お祖ば母あさんは、あかりの下したに針はり箱ばこをおき、お仕しご事とをなさっていました。そのうち、押おし入いれから行こう李りを出だし、なにか、おさがしになりました。 ﹁おばあさん、なにをなさるの？﹂と、武たけちゃんはいいました。 ﹁つづれさせが鳴なくから、うかうかしていられません。﹂と、おっしゃいました。 ﹁つづれさせって？﹂ ﹁ほら、リーリーと、鳴なくでしょう。﹂ ﹁こおろぎのこと、どうして、つづれさせっていうの？﹂と、武たけちゃんが、聞ききました。 ﹁あの鳴なきごえを、昔むかしの人ひとは、じき寒さむくなるから、冬ふゆの仕した度くをせよ、と聞きいたので、こおろぎを、つづれさせというのです。﹂と、お祖ば母あさんは、お答こたえになりました。 ﹁昔むかしって、遠とおい前まえのことなの？﹂ ﹁そう、おばあさんの、そのまたおばあさんのころから、夜よるが長ながくなると、みんな、よなべをしたものです。﹂ 武たけちゃんは、だまって、リーリーと鳴なく、こおろぎの声こえを、聞きいていました。 いい月つき夜よで、窓まどのかきの葉はが、黒くろくうつりました。