友ともよ恨うらまじ今け日ふよりは ねたまじ、君きみは濃のう藍らんの 底そこ見みえわかぬわたづみの 珊さん瑚ごの宮みやに恋こひを得えて 幸さきくあり、とに思おもひ止やまむ。 濃こあ藍ゐたゞえて見みえわかぬ わたづみ底ぞこの恋こひなれば 誰たが子こ誰たが子この手てをとりて 口くちつけかはし笑ゑみかはし ありともいかで名なを知しらむ。 恋こひを恋こはれぬ嫉ねた妬みもて、 相あひ合あふ魂たまを咀のろふとも、 三月ぐわつ尽じんの百びや蓮くれ華んげ 得えやは枯からさむあたゝかき 蕾つぼみふくめる緋ひぼ牡た丹んを。 寄より藻もの花はなも匂にほはざる。 荒あり磯その辺ほとり、夏なつの日ひに 照てり晒さらされて帆ほた立てが貝い 帆ほを失うしなひぬ、砂すなの上へに 歯はをくひあてゝ滅ほろばゞや とおもひにしも怨をん疾しつの 膿うみに悩なやめる昨よ夜べなりし、 帆ほを失うしなひし貝かいならば 今け日ふより思おもひ安やすからむ、 荒あり磯その上うえや寂じや光くく土わうど―― ねたみくづれし花はなならば 今け日ふよりなげきあらためむ、 法のりの雨あめ降ふれあゝさらば、 乱みだれて飛とびし花はな片びらを 濡ぬれ朽くたしめよ土つち着きせよ。 日ひご毎と夜よご毎とに死しにかはり 死しにかはりてもあゝ友ともよ ねたまじ友ともの恋こひ人ゞとよ、 こひねがはくは円まどかなる 愛あひの光ひかりを仰あふがしめずや。