真まな夏つの午ひるの片かた日ひな向た、 苔すこし泥ひぢばみ青む捨すて石いしに、 鳩はと酢かた草ばみは呼い吸き細ほそう雫しずくに湿うるひ 実みを持もちぬ、かつ喘あ息へぎつゝ。 そのかみ誰たれに小ちひさなる 性さがは得えて、また誰なれ恋こひて、その熟うみ実み、 かつこぼし、かつ夜よを待まちて、 いづ方かたへ精さう進じの魂たまぞ。 鳩はと酢かた草ばみはえも知らず、 捨すて石いしに。――小こさ雨めのあとの風かぜいきれ、 木き々ゞみな死しぬと泣なく庭にはに、ひとり静しづかに おほどかに夢ゆめに入るさま。 蚊か帳やを繞めぐれる名みや香うかうに、 手たま枕くらも頬ほもひた痩やせて病める身の 予よは横よこ臥ふしぬ。心こそ、鳩はと酢かた草ばみの 魂たましひにさながら似たれ。 風かぜまた薫くゆり小こさ雨めしぬ。 鳩はと酢かた草ばみも、予よも一ひと日ひ 天あめ地つちに幸さい福はひありき。