次世代デスクトップ転送技術、SPICE入門Inside Linux KVM(1)(1/2 ページ)

この連載では、オープンソースの仮想化ソフトウェア、Linux KVM(Kernel-based Virtual Machine)とそれを支える技術の最新開発動向を紹介していきます。(編集部)

» 2010年06月29日 00時00分 公開
[平初レッドハット株式会社]

はじめに


 Linux KVMKernel-based Virtual MachineKVMLinux

 Linux KVMLinuxOS

 Linux KVMKVMOS使SPICElibvirt


 VDI

 

 使使使

  

 12Opteron

  

 TelnetSSHVNCMS RDPCitrix ICA使
リモートアクセス 図1 リモートアクセスプロトコルの役割

画面転送プロトコル、SPICEとは

 リモートのコンピュータにアクセスして、手元にあるように利用するだけならば、前述のTelnetやSSHなどでも必要十分な用途を満たすことができます。ですが、これからの画面転送プロトコルには、画面の転送以外に、キーボードやマウス、音声、USBなど、周辺機器も含めて透過的に利用できることが求められてきます。リッチになる一方のアプリケーションへの対応も視野に入れなくてはなりません。

 そこで登場してきたのが、SPICEというプロトコルです。Qumranet(現Red Hat)が提唱した画面転送プロトコルで、2009年12月にオープンソースとして公開されました(関連記事)。

関連記事
SPICE 公式サイト
http://www.spice-space.org/

SPICEの特徴

 SPICEの特徴には次のようなものがあります。

  • オープンソースの画面転送プロトコルである
  • クライアントから遠隔のホスト(OSではない)に接続できる
  • 仮想マシンのゲストOSのネットワーク帯域を使わない
  • LANでもWANでも同じように快適な環境を提供できる
  • CPUとGPUの処理の一部をクライアント側にオフロードできる
  • 高画質なビデオ転送と高音質な双方向音声転送ができる

 ポイントは、インテリジェントなプロトコルがオープンソースで提供されることにより、利便性が格段に向上するという点です。特に、高画質のビデオ転送機能は素晴らしい性能を発揮します。ローカルネットワークであればフルHD画質の映像をコマ落ちなく表示できますし、FOMA、イー・モバイルなどの3Gデータ通信サービスを使った場合でも、YouTube程度の映像なら問題なく楽しむことができます。

SPICE vs VNC

 現在、QEMUで仮想的な画面を提供するバックエンドにはVNCが使われていますが、このVNCとSPICEは、どのような点が異なるのでしょうか。違いをまとめてみました。

  SPICE VNC
BIOS画面の表示 可能 可能
フルカラー表示 可能 可能
解像度の変更 可能 可能
マルチモニタ マルチモニタ対応(4画面まで可能) 1画面のみ
画像転送 図形/画像転送 画像転送
動画再生支援 動画のアクセラレーションが可能 なし
音声転送 双方向の音声転送が可能 なし
マウスカーソル サーバ側/クライアント側制御 サーバ側制御
USB転送 ネットワーク経由でUSB転送可能 なし
暗号化 SSLによる通信の暗号化が可能 なし
表1 SPICEとVNCの比較

 こうして見るとお分かりのとおり、SPICEはマルチモニタに対応しているため、例えば証券会社のディーラー向けのシンクライアントに最適です。双方向の音声転送もできるので、VoIPなどのアプリケーションも特殊な仕組みなしで対応できます。また、動画再生支援機能は、Flashなどのリッチコンテンツを使ったeラーニングコンテンツを快適に動かすために効果を発揮します。

 こうした意味で、SPICEはまさに次世代の仮想デスクトップ転送プロトコルといえるでしょう。

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