﹁髪の毛で内部被曝︵ひばく︶の状態がチェックできる﹂という検査が、福島県内の幼稚園や保育園で広がっている。内部被曝量は毛髪では測定できないが、検査業者は﹁被曝だけでなく、がんや心の悩みもわかる﹂と説明。昨年夏以降、500人以上が受けたという。民間の保育園でつくる日本保育協会福島県支部は詐欺の疑いもあるとして、注意を促す通知を出した。
この検査は、東京都内のペット用品業者が設立した﹁日本QRS健康管理協会﹂を窓口に、超音波検診を行う﹁生理科学研究所﹂などが、1人当たり8400円で請け負っている。
業者によると、3〜4センチの毛髪20〜30本を量子共鳴分析器︵QRS︶という装置に乗せて微弱な電流を流せば、ヨウ素やセシウム137、ストロンチウムなど8項目の内部被曝の状態が、マイナス20からプラス20の数値で出るという。一定レベル以上であれば、医療機関への受診を勧めるという。
福島市内の幼稚園では昨年11月、園児ら約60人が検査を受けた。園長は﹁今後も希望者は毎年、受けられるようにしたい﹂と話す。いわき市内の保育園では昨年8月、園児や保護者ら約80人が検査を受けた。
内部被曝量は毛髪で測ることはできず、ホールボディーカウンターと呼ばれる検査機で全身を調べる必要がある。
日本保育協会福島県支部は1月上旬までに、県内70会員のほか、東北地方、茨城、栃木などの県支部にも﹁市民団体より詐欺であるので注意するよう連絡があった﹂として、注意を呼びかける文書を送った。坂本佳友支部長は﹁髪の毛で、がんや被曝がわかるはずがない。わらをもつかむ気持ちの親がだまされては困る﹂と話す。
業者は都内でも営業を展開している。昨年12月、4人の都議の呼びかけで、都議会議事堂内でデモ体験会が開かれ、約50人の親子が参加した。呼びかけ人の1人、民主党の関口太一都議は﹁都内でも放射能を心配する声があり、相談に乗ってもらった﹂と話す。
生理科学研究所の川口健所長は﹁これまでに内部被曝した子どもはいなかった。QRSを使えば、がんや腰痛、精神的悩みなど約3千項目の状態が7〜8割の確率でわかる﹂と話している。︵岡崎明子︶