気も遠く世も消え〳〵や 丑三つの森の奥の 白びや檀くたんほのにくゆり 木こ薩さ地ぢしづき頃ほひ。 魑すだ魅まが気夢にふれて 孵かへりし我われかの心地。 皐さつ月きや闇み霊気ばしる 夜半の戸に額ぬかを垂れて あゝ堪へ難き胸の狂くる火ひゞ。 雛よばふ焼野の雉子の 闇睨む眼か きらに 燃え飛ぶ野火の遠火の 青あお火ひだ魂ま――あなやの刹那。 魄なほ霊しびゆらに揺ぎつ 讃さん歌か咽のみ喉どをあふれて 狂ひ心地、小手招き、 いと深き闇のをちに 認め得し小さき焔ほのほの后きさい。 五い十そ年ぢのわが歌の世を 上かみ下しもの永劫に うるはしくも霊いみ妙じく。 不滅の光ひか明りの宮の 常とこ虹にじの御みく座らの上へ。 われ生いの命ちの王者が 斎いつかれむほのほの后きさい 猛火くわの天てん衣ね左ゆん手でに 着きか代へをすゝむる情じやうの素そぶ振りよ。 この時白しら隼はやとびて 天あめの世に拍は手で打つ音ねもす くつがへれ今のこの世 我こそは理おも想ひの宮に ひとり笑む王者なるぞ。 焔そは燃ゆるもの 身の膏あぶらしぼるものか。 あゝ好し、后きさいに参まゐる。 焼けても人じん世せの外に活くべし。