<ご注意>
パンフレットの内容につきましては、平成30︵2018︶年12月30日に発効しました﹁環太平洋パートナーシップ及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律﹂による著作権法改正︵著作物等の保護期間の延長等︶、また、平成31︵2019︶年1月1日施行の著作権法の一部改正を反映しておりません。当分の間、ご迷惑をおかけいたしますが、掲載内容の更新時までしばらくお待ちください。
なお、改正の詳細につきましては、文化庁ホームページ﹁最近の法改正等について﹂をご参照ください。
Q1家庭内で行う音楽や放送の録音・録画に関して、補償金を支払う制度の概要を教えてください。 A1著作権法は昭和45年に全面的に改正されましたが、改正された著作権法第30条では、私的使用のために音楽や映画などの著作物を録音・録画︵複製︶することは、それらの作品の権利者に許諾を得ることなく自由かつ無償で行うことができるとされていました。 しかし、録音・録画機器や記録媒体︵ディスク・テープ︶の目覚ましい発達や普及に伴って、著作物などを家庭内録音・録画して楽しむことが広く定着し、これが著作物などの有力な利用形態のひとつとなってきました。さらに、近年ではデジタル方式による録音・録画機器の開発が進み、従来のアナログ方式と比べて高い品質の複製が可能となり、その結果、オリジナルと同様のコピー作品が社会全体として大量に作られるようになりました。 このような状況において、いつでも家庭内録音・録画による複製が無償で行えることは、著作権者、実演家及びレコード製作者が得られるはずの利益が損なわれているのではないか、との問題が提起されました。これを受け、文化庁著作権審議会︵当時︶において検討を行った結果、私的録音・録画による権利者の経済的な不利益を補償するために、私的録音・録画は、従来どおり自由としながらも、権利者に対する補償金の支払いが必要であるとの結論が出され、これを踏まえて、平成4年12月、著作権法の一部改正により、私的録音録画補償金制度が定められ、このうち私的録音補償金制度は平成5年6月1日から、私的録画補償金制度は平成11年7月1日から実施されています。 補償金制度の概要を整理してみますと、次のとおりです。 (一)家庭内等で私的に使用することを目的として、政令で定められるデジタル方式の機器︵特定機器︶及び記録媒体︵特定記録媒体︶︵Q3参照︶によって録音又は録画を行う場合は、権利者︵著作権者、実演家及びレコード製作者︶に私的録音録画補償金を支払わなければならないこと。 (二)この補償金を請求し、受領する権利があるのは、権利者によって構成され、文化庁長官が指定する指定管理団体であること。︵Q12参照︶ (三)指定管理団体が補償金の支払いを受ける方法として、︵イ︶メーカー・輸入業者は、あらかじめ補償金を価格の中に含めておく、︵ロ︶購入者は購入時に価格に含まれている補償金を支払う、︵ハ︶指定管理団体は、この補償金をメーカー・輸入業者から受け取る、という特例を設けたこと。︵Q4参照︶ (四)補償金の額は指定管理団体が申請し、文化庁長官が許可すること。︵Q5参照︶ (五)指定管理団体が受け取った補償金は権利者の所属する団体を通じて、個々の権利者に分配される︵Q6参照︶ほか、政令で定める一定割合︵2割︶の額については、著作権制度普及事業等、権利者に共通する有意義な事業に用いられること︵共通目的事業︶。︵Q7参照︶ (六)補償金を支払った人は、これらの機器又は記録媒体を著作物︵音楽・映像︶の私的録音・録画に使用しない場合には、その旨を指定管理団体に証明することによって、補償金の返還を受けることができること。︵Q11参照︶ Q2私的に録音・録画した複製物を人に売るわけではないのですが、それでも権利者の利益を害することになるのですか。 A2 著作権法は昭和45年に全面的に改正されたものです。その当時は、オープンリールのテープレコーダーがほとんどであり、家庭内での私的録音・録画はきわめてわずかな利用でありました。権利者には著作権法で複製を許諾できる複製権が認められており、私的録音・録画についても本来はこの権利が及ぶものですが、当時は家庭内での私的録音・録画の利用状況が少なく、﹁家庭内で楽しむなど限られた範囲﹂での私的録音・録画であれば、ただちに権利者の利益に重大な影響を及ぼすものではないという判断に立って、同法の第30条で私的目的に使用するための録音・録画は、著作権の権利者の許諾を得ることなく自由かつ無償で行うことができることと定められました。 その後、科学技術の進歩による録音・録画機器の高性能化とその普及はめざましく、その結果、家庭内における録音・録画が容易に、かつ、頻繁に行われるようになり、膨大な量の著作物がコピーされるという状況が生じ、さらに、デジタル方式による高機能、高性能の機器によって、家庭内においても、市販のCDやDVDソフトと同じような、高品質の録音物・録画物が作成されるという状況も生まれてきました。 このように、個々に見れば家庭内におけるごく小さな範囲の私的な録音や録画であっても、これを社会全体として見た場合は、大量の録音物や録画物が作成されることとなり、このような膨大な著作物の複製をトータル的に見れば、権利者の利益が損なわれていることとなります。 このようなことから、家庭内における私的な録音や録画による権利者の不利益を救済する必要性が生じ、平成4年12月の法改正によって、それまでの私的録音・録画は自由かつ無償という秩序を見直すこととし、私的録音・録画は、従来どおり私的複製の範囲内で、権利者の許諾を得ることなく自由に行えることとしながらも、権利者の経済的な利益を保護するために、一定の補償措置が講じられることとなったものです。これが私的録音録画補償金制度です。 著作権法では、私的複製の範囲を﹁個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内﹂と定めています。したがって私的な録音・録画だからといって大量に複製したり、他人に売ったり、インターネットで送信したりすることは、私的目的の使用の範囲を超えることとなり、著作権侵害になります。 Q3補償金の支払いの対象は、どのような商品ですか。 A3補償金の支払い対象となるのは、デジタル方式による録音・録画機器や記録媒体で、家庭内で一般に使用されるものに限られます。 デジタル方式とアナログ方式による録音・録画については、著作物の利用という観点からは、理論上区別する理由はありません。しかしながら、デジタル方式は性能面において格段に優れ、オリジナルと同様の原音・原画の高品質な複製が可能であり、かつ、劣化しないという特徴を有していますので、権利者の経済的不利益が一層大きくなってくるものと考えられます。またアナログ方式の機器・媒体は、すでに家庭内に広く普及しており、社会全般の混乱を避けるという意味からも、補償金の支払いの対象からはずして従来どおり無償とし、補償金の対象はデジタル方式による機器や記録媒体に限定されています。 補償金の支払いの対象となるデジタル方式の機器や記録媒体については、政令で指定することとされており、現在までに政令指定を受けている録音・録画用の製品︵特定機器及び特定記録媒体︶は、次のとおりです。︵平成22年3月末現在︶ ○ デジタル録音用機器 DAT︵デジタル・オーディオ・テープ・レコーダー︶ DCC︵デジタル・コンパクト・カセット・レコーダー︶ MD︵ミニ・ディスク・レコーダー︶ CD-R/RW︵コンパクト・ディスク・レコーダー︶ ○ デジタル録音用記録媒体 DAT︵磁気テープ︶ DCC︵磁気テープ︶ MD︵光ディスク︶ CD-R︵光ディスク︶ CD-RW︵光ディスク︶ (注)CD-R/RWについては、﹁録音用﹂または﹁For Audio﹂と記載されているものが補償金の対象となる記録媒体です。 ○ デジタル録画用機器 Blu・Ray︵ブルー・レイ︶ DVD-RW︵デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル︶ DVD+RW︵デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル︶ DVD-RAM︵デジタル・バーサタイル・ディスク・ランダム・アクセス・メモリー︶ DVCR︵デジタル・ビデオ・カセット・レコーダー︶ D-VHS︵データ・ビデオ・ホーム・システム︶ ○ デジタル録画用記録媒体Blu・Ray︵光ディスク︶ DVD-R︵光ディスク︶ DVD-RW︵光ディスク︶ DVD+R︵光ディスク︶ DVD+RW︵光ディスク︶ DVD-RAM︵光ディスク︶ DVカセット︵磁気テープ︶ D-VHS︵磁気テープ︶ (注)光ディスクについては、﹁録画用﹂または﹁For Video﹂と記載されているものが補償金の対象となる記録媒体です。︵デジタル・ビデオ・カメラと撮影用記録媒体は指定から除外︶ なお、著作権法第30条第2項において、デジタル方式による機器や記録媒体のうち放送の業務用など家庭内では使用されないような機器や録音機能付きの電話機など、本来の機能に附属する機能として録音又は録画機能がついているものについては、補償金の支払いの対象から除かれています。 Q4補償金は誰にどのような方法で支払うのですか。 A4補償金は、特定機器や特定記録媒体を使って、私的な目的のために録音又は録画を行う人が、その行為ごとに権利者に支払うのが原則です。 しかし、録音又は録画を行う人が、その行為ごとに権利者に支払いをするのは実際には難しく、また、私的な録音や録画は家庭内などにおいて行われるため、個々の権利者にとってみても、その実態を把握することは事実上できないことなどから、この原則に基づく補償金の支払いの実効を期すことは困難な面があります。 そこで、ユーザーや権利者双方の便宜を考慮し、この制度を実効あるものとしていくために、著作権法では補償金の支払い方法の特例を定めています。 支払い方法の特例とは、家庭内録音・録画の一括の支払いとして、特定機器や特定記録媒体のメーカーなどの協力を得て、その価格に補償金を上乗せし、ユーザーがこれらの特定機器や特定記録媒体を購入するときに補償金も合わせて支払うという方法であります。 つまり特定機器・特定記録媒体を購入した場合に価格に上乗せされた補償金が支払われるので、録音・録画ごとの支払いは不要であるという仕組みです。 また、権利者のためにその補償金を請求、受領することができるのは、文化庁長官が指定する団体︵指定管理団体︶のみとし、指定管理団体が補償金に関するすべての権利を集中的に管理しています。 現在、文化庁長官が指定する管理団体としては、私的録音に関して補償金を受ける権利を行使するための団体として、社団法人私的録音補償金管理協会︵sarah︵サーラ︶︶があり、私的録音補償金の請求、受領及び分配などの業務を行い、また、私的録画に関する管理団体としては、社団法人私的録画補償金管理協会︵SARVH(サーブ)︶が文化庁長官から指定され、同様の業務を行っています。(Q12参照︶ Q5補償金の額はどのような手続きで決定されるのですか。 A5指定管理団体は、権利者の補償金を受ける権利を集中的に管理し、また補償金の支払いの対象となる特定機器や特定記録媒体の購入者も多数ですから、その補償金の額は適正なものでなければなりません。そのため、補償金の額については、著作権法によって、文化庁長官の認可を受けることが義務づけられています。 また、その補償金の額は、家庭内における私的な使用のためのものですので、文化庁長官が認可する場合は、録音・録画の通常の使用料の額やその他の事情を考えて補償金の額が適正であると認められるときでなければ、その額の認可をしてはならないとされています。 補償金の額は、次のような手順を踏んで決まります。 (一)指定管理団体が補償金の額の原案を定め、対象となる特定機器・特定記録媒体のメーカーなどの団体の意見を聴いた上で、文化庁長官に認可申請します。 (二)文化庁長官は、学識経験者などで構成される﹁文化審議会著作権分科会﹂に諮問します。 (三)文化庁長官は、この分科会での答申を得て、認可します。 このように、補償金の額は、慎重に審議、検討して決定されるものですので、社会的にみて、公正で妥当なものといえます。 sarah︵サーラ︶及びSARVH︵サーブ︶は、特定機器・特定記録媒体の購入時に支払われる場合の補償金の額について、上記の手順を踏んで文化庁長官から認可を受けていますが、その額は、次のとおりです︵いずれも消費税別︶。 ●私的録音補償金の額 ●特定機器=カタログに表示された標準価格の一定割合︵65%相当︶の2%︵上限1,000円︶ ●特定記録媒体=カタログに表示された標準価格の一定割合︵50%相当︶の3% ●私的録画補償金の額 ●特定機器=カタログに表示された標準価格の一定割合︵65%相当︶の1%︵上限1,000円︶ ●特定記録媒体=カタログに表示された標準価格の一定割合︵50%相当︶の1% Q6補償金はどのように分配されるのですか。 A6補償金は家庭内録音・録画によって権利者が被った不利益を補償するためのものですから、権利者に分配されるのが基本です。 権利者への分配は、指定管理団体が定め、文化庁長官に届け出た﹁分配規程﹂によって行われます。 その際、補償金の個々の権利者への分配に当たっては、私的使用の実態を完全に把握することが困難であるため、放送やレンタルレコードのサンプリング調査、CDなどの生産実績調査、また、ユーザーへのアンケート調査など専門の統計学者の指導による手法、また映像作品の権利所有の実態とその割合の調査などによって、権利者の製作する分野ごとにできるだけ精度の高い分配資料を作成し、これらの資料に基づいて、権利者の各団体に適正に分配されます。個々の権利者にはそれぞれ所属する団体を通じて分配されます。 また、団体等に所属しない権利者への分配については、各団体に分配された中から請求に基づいて支払う措置がとられています。 なお、補償金はすべて権利者に分配されるのではなく、そのうちの一部︵2割︶は権利者に共通する特別の目的の事業のために使われます︵Q7参照︶。 Q7補償金は、権利者に分配されるほか、特別の目的の事業に支出されると聞きましたが、具体的に教えてください。 A7指定管理団体は、権利者への分配の例外として、補償金の一定の割合の額を権利者に共通する有意義な事業のために支出することが義務づけられています。 指定管理団体は、どの著作物や実演、レコードなどが、どの程度録音・録画されたのかということに関係なく、包括的に補償金を受領しています。そして、その補償金の分配は、所属に団体を通して個々の権利者に還元されるのが基本ですが、すべての権利者に100%完全に補償金を分配できるものではなく、把握できない権利者がいることが推測されます。 したがって、補償金の一部を、権利者に共通する有意義な事業に支出することによって、把握できない権利者を含め、すべての権利者の利益に配慮していこうという趣旨から、特別な目的への支出が考えられているわけです。権利者に共通する有意義な目的のための事業という意味で、これを共通目的事業と呼んでいます。 その支出の割合は、著作権法では受領した補償金の2割以内となっていますが、著作権法施行令において2割と定められました。そのお金は共通目的基金といわれるものです。 共通目的基金の使途は、次の4項目です。 (一)著作権制度の知識普及および調査研究、またはこれらの事業に対する助成 (二)著作物の創作の振興および普及に資する事業、またはこれらの事業に対する助成 (三)著作権および著作隣接権の保護に関する国際協力、またはこれらの事業に対する助成 (四)デジタル録音録画用機器およびデジタル録音録画用記録媒体の開発に伴う著作権、著作隣接権を保護するための技術的制限に関する調査研究、またはこれらの事業に対する助成 共通目的事業とは、これら一つ一つの具体的な事業の総称です。 具体的な事業の内容や実施の方法については、この制度の趣旨や特質などを踏まえて、年度ごとに指定管理団体が決めていくことになりますが、sarah(サーラ)及びSARVH︵サーブ︶では、この制度をユーザーや広く一般の人々に理解していただくことが大切であると考えておりますので、(1)の著作権に関する知識の普及・啓発のための事業を中心として実施しています。 このような共通目的事業への支出は、国際的にも補償金制度を導入しているほとんどの国々において実施されています。 Q8デジタル方式の録音・録画機器には、録音・録画を制限する装置が組み込まれていますが、補償金を支払うことにより、それはなくなるのですか。 A8補償金制度において補償金の支払いが必要となるデジタル製品のうち、録音用製品についてはSCMS方式︵シリアル・コピー・マネージメント・システム――2世代以上にわたるデジタル複製を制限し、CDなどからのデジタル複製を1世代に限る国際的な技術的仕様︶が、また、録画用製品にはCGMS方式︵コピー・ジェネレーション・マネージメント・システム――コピー禁止、1世代コピー可又はコピーフリーのいずれかを権利者が選択することができる技術的仕様︶による装置が装着されています。 このようにデジタル録音・録画を制限する技術的な装置が採用されている理由は、アナログ方式による録音・録画については、複製を重ねるたびに徐々に質が劣化してきますが、デジタル方式による場合は、無制限に何世代にわたってもオリジナルの著作物と同様の完全な複製物を作ることができます。そこで、複製が複製を招くという状況、いわゆる複製物の拡散による権利者の不利益を技術的に調整しようというのがその理由です。 近年におけるデジタル技術の著しい発達から、権利者保護のために一定の措置が必要な状況になってきました。このため、BSと地上デジタル放送では2004年4月5日から﹁1回だけ録画可能﹂︵コピーワンス︶とするコピー制御信号が加えられました。しかしながらユーザーには不便との問題が提起され、﹁コピーワンス﹂は、﹁ダビング10﹂︵ダビング・テン︶に変更になり、2008年7月4日から実施されました。﹁ダビング10﹂とは、対応する録画機器のハードディスクに録画したものを、DVDまたはブルーレイディスクなどの記録媒体に10回までダビングが可能なシステムで、10回目のダビングが終了するとハードディスクにある番組は消去されます。このシステムは﹁ダビング10対応録画機器﹂に限られています。︵ダビング10は社団法人デジタル放送推進協会︵Dpa︶ホームページ参照。︶ 今後ともSCMS及びCGMS方式の装置がそれぞれ、補償金の対象機器に装着されます。しかし、この装置が組み込まれたり、ダビング10が実施されたといっても、私的複製の範囲内で録音録画が自由にできることに変わりはありませんので、補償金の支払いは必要です。 家庭内での私的録音・録画は自由にできるという問題は、このような科学技術の発達による複製手段の開発によるユーザーの便利さと、それによって被る権利者の不利益の救済という問題を解決してはじめて可能になるということであり、その意味で補償金制度はユーザーと権利者双方の立場を調整し、問題を解決するシステムであると言えましょう。 補償金制度の維持、発展を図っていくためには、今後さらにテクノロジーの開発に伴う技術的制限について、調査、研究を重ね、芸術文化と科学技術のハーモナイゼーションを図り、時代の要請に応じた対応を講じていくことが大切です。 なお、sarah︵サーラ︶及びSARVH︵サーブ︶は、その一環として、デジタル録音機器や記録媒体の開発に伴う技術的制限についての調査研究のための事業を前述の共通目的事業の一つに含めています。 Q9私的録音・録画に当たって、権利者に対する補償措置を講じるのは日本だけですか。 A9私的録音・録画問題は、科学技術の発達と文化振興の基盤となる著作権の保護との間の均衡を図る課題として、世界各国で検討が行われてきました。 このうち、録音・録画機器や記録媒体の販売に際して、あらかじめ権利者に補償金を支払ってもらう補償金制度︵いわゆる報酬請求権︶を権利者に認め、制度的に解決を図っている国は、1965年に世界で初めてこの制度を導入したドイツをはじめ、日本を含めて28カ国になっています。︵2011年3月現在︶ このように、私的録音・録画問題について、著作権制度の中で権利者を保護することが今日の世界の潮流となっており、補償金制度の立法化が図られています。 私的録音または私的録画補償金制度を導入している国は、次のとおりです。 アイスランド、アメリカ、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、カナダ、ギリシャ、クロアチア、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、トルコ、日本、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ラトビア、リトアニア ︵アイウエオ順︶ *アメリカ、カナダは録音補償金制度のみ。 Q10外国の音楽や映画などを私的に録音・録画しても補償金を支払う必要があるのですか。 A10音楽や映画などの著作物は国境を越えて利用されるものですから、世界の国々では、国際条約を結んでお互いに著作物を保護しあっています。 このように著作権を国際的に保護しあうための条約としては、﹁ベルヌ条約﹂と﹁万国著作権条約﹂があり、日本はこの両条約を締結していますので、世界の大半の国と保護関係があります。 これらの条約の原則には、内国民待遇と呼ばれているものがあります。これは、条約を締結している国が、外国人の著作者を保護する場合、自分の国の著作者に与えている保護と同様の保護を与えなければならないという原則です。 また、実演家やレコード製作者などの権利を保護するための国際条約としては﹁実演家等保護条約﹂があります。 この条約においても内国民待遇の原則が盛り込まれており、実演家等保護条約の締結国における実演やレコードなどに対し、自国民に与えている保護と同様の保護を与えることが定められています。 今回の補償金制度についても、この内国民待遇が前提となりますので、我が国で保護を受ける著作物、実演、レコードに係る外国の権利者は、この補償金を受ける権利を有することとなります。したがって、補償金は、これらの外国の権利者に対する分も含んでいます。 なお、1996年1月1日に施行されたWTO︵世界貿易機関︶設立協定を実施するため、著作権法が改正され、保護の対象となる外国の権利者は、さらに拡大されています。 Q11対象となる機器又は記録媒体を用いて私的録音・録画を行わない場合は、補償金を返還してもらえるのですか。 A11補償金の支払方法としては、特定機器や特定記録媒体を用いて、私的録音又は録画を行う人が、その行為ごとに支払うことが原則です。しかし、この方法による補償金の支払いは、現実的にはできないことなどから、特例として、特定機器や特定記録媒体の購入に際して、補償金を支払う方法が採用されています︵Q1、Q4参照︶。 これは、特定機器や特定記録媒体の購入行為は私的録音・録画行為と密接に関連があり、私的録音・録画行為が行われる可能性がきわめて高いという考え方に基づくものであり、補償金対象製品の購入時の支払いによって私的録音・録画の補償金を包括的に処理しようとするものです。 しかし、特定機器や特定記録媒体の購入時に補償金を支払った人が、私的録音・録画を全く行わないとすれば、補償金支払いの前提が存在しないこととなりますので、支払った補償金の返還を請求することができます。返還を請求できる場合は、(1)著作権法でもともと権利が制限されていて、著作権者の権利が及ばない範囲で録音・録画を行う場合︵例えば学校教育用など︶、(2)著作権者等の許諾を得て通常の使用料を支払って録音・録画をする場合、また、(3)権利の対象となっているもの以外のものしか録音・録画していないという場合などが該当します。 ただし、それは、たまたま何回かそういう録音・録画をしたということではなく、購入した特定機器又は特定記録媒体を、音楽・映像作品の録音・録画のために全く使用したことが無い、という場合に限られます。 返還を請求する場合、その請求先は、指定管理団体になりますが、著作権法の規定により、返還を請求する人が、録音・録画を全く行わないという証明と、製品購入の領収書等を提出することが必要です。その証明がなされた場合には、指定管理団体は、請求者に対して補償金の返還を行うこととなります。 なお、sarah(サーラ) 及びSARVH︵サーブ︶においては、このような返還についての業務処理を適正に行うよう返還委員会を設置しておりますが、具体的に返還を行うかどうかの判断については、購入の主体や利用の状況等の諸事項を踏まえて、返還基準により同委員会が判断することとしています。 Q12sarah︵サーラ︶及びSARVH︵サーブ︶は、どのような業務を行っているのですか。
Q1家庭内で行う音楽や放送の録音・録画に関して、補償金を支払う制度の概要を教えてください。 A1著作権法は昭和45年に全面的に改正されましたが、改正された著作権法第30条では、私的使用のために音楽や映画などの著作物を録音・録画︵複製︶することは、それらの作品の権利者に許諾を得ることなく自由かつ無償で行うことができるとされていました。 しかし、録音・録画機器や記録媒体︵ディスク・テープ︶の目覚ましい発達や普及に伴って、著作物などを家庭内録音・録画して楽しむことが広く定着し、これが著作物などの有力な利用形態のひとつとなってきました。さらに、近年ではデジタル方式による録音・録画機器の開発が進み、従来のアナログ方式と比べて高い品質の複製が可能となり、その結果、オリジナルと同様のコピー作品が社会全体として大量に作られるようになりました。 このような状況において、いつでも家庭内録音・録画による複製が無償で行えることは、著作権者、実演家及びレコード製作者が得られるはずの利益が損なわれているのではないか、との問題が提起されました。これを受け、文化庁著作権審議会︵当時︶において検討を行った結果、私的録音・録画による権利者の経済的な不利益を補償するために、私的録音・録画は、従来どおり自由としながらも、権利者に対する補償金の支払いが必要であるとの結論が出され、これを踏まえて、平成4年12月、著作権法の一部改正により、私的録音録画補償金制度が定められ、このうち私的録音補償金制度は平成5年6月1日から、私的録画補償金制度は平成11年7月1日から実施されています。 補償金制度の概要を整理してみますと、次のとおりです。 (一)家庭内等で私的に使用することを目的として、政令で定められるデジタル方式の機器︵特定機器︶及び記録媒体︵特定記録媒体︶︵Q3参照︶によって録音又は録画を行う場合は、権利者︵著作権者、実演家及びレコード製作者︶に私的録音録画補償金を支払わなければならないこと。 (二)この補償金を請求し、受領する権利があるのは、権利者によって構成され、文化庁長官が指定する指定管理団体であること。︵Q12参照︶ (三)指定管理団体が補償金の支払いを受ける方法として、︵イ︶メーカー・輸入業者は、あらかじめ補償金を価格の中に含めておく、︵ロ︶購入者は購入時に価格に含まれている補償金を支払う、︵ハ︶指定管理団体は、この補償金をメーカー・輸入業者から受け取る、という特例を設けたこと。︵Q4参照︶ (四)補償金の額は指定管理団体が申請し、文化庁長官が許可すること。︵Q5参照︶ (五)指定管理団体が受け取った補償金は権利者の所属する団体を通じて、個々の権利者に分配される︵Q6参照︶ほか、政令で定める一定割合︵2割︶の額については、著作権制度普及事業等、権利者に共通する有意義な事業に用いられること︵共通目的事業︶。︵Q7参照︶ (六)補償金を支払った人は、これらの機器又は記録媒体を著作物︵音楽・映像︶の私的録音・録画に使用しない場合には、その旨を指定管理団体に証明することによって、補償金の返還を受けることができること。︵Q11参照︶ Q2私的に録音・録画した複製物を人に売るわけではないのですが、それでも権利者の利益を害することになるのですか。 A2 著作権法は昭和45年に全面的に改正されたものです。その当時は、オープンリールのテープレコーダーがほとんどであり、家庭内での私的録音・録画はきわめてわずかな利用でありました。権利者には著作権法で複製を許諾できる複製権が認められており、私的録音・録画についても本来はこの権利が及ぶものですが、当時は家庭内での私的録音・録画の利用状況が少なく、﹁家庭内で楽しむなど限られた範囲﹂での私的録音・録画であれば、ただちに権利者の利益に重大な影響を及ぼすものではないという判断に立って、同法の第30条で私的目的に使用するための録音・録画は、著作権の権利者の許諾を得ることなく自由かつ無償で行うことができることと定められました。 その後、科学技術の進歩による録音・録画機器の高性能化とその普及はめざましく、その結果、家庭内における録音・録画が容易に、かつ、頻繁に行われるようになり、膨大な量の著作物がコピーされるという状況が生じ、さらに、デジタル方式による高機能、高性能の機器によって、家庭内においても、市販のCDやDVDソフトと同じような、高品質の録音物・録画物が作成されるという状況も生まれてきました。 このように、個々に見れば家庭内におけるごく小さな範囲の私的な録音や録画であっても、これを社会全体として見た場合は、大量の録音物や録画物が作成されることとなり、このような膨大な著作物の複製をトータル的に見れば、権利者の利益が損なわれていることとなります。 このようなことから、家庭内における私的な録音や録画による権利者の不利益を救済する必要性が生じ、平成4年12月の法改正によって、それまでの私的録音・録画は自由かつ無償という秩序を見直すこととし、私的録音・録画は、従来どおり私的複製の範囲内で、権利者の許諾を得ることなく自由に行えることとしながらも、権利者の経済的な利益を保護するために、一定の補償措置が講じられることとなったものです。これが私的録音録画補償金制度です。 著作権法では、私的複製の範囲を﹁個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内﹂と定めています。したがって私的な録音・録画だからといって大量に複製したり、他人に売ったり、インターネットで送信したりすることは、私的目的の使用の範囲を超えることとなり、著作権侵害になります。 Q3補償金の支払いの対象は、どのような商品ですか。 A3補償金の支払い対象となるのは、デジタル方式による録音・録画機器や記録媒体で、家庭内で一般に使用されるものに限られます。 デジタル方式とアナログ方式による録音・録画については、著作物の利用という観点からは、理論上区別する理由はありません。しかしながら、デジタル方式は性能面において格段に優れ、オリジナルと同様の原音・原画の高品質な複製が可能であり、かつ、劣化しないという特徴を有していますので、権利者の経済的不利益が一層大きくなってくるものと考えられます。またアナログ方式の機器・媒体は、すでに家庭内に広く普及しており、社会全般の混乱を避けるという意味からも、補償金の支払いの対象からはずして従来どおり無償とし、補償金の対象はデジタル方式による機器や記録媒体に限定されています。 補償金の支払いの対象となるデジタル方式の機器や記録媒体については、政令で指定することとされており、現在までに政令指定を受けている録音・録画用の製品︵特定機器及び特定記録媒体︶は、次のとおりです。︵平成22年3月末現在︶ ○ デジタル録音用機器 DAT︵デジタル・オーディオ・テープ・レコーダー︶ DCC︵デジタル・コンパクト・カセット・レコーダー︶ MD︵ミニ・ディスク・レコーダー︶ CD-R/RW︵コンパクト・ディスク・レコーダー︶ ○ デジタル録音用記録媒体 DAT︵磁気テープ︶ DCC︵磁気テープ︶ MD︵光ディスク︶ CD-R︵光ディスク︶ CD-RW︵光ディスク︶ (注)CD-R/RWについては、﹁録音用﹂または﹁For Audio﹂と記載されているものが補償金の対象となる記録媒体です。 ○ デジタル録画用機器 Blu・Ray︵ブルー・レイ︶ DVD-RW︵デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル︶ DVD+RW︵デジタル・バーサタイル・ディスク・リライタブル︶ DVD-RAM︵デジタル・バーサタイル・ディスク・ランダム・アクセス・メモリー︶ DVCR︵デジタル・ビデオ・カセット・レコーダー︶ D-VHS︵データ・ビデオ・ホーム・システム︶ ○ デジタル録画用記録媒体Blu・Ray︵光ディスク︶ DVD-R︵光ディスク︶ DVD-RW︵光ディスク︶ DVD+R︵光ディスク︶ DVD+RW︵光ディスク︶ DVD-RAM︵光ディスク︶ DVカセット︵磁気テープ︶ D-VHS︵磁気テープ︶ (注)光ディスクについては、﹁録画用﹂または﹁For Video﹂と記載されているものが補償金の対象となる記録媒体です。︵デジタル・ビデオ・カメラと撮影用記録媒体は指定から除外︶ なお、著作権法第30条第2項において、デジタル方式による機器や記録媒体のうち放送の業務用など家庭内では使用されないような機器や録音機能付きの電話機など、本来の機能に附属する機能として録音又は録画機能がついているものについては、補償金の支払いの対象から除かれています。 Q4補償金は誰にどのような方法で支払うのですか。 A4補償金は、特定機器や特定記録媒体を使って、私的な目的のために録音又は録画を行う人が、その行為ごとに権利者に支払うのが原則です。 しかし、録音又は録画を行う人が、その行為ごとに権利者に支払いをするのは実際には難しく、また、私的な録音や録画は家庭内などにおいて行われるため、個々の権利者にとってみても、その実態を把握することは事実上できないことなどから、この原則に基づく補償金の支払いの実効を期すことは困難な面があります。 そこで、ユーザーや権利者双方の便宜を考慮し、この制度を実効あるものとしていくために、著作権法では補償金の支払い方法の特例を定めています。 支払い方法の特例とは、家庭内録音・録画の一括の支払いとして、特定機器や特定記録媒体のメーカーなどの協力を得て、その価格に補償金を上乗せし、ユーザーがこれらの特定機器や特定記録媒体を購入するときに補償金も合わせて支払うという方法であります。 つまり特定機器・特定記録媒体を購入した場合に価格に上乗せされた補償金が支払われるので、録音・録画ごとの支払いは不要であるという仕組みです。 また、権利者のためにその補償金を請求、受領することができるのは、文化庁長官が指定する団体︵指定管理団体︶のみとし、指定管理団体が補償金に関するすべての権利を集中的に管理しています。 現在、文化庁長官が指定する管理団体としては、私的録音に関して補償金を受ける権利を行使するための団体として、社団法人私的録音補償金管理協会︵sarah︵サーラ︶︶があり、私的録音補償金の請求、受領及び分配などの業務を行い、また、私的録画に関する管理団体としては、社団法人私的録画補償金管理協会︵SARVH(サーブ)︶が文化庁長官から指定され、同様の業務を行っています。(Q12参照︶ Q5補償金の額はどのような手続きで決定されるのですか。 A5指定管理団体は、権利者の補償金を受ける権利を集中的に管理し、また補償金の支払いの対象となる特定機器や特定記録媒体の購入者も多数ですから、その補償金の額は適正なものでなければなりません。そのため、補償金の額については、著作権法によって、文化庁長官の認可を受けることが義務づけられています。 また、その補償金の額は、家庭内における私的な使用のためのものですので、文化庁長官が認可する場合は、録音・録画の通常の使用料の額やその他の事情を考えて補償金の額が適正であると認められるときでなければ、その額の認可をしてはならないとされています。 補償金の額は、次のような手順を踏んで決まります。 (一)指定管理団体が補償金の額の原案を定め、対象となる特定機器・特定記録媒体のメーカーなどの団体の意見を聴いた上で、文化庁長官に認可申請します。 (二)文化庁長官は、学識経験者などで構成される﹁文化審議会著作権分科会﹂に諮問します。 (三)文化庁長官は、この分科会での答申を得て、認可します。 このように、補償金の額は、慎重に審議、検討して決定されるものですので、社会的にみて、公正で妥当なものといえます。 sarah︵サーラ︶及びSARVH︵サーブ︶は、特定機器・特定記録媒体の購入時に支払われる場合の補償金の額について、上記の手順を踏んで文化庁長官から認可を受けていますが、その額は、次のとおりです︵いずれも消費税別︶。 ●私的録音補償金の額 ●特定機器=カタログに表示された標準価格の一定割合︵65%相当︶の2%︵上限1,000円︶ ●特定記録媒体=カタログに表示された標準価格の一定割合︵50%相当︶の3% ●私的録画補償金の額 ●特定機器=カタログに表示された標準価格の一定割合︵65%相当︶の1%︵上限1,000円︶ ●特定記録媒体=カタログに表示された標準価格の一定割合︵50%相当︶の1% Q6補償金はどのように分配されるのですか。 A6補償金は家庭内録音・録画によって権利者が被った不利益を補償するためのものですから、権利者に分配されるのが基本です。 権利者への分配は、指定管理団体が定め、文化庁長官に届け出た﹁分配規程﹂によって行われます。 その際、補償金の個々の権利者への分配に当たっては、私的使用の実態を完全に把握することが困難であるため、放送やレンタルレコードのサンプリング調査、CDなどの生産実績調査、また、ユーザーへのアンケート調査など専門の統計学者の指導による手法、また映像作品の権利所有の実態とその割合の調査などによって、権利者の製作する分野ごとにできるだけ精度の高い分配資料を作成し、これらの資料に基づいて、権利者の各団体に適正に分配されます。個々の権利者にはそれぞれ所属する団体を通じて分配されます。 また、団体等に所属しない権利者への分配については、各団体に分配された中から請求に基づいて支払う措置がとられています。 なお、補償金はすべて権利者に分配されるのではなく、そのうちの一部︵2割︶は権利者に共通する特別の目的の事業のために使われます︵Q7参照︶。 Q7補償金は、権利者に分配されるほか、特別の目的の事業に支出されると聞きましたが、具体的に教えてください。 A7指定管理団体は、権利者への分配の例外として、補償金の一定の割合の額を権利者に共通する有意義な事業のために支出することが義務づけられています。 指定管理団体は、どの著作物や実演、レコードなどが、どの程度録音・録画されたのかということに関係なく、包括的に補償金を受領しています。そして、その補償金の分配は、所属に団体を通して個々の権利者に還元されるのが基本ですが、すべての権利者に100%完全に補償金を分配できるものではなく、把握できない権利者がいることが推測されます。 したがって、補償金の一部を、権利者に共通する有意義な事業に支出することによって、把握できない権利者を含め、すべての権利者の利益に配慮していこうという趣旨から、特別な目的への支出が考えられているわけです。権利者に共通する有意義な目的のための事業という意味で、これを共通目的事業と呼んでいます。 その支出の割合は、著作権法では受領した補償金の2割以内となっていますが、著作権法施行令において2割と定められました。そのお金は共通目的基金といわれるものです。 共通目的基金の使途は、次の4項目です。 (一)著作権制度の知識普及および調査研究、またはこれらの事業に対する助成 (二)著作物の創作の振興および普及に資する事業、またはこれらの事業に対する助成 (三)著作権および著作隣接権の保護に関する国際協力、またはこれらの事業に対する助成 (四)デジタル録音録画用機器およびデジタル録音録画用記録媒体の開発に伴う著作権、著作隣接権を保護するための技術的制限に関する調査研究、またはこれらの事業に対する助成 共通目的事業とは、これら一つ一つの具体的な事業の総称です。 具体的な事業の内容や実施の方法については、この制度の趣旨や特質などを踏まえて、年度ごとに指定管理団体が決めていくことになりますが、sarah(サーラ)及びSARVH︵サーブ︶では、この制度をユーザーや広く一般の人々に理解していただくことが大切であると考えておりますので、(1)の著作権に関する知識の普及・啓発のための事業を中心として実施しています。 このような共通目的事業への支出は、国際的にも補償金制度を導入しているほとんどの国々において実施されています。 Q8デジタル方式の録音・録画機器には、録音・録画を制限する装置が組み込まれていますが、補償金を支払うことにより、それはなくなるのですか。 A8補償金制度において補償金の支払いが必要となるデジタル製品のうち、録音用製品についてはSCMS方式︵シリアル・コピー・マネージメント・システム――2世代以上にわたるデジタル複製を制限し、CDなどからのデジタル複製を1世代に限る国際的な技術的仕様︶が、また、録画用製品にはCGMS方式︵コピー・ジェネレーション・マネージメント・システム――コピー禁止、1世代コピー可又はコピーフリーのいずれかを権利者が選択することができる技術的仕様︶による装置が装着されています。 このようにデジタル録音・録画を制限する技術的な装置が採用されている理由は、アナログ方式による録音・録画については、複製を重ねるたびに徐々に質が劣化してきますが、デジタル方式による場合は、無制限に何世代にわたってもオリジナルの著作物と同様の完全な複製物を作ることができます。そこで、複製が複製を招くという状況、いわゆる複製物の拡散による権利者の不利益を技術的に調整しようというのがその理由です。 近年におけるデジタル技術の著しい発達から、権利者保護のために一定の措置が必要な状況になってきました。このため、BSと地上デジタル放送では2004年4月5日から﹁1回だけ録画可能﹂︵コピーワンス︶とするコピー制御信号が加えられました。しかしながらユーザーには不便との問題が提起され、﹁コピーワンス﹂は、﹁ダビング10﹂︵ダビング・テン︶に変更になり、2008年7月4日から実施されました。﹁ダビング10﹂とは、対応する録画機器のハードディスクに録画したものを、DVDまたはブルーレイディスクなどの記録媒体に10回までダビングが可能なシステムで、10回目のダビングが終了するとハードディスクにある番組は消去されます。このシステムは﹁ダビング10対応録画機器﹂に限られています。︵ダビング10は社団法人デジタル放送推進協会︵Dpa︶ホームページ参照。︶ 今後ともSCMS及びCGMS方式の装置がそれぞれ、補償金の対象機器に装着されます。しかし、この装置が組み込まれたり、ダビング10が実施されたといっても、私的複製の範囲内で録音録画が自由にできることに変わりはありませんので、補償金の支払いは必要です。 家庭内での私的録音・録画は自由にできるという問題は、このような科学技術の発達による複製手段の開発によるユーザーの便利さと、それによって被る権利者の不利益の救済という問題を解決してはじめて可能になるということであり、その意味で補償金制度はユーザーと権利者双方の立場を調整し、問題を解決するシステムであると言えましょう。 補償金制度の維持、発展を図っていくためには、今後さらにテクノロジーの開発に伴う技術的制限について、調査、研究を重ね、芸術文化と科学技術のハーモナイゼーションを図り、時代の要請に応じた対応を講じていくことが大切です。 なお、sarah︵サーラ︶及びSARVH︵サーブ︶は、その一環として、デジタル録音機器や記録媒体の開発に伴う技術的制限についての調査研究のための事業を前述の共通目的事業の一つに含めています。 Q9私的録音・録画に当たって、権利者に対する補償措置を講じるのは日本だけですか。 A9私的録音・録画問題は、科学技術の発達と文化振興の基盤となる著作権の保護との間の均衡を図る課題として、世界各国で検討が行われてきました。 このうち、録音・録画機器や記録媒体の販売に際して、あらかじめ権利者に補償金を支払ってもらう補償金制度︵いわゆる報酬請求権︶を権利者に認め、制度的に解決を図っている国は、1965年に世界で初めてこの制度を導入したドイツをはじめ、日本を含めて28カ国になっています。︵2011年3月現在︶ このように、私的録音・録画問題について、著作権制度の中で権利者を保護することが今日の世界の潮流となっており、補償金制度の立法化が図られています。 私的録音または私的録画補償金制度を導入している国は、次のとおりです。 アイスランド、アメリカ、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、カナダ、ギリシャ、クロアチア、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、トルコ、日本、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ラトビア、リトアニア ︵アイウエオ順︶ *アメリカ、カナダは録音補償金制度のみ。 Q10外国の音楽や映画などを私的に録音・録画しても補償金を支払う必要があるのですか。 A10音楽や映画などの著作物は国境を越えて利用されるものですから、世界の国々では、国際条約を結んでお互いに著作物を保護しあっています。 このように著作権を国際的に保護しあうための条約としては、﹁ベルヌ条約﹂と﹁万国著作権条約﹂があり、日本はこの両条約を締結していますので、世界の大半の国と保護関係があります。 これらの条約の原則には、内国民待遇と呼ばれているものがあります。これは、条約を締結している国が、外国人の著作者を保護する場合、自分の国の著作者に与えている保護と同様の保護を与えなければならないという原則です。 また、実演家やレコード製作者などの権利を保護するための国際条約としては﹁実演家等保護条約﹂があります。 この条約においても内国民待遇の原則が盛り込まれており、実演家等保護条約の締結国における実演やレコードなどに対し、自国民に与えている保護と同様の保護を与えることが定められています。 今回の補償金制度についても、この内国民待遇が前提となりますので、我が国で保護を受ける著作物、実演、レコードに係る外国の権利者は、この補償金を受ける権利を有することとなります。したがって、補償金は、これらの外国の権利者に対する分も含んでいます。 なお、1996年1月1日に施行されたWTO︵世界貿易機関︶設立協定を実施するため、著作権法が改正され、保護の対象となる外国の権利者は、さらに拡大されています。 Q11対象となる機器又は記録媒体を用いて私的録音・録画を行わない場合は、補償金を返還してもらえるのですか。 A11補償金の支払方法としては、特定機器や特定記録媒体を用いて、私的録音又は録画を行う人が、その行為ごとに支払うことが原則です。しかし、この方法による補償金の支払いは、現実的にはできないことなどから、特例として、特定機器や特定記録媒体の購入に際して、補償金を支払う方法が採用されています︵Q1、Q4参照︶。 これは、特定機器や特定記録媒体の購入行為は私的録音・録画行為と密接に関連があり、私的録音・録画行為が行われる可能性がきわめて高いという考え方に基づくものであり、補償金対象製品の購入時の支払いによって私的録音・録画の補償金を包括的に処理しようとするものです。 しかし、特定機器や特定記録媒体の購入時に補償金を支払った人が、私的録音・録画を全く行わないとすれば、補償金支払いの前提が存在しないこととなりますので、支払った補償金の返還を請求することができます。返還を請求できる場合は、(1)著作権法でもともと権利が制限されていて、著作権者の権利が及ばない範囲で録音・録画を行う場合︵例えば学校教育用など︶、(2)著作権者等の許諾を得て通常の使用料を支払って録音・録画をする場合、また、(3)権利の対象となっているもの以外のものしか録音・録画していないという場合などが該当します。 ただし、それは、たまたま何回かそういう録音・録画をしたということではなく、購入した特定機器又は特定記録媒体を、音楽・映像作品の録音・録画のために全く使用したことが無い、という場合に限られます。 返還を請求する場合、その請求先は、指定管理団体になりますが、著作権法の規定により、返還を請求する人が、録音・録画を全く行わないという証明と、製品購入の領収書等を提出することが必要です。その証明がなされた場合には、指定管理団体は、請求者に対して補償金の返還を行うこととなります。 なお、sarah(サーラ) 及びSARVH︵サーブ︶においては、このような返還についての業務処理を適正に行うよう返還委員会を設置しておりますが、具体的に返還を行うかどうかの判断については、購入の主体や利用の状況等の諸事項を踏まえて、返還基準により同委員会が判断することとしています。 Q12sarah︵サーラ︶及びSARVH︵サーブ︶は、どのような業務を行っているのですか。
A12私的録音録画補償金制度が導入されたことに伴い、補償金制度のうち、私的録音にかかわる業務を行う団体としてsarah︵サーラ︶が、また、私的録画にかかわる業務を行う団体としてSARVH(サーブ)が、文化庁長官から指定を受け、補償金管理業務を行っています。
sarah︵サーラ︶及びSARVH(サーブ)が指定管理団体として行う業務は、次のとおりです。
(一)ひとつは補償金を特定機器や特定記録媒体のメーカーなどの協力を得て、ユーザーから支払いを受け、支払われた補償金を関係権利者に適正に分配することです。
このためには、
●補償金の額を定めること︵文化庁長官への認可申請︶
●定められた補償金の額を広くユーザーに知ってもらうための広報を行うこと
●支払われた補償金を関係権利者に正しく分配するための方法を定めること︵文化庁長官への届出︶
●補償金を返還する場合の基準を定めること︵文化庁長官への届出︶
などが著作権法で義務づけられています。
(二)もうひとつは支払われた補償金の一部により、権利者に共通して有意義になる事業、その意味で権利者に利益となるような事業を実施することです。
その事業は、
●著作権制度に関する知識の普及や研究
●著作物の創作の振興やその普及
●著作権や著作隣接権の保護に関する国際協力
などです。
また、sarah︵サーラ︶及びSARVH︵サーブ︶の概要は次のとおりです。
一般社団法人 私的録音補償金管理協会︵sarah︶
住所 電話 FAX番号 ホームページ |
〒105-0021 東京都港区東新橋2-2-10 村松・共栄火災ビル5階 TEL 03-6453-0066(代) FAX 03-6453-0067 http://www.sarah.or.jp |
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設立年月日 | 平成5年3月3日 |
目的 | 著作権者、実演家及びレコード製作者のために、私的録音録画補償金のうち私的録音補償金を受ける権利を行使し、 権利者に分配するとともに、著作権及び著作隣接権の保護に関する事業を実施し、文化の発展に寄与すること |
構成団体 | 一般社団法人日本音楽著作権協会 公益社団法人日本芸能実演家団体協議会 一般社団法人日本レコード協会 |
一般社団法人 私的録画補償金管理協会(SARVH)
※2015年(平成27年)4月1日をもって解散しました。