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「国定忠治」42年ぶり通し上演

2007年04月05日15時35分

 新国劇の名作「国定忠治」を、緒形拳を迎えた劇団若獅子が、7、8日に東京・国立劇場で42年ぶりに通し上演する。行友李風作、沢田正二郎演出による極め付きの舞台。「まるごと上演するので、人間ドラマが分厚くなる」と忠治を演じる劇団代表の笠原章は言う。またたび物の義理と人情、滅びの美学が、どう今の観客にアピールするだろうか。

 上州無宿の国定忠治は、映画、演劇、流行歌など様々な芸能で、大衆に愛された。悪をくじき、民百姓に財を分ける。剣の腕もたつ人望家。当時の博徒は、体制側である目明かしとの二足のわらじを履いた。しかし、アウトローに徹して、磔(はりつけ)の刑で死ぬ。その潔さが庶民の心を揺さぶった。

 新国劇では創立者の沢田が取り上げ、辰巳柳太郎に引き継がれた。豪快で美しい殺陣、「赤城の山も今夜を限り」に代表される名調子のせりふ、歌舞伎に近い洗練された型の演技。男の芝居が演劇ファンを熱中させた。

 新国劇が経営難から解散したのは87年。笠原は「師の辰巳と島田正吾の志を絶やしたくない」とすぐ若獅子を結成し、今年で20年になる。「20年記念公演は『忠治』の通しと決めていた。うれしい。役者をやっていて良かった」

 今回は全4幕7場。発端の「才兵衛茶屋」は、忠治をめぐる義理の関係が描かれているので復活させた。忠治が子分と別れて山を下る名場面「赤城天神山」をクライマックスに、最後の4幕では陰惨な結末が、ドラマを深める構成だ。

   ■新国劇の華 緒形拳も客演

 客演する緒形も新国劇出身。悪役の山形屋藤造で、コミカルな味も求められる脇にまわった。「日本人や日本語の美しさが新国劇にはある。里帰りしたくなった」と言う。

 37年に新国劇に入り、90歳になる清水彰が、捕り手の惣次役で渋く締める。「死を覚悟して天神山に登る悲しい気持ちがわかるようになった。自分を見せるのでなく惣次を生きたい」と淡々と語る。辰巳と共演し、解散後は若獅子を応援してきた朝丘雪路は、藤造の女房役。

 沢田演出をもとに今回演出するのは、辰巳の忠治をそばで見守ってきた田中林輔。「新国劇70年の歴史を作った舞台。使命として上演し続けたい。今の観客が見てくれるとしたら、郷愁か、大衆古典劇への興味か」と推測する。

 6500円〜3500円。6月22日から30日まで各地を巡演する。電話は03・3356・9875(劇団)。

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