なが月つき下す浣ゑの日のゆふべ、 山やま下した岩いは根ね垂る水の 玉のしづくに核さねぐみて、 かつ熟うみこぼし斎いはひつゝ、 風かぜに額ぬかづく茴うひ香きやうの あゝ姉おと妹ゞびの二人もとよ。 化くわ石せきもすらむ秋あきの木きは 骨ほね立だち強ごはに呼い吸きつまり、 天つ御みの法りのおん宣つ告げに、 拗すねては、櫨はぢも葉こそ縒よれ、 孕はら婦みめながら茴うひ香きやうは 優う婆ば夷ゐか、悩なやむ色いろもなし 伴つれにはぐれし赤あか蟻ありの 飢うゑて足あ悩なゆむ湿しめり地ぢに、 憐あはれみ顔がおのおとどひは 茎くも﹇#ルビの﹁くも﹂はママ﹈も軟なよらに額ぬかづきて、 手たよ弱わが腕ひなにそと乗せつ、 弘ぐせ誓いもさこそ、あゝ茴うひ香きやう。