馬鈴薯階級の詩

中島葉那子





 (一)














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鹿

 








 (二)


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鹿






 










 (三)


つくづくと人間並の暮しがしたいと思った
それは自分達の生活が人間並でないからの事。
朝っぱらから雨に降られて
外の仕事の出来ない日
馬小舎の隅で馬糞の匂いにむされながら
俵を編んでいると
疲れ切った体からのそのそと眠気が這い上って来る
久しぶりの雨だと云うのに
半日の休みもなく
此の世に許された唯一の楽しみであるかの如き
睡眠をすら欠いたはげしい労働の日々
その報酬として受取るものは何か!
相変らずの貧乏と過労!
寒気と 飢
来る年も 来る年もマイナスばかり貧困の中に
一生を果してくちてゆく父母
それがやがて来る
未来の自分達の姿ではないか。

つくづく人間並に生きたいと思った。
こうした生活への要求が
遂に私に不屈な反逆を教えた。
それは誤まられた組織の上に
正しく人生を生き様とする者の
余儀なくされた闘であり
必然の帰結である





底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集 (二)」新日本出版社
   1987(昭和62)年6月30日初版
底本の親本:「北緯五十度詩集」北緯五十度社
   1931(昭和6)年11月
初出:「北緯五十度詩集」北緯五十度社
   1931(昭和6)年11月
入力:坂本真一
校正:Juki
2013年6月19日作成
2015年8月29日修正
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