劔つるぎ岳、冠松まつ、ウジ長ちよう﹇#ルビの﹁ちよう﹂はママ﹈、熊くまのアシアト、雪せつ渓けい、前劔つるぎ 粉こなダイヤと星ほし、凍つた藍の山やま々、冠松まつ、ヤホー、ヤホー、 廊らう下かを下さがる蜘く蛛もと人にん間げん、 冠松まつは廊らう下かのヒダで自分のシワを作つた。 冠松まつの皮ひ膚ふ、皮ひ膚ふに沁みる絶ぜつ壁ぺきのシワ、 冠松まつの手て、手ては巌いはを引ひッ掻かく。 冠松まつは考かんがへてゐる電でん車しやの中なか、 黒くろ部べけ峡ふこ谷くの廊らう下かの壁かべ、 廊下は冠松まつの耳みゝモトで言ふのだ、 松まつよ 冠松まつよ、 冠松まつは行ゆく、 黒くろ部べの上うは廊下、下した廊下、奥おく廊下、 鐵てつでつくった﹇#﹁つくった﹂はママ﹈カンヂキをはいて、 鐵てつできたへた友いう情じやうをかついで、 劔つるぎ岳、立たて山やま、双六谷たに、黒くろ部べ、 あんな大きい奴やつを友ともだちにしてゐる冠松まつ、 あんな大きい奴やつがよつてたかつて言いふのだ、 冠松まつくらゐおれを知しつてゐる男はないといふのだ あんな巨きよ大な奴やつの懐中で、 粉こなダイヤの星ほしの下したで、 冠松まつは鼾をかいて野やえ営いするのだ。