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〈09政権選択〉自民、求む共産出馬 供託金肩代わりしてでも 愛知15区

2009年7月28日

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 「供託金を出すから立候補したら」。衆院愛知15区(愛知県豊橋市、田原市)で昨秋、候補の擁立を見送る方針だった共産の関係者に、自民陣営がこんな「秋波」を送っていた。保守地盤とはいえ自民への逆風の中、民主に共産票が流れるのを牽制(けんせい)しようと持ちかけたとみられる。共産は今月、候補擁立に転換したものの、「(自民側の勧めと)関係あろうはずもない」とにべもない。「冗談のつもりだった」(自民陣営)とはいえ、今回ばかりは自民もなりふりに構っていられないようだ。(山本晃一、岡田匠)

 衆院の解散・総選挙が近いと取りざたされていた昨秋。4選をめざす自民前職(当時は現職)の山本明彦氏は、会合で顔を合わせた共産の関係者に「供託金をうちが出すから、立候補したらどうか」と持ちかけた。

 本人は「冗談のつもりだった」と説明するが、共産側は「うちはお金で転ぶことはない」(地元の共産市議)と相手にしなかったという。

 山本氏が共産票に注目した背景には、危機感がある。山本氏は前回、12万票余りを獲得。初挑戦の民主・森本和義氏に5万票近い差をつけた。共産・斎藤啓氏は約2万票で、党側もこれが支持層と認める。今回の衆院選は、小泉旋風がないばかりか、昨年の時点でも自民への逆風が話題に上っていた。それだけに、共産の出方に気をもんでいた。

◇擁立「無関係」 共産

 共産は今回の衆院選で、「07年の参院選比例区で得票率が8%以上あった選挙区」などを目安に、全国的に擁立を絞り込んできた。経験則上、比例で8%の得票があれば、小選挙区で10%以上の得票が見込め、供託金没収にならないためだ。この基準に沿い、全国の小選挙区で約150人の擁立を昨年の段階で決めた。うち、愛知県内では1〜4区と12区に絞り、「少数精鋭」で臨む戦略できた。

 共産党東三地区委員会によると、愛知15区は前回の比例区で得票率7%と、党の目安のボーダーライン。当初は候補者を立てない方針だった。しかし、「不況の影響で共産党の存在感が高まっている」といった声が強く、支援者から供託金や選挙資金が集まり資金面のめどがたったため、今月7日、前回に続いて斎藤氏を擁立する、と発表した。

◇「仕方がない」 民主

 思惑通りの結果に、山本氏は胸をなでおろす。「共産が出なければ、2万票のうち8割ぐらいはむこう(民主)に行きかねなかった。共産が出てくれることで、その(民主へ流れる)票がなくなるだろう。助かる」と打ち明ける。

 一方、民主の森本氏は「(共産の候補擁立は)プラスにはならないと思うが、こればかりは仕方がない」とあきらめ顔だ。

 共産党東三地区委員会の稲生俊郎委員長は「今回の候補擁立は、決して民主党の流れを止めるわけではなく、自民党を有利にしようとは思っていない」と説明する。また、同党県委員会の柏木啓韶書記長は「(斎藤氏の)立候補表明の後、地区委員会に『立候補してくれてありがとう』という趣旨の連絡があった、という話は聞いている。(立候補を勧める)発言があったとしても、冗談で言ったというだけの話。候補擁立と関係があろうはずもない」と話す。

 同選挙区にはこのほか、幸福実現党の高橋信広氏も立候補を表明している。

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