に、秀次公六月八日比叡山へ登り、狼藉らうぜきを御心のまゝにし給ひしが、七月八日高野山へ上り給ふて、うきめを見給ひけり、同十五日北野にて盲者をころし給ひしが、其刀にて介錯かいしやくせられし也、まことに昔は因果の程をつゝしめよ、あるひは其因果孫彦まごひこむくふか、或子に報か、或其身にむくふかなど、云しぞかし、しかは云ど、今は皿のはたを廻り侍るよと、世俗のことわざなりしが、げにおぼえにけり
()()()()()()便()
()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使
挿絵
()()()()()使輿()輿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使

()
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挿絵
使宿()()使()()()()調
使退()()()()退()()殿()()()()()()退()()()()()退殿()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
挿絵
()()殿()()()()殿()※(二の字点、1-2-22)()()()()()()()便()使使退()()()
挿絵
輿()()()殿()()輿()()()()()輿輿輿()輿()()()()()()()輿()()宿()()()()
思ひきや雲井の秋の空ならで
   竹あむ窓の月を見んとはめつけ
()()()()()()()()()()()()()殿()()西輿
三笠山雲井の月はすみながら
   変り行く身の果てぞ悲しき
挿絵
宿()()()()()()()()宿()()()
転寝うたゝねの夢の浮世を出でゝ行く
   身の入相いりあひの鐘とこそ聞け
()()()()
挿絵
()()()()()()使()()使()()()()殿殿()西()()
挿絵
輿宿()()()()()()()()()()()()西()()使
()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()殿西
()()()()退()使殿()()()()使()()()殿()()輿()()()
挿絵
()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
挿絵
()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
()()()()()()()殿使()()()()()()()()()()()()()()()()
挿絵
()()()()()()()()()()()寿()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()宿()()
挿絵
()()()()殿殿()()使()()()使調()()()()()()()()()()()()()()()鹿()()()()()

哀れとも問ふ人ならで問ふべきか
   嵯峨野ふみわけておくの古寺
又大雲院で自刃した白井備後が妻の辞世に云う、
心をも染めし衣のつまなれば
   おなじはちすの上にならはん
()姿()輿()()



挿絵
()()()()()()()()()()()()()()()()()()殿殿()()()()()()()()()()殿()()()()()()()()()便姿()()退()()()()()()()()()()()※(二の字点、1-2-22)()殿殿()()()
挿絵
()
辿()()()()()()()※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)()()()()鹿()()()()()()()
挿絵
※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)輿()()
去程さるほどに秀次公御若君達ならびに御寵愛の女房達これかれ三十人餘、同八日之夜徳永式部卿法印がやかたへうつしまいらせ、前田徳善院田中兵部大輔きびしく番をつとめにけり、かくて十一日丹州亀山之城へをくりまいらせ、堅く制法物に記し付、親しきかたよりのをとづれさへに思ひ絶しなり、やがて帰京おはしまして洛中受渡し、六条河原にしてこと/″\く生害に及びなんとなり、益田少将此事をよくしれり、いたはしき事のいたりいたはしきは、此上あるべからず、かやうなる憂事を聞なば、身もあられん物か、我はもと江州浅井郡にして、本願寺之門流小菴を楽しみありし坊主なりしを、秀次公天下之家督を請させ給ひてより、それがしを三奉行之内に加へさせ給ひき、報じても報じがたきは、此恩にしくはなし、いざ若君達を見廻奉ると号し、亀山に参りいづれもさしころし申さんと、ねぶかく思ひこめしなり、一人有し息女をば、秀頼公御母儀へ頼み奉りつかふまつるやうにと、七月二十日大坂へ下しけり、妻の事は亀山よりの左右さう次第に藤井太郎右衛門と云し者に首をはねよ、此事返々かへす/″\露洩つゆもらすなよと、せいしをかゝせ、廿二日夜をこめつゝ名残をしくも宿を出て、亀山へいそぎ侍るに、おひの坂にて兵士多く有て、見廻の上下一人もとをすべからざる旨、前田徳善院増田右衛門尉石田治部少輔下知げぢなりとて追帰おひかへしけり、されば亀山にてわか君たちおはします所、番等の寛急しらんがため、持参せし折などこれは御ゆるし候へ、さゝげ奉り、いさゝかなぐさめ申たく候、ひとへに御芳志たるべきと赤手をすってとをし、其身はむなしく帰にけり、折など捧侍りし者立帰りしまゝ、各御有さまをくはしく尋ぬるに、亀山本丸にをしこめまいらせ、中/\われ/\かやうなるものも、三の丸より不入よしなれば、少将思ひ絶たりし也

()()鹿()()()()西()
物のわけをもしらぬ者ども、小肘こひぢつかんで引立ひつたて、車一両に二三人づゝ引のせ奉るさへに、若君姫君の御事さま、さても/\といはぬ者なく、其身の事は不申、見物の貴賤も※(「口+童」、第4水準2-4-38)どつなき出、しばしは物のわけも聞えざりけり、世におはしし時は、花やかなる有さまにて有べきが、昨日は今日に引かはり、白き出立いでたちの外はなし、若君姫君をお乳人めのとにも、はやそひまいらせず、御母おやの膝の上にいだき給ひしに、何心もなく、おち(お乳の人)もこゝへなんとのたまふの、いたひけさ、あはれさ、此上あらんとも覚え侍らず、三条河原に着しかば、車よりいだきおろし奉りぬ、各秀次公の御首の前へ、我おとらじと、はら/\とより給ひ、ふしおがみ候しさまあさからず見えにけり、一の台と申は、菊亭右府の息女なれば、いづれもよりは上におはしけり、行年三十四歳、今度の御謀反むほんの沙汰ゆめ/\なき事を、増田石田がさゝへに、かくならせ給ふ事のあはれさ、是非なくおぼして、かくなん
心にもあらぬ恨みは濡衣ぬれぎぬ
   つま故かゝる身となりにけり
挿絵
或は云う、
()※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)殿()()()()()()
長らへてありふる程を浮世ぞと
   思へば残る言の葉もなし
※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)()廿()()()()()()()()()()稿()()
挿絵






   198459710
   200517925
 
   198257625

   19351015615
5-86
()()()

1878113419633894
kompass
 
201634

http://www.aozora.gr.jp/







 W3C  XHTML1.1 



JIS X 0213



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