愚かなる。 太陽を捕え、朝の日光を、 縄をもって縛いましめむとする。 風に乗り、あるはまた、 走る流れに逆らわむとする。 四季を阻みて、降る雨を止めむとする。 空気と戦う心無さよ。 ありとある力を、畢ついに無にせむ。 かかるに同じく、かかる業より更に愚かなる。 人の言う所を咎め、そを強いて教に適かなわさんとする。 定めを人の上に立て、 物言うも、そを超えしめぬ。 さなり、人の口を壅ふさがむこと、 吹く風を捕うるよりも難きものを。 愚かなるものよ。 ︵﹃近代思想﹄一九一二年十月創刊号に飄風名で発表︶