神かみ無なづ月き、日は淡あは々〳〵と 夕ぐれの雲ににほへば、 眼め路ぢひくき彼かな方たに薄うすれ あはれなる遠えん樹じゆぞ見ゆる。 畦あぜをゆく斑まだらの牛と 黄あめ牛うしは声も慵ものうく、 今は皆刑しおきの場にはに 皮剥はがれ紅く伏しなむ、 かく思ひ定めし如く とぼとぼと霧にまぎれぬ。 素すが枯れ野ののあなた、沼ぬじ尻りの、 荻をぎすすき折れ伏す所、 ああ如何に髑どく髏ろを洗ふ 冬の水音して落ちむ。 ひえひえと身に泌む寒さ、 われは今いづこ歩むや、 ふと思ふ、ああ人の世も ここにして終は極てにかあらむ。 下り坂をぐらくなりて 見るかぎり煙うづまく。