青い服の長い列、 みんな揃って青い服、 ひょろひょろとした、 せいのひくい、 営養不良の、 顔まで青い長い列。 みんな同じようなゲートルをまいて、 手に手に日の丸の小旗をもって、 生徒のような帽子をかぶって、 どれもこれも、 鉱毒と過労にひきつったような顔。 時間にして一時間以上、 長さにして一里以上、 数にして一万以上、 砲兵工廠から二重橋まで うねうねと蟻の列のように。 それがみんな人間だ、 しかも髯をはやした立派な人間だ。 青い服を着た職工―― 人間の器械だ。 花の日の酔うような街中を、 小旗をふりながら謳ってゆく、 なんと言って謳ってゆく、 見たことも、嘗めたこともない、 ﹁黒くろ酒き白しろ酒きをとりもちて――﹂……。
(花の日所見)
(『生活と芸術』一九一五年十二月号に発表)