稚子ヶ淵

小川未明




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 二郎はその言葉を聞き、何となく悲しく感じて、姉に手をひかれて林の裡から出た。……
 二郎は心のうちで、どうして姉が斯様こんな山道をくわしくしっていようか……斯様なに暗いのにどうして斯様なにみちが分るだろうかといぶかしがりながらるいていた。しかし姉はいつになく、沈んでいるように見えたので、自分も口をつぐんでなるたけ話をせまいものと黙って歩るいていたのである……。やがて大きな沢や、幾つかのたにを越えて、細い細い山途に差しかかると、山のを離れて月の光りが渓川の水に宿やどっている。二人は黙ったまんまで途を歩いている……
 この時姉は始めておととを顧みて、さも名残惜そうにして見つめたのである。弟も月の光りに始めて青白い姉の顔をつくづくと眺めた。
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 二郎の声はもう涙にむせんで、
「じゃ姉さんは、やっぱり帰らないの……。僕は姉さんと一しょに行きたいから連れて行って頂戴! 僕は独りで帰るのは厭だ。」
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「二郎や、それは魔物がお前を見込んでいるのだ。もうもう決してその池のはたへ行くことはならんぞ。」

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底本:「文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船」ちくま文庫、筑摩書房
   2008(平成20)年8月10日第1刷発行
   2010(平成22)年5月25日第2刷発行
底本の親本:「愁人」隆文館
   1907(明治40)年6月25日発行
初出:「早稲田學報」
   1906(明治39)年3月号
※「歩るいて」と「歩いて」の混在は、底本通りです。
入力:門田裕志
校正:坂本真一
2016年6月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




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