放送中止騒動 竜騎士07さんインタビュー
京都府京田辺市で、京都府警の巡査部長︵45︶が、専修学校に通う次女︵16︶に殺害された︵9月18日︶。父親の交友関係について﹁許せないことがあった﹂ことが動機、とされている。
この事件で、次女が使った凶器が﹁斧﹂だったことで、﹁鉈﹂を使って人を殺すシーンがあり、ローカル放送局で放映しているアニメ﹃ひぐらしのなく頃に﹄がやり玉にあがり、放送休止が相次いだ。
事件直後に一時休止し、放送を継続するかどうか検討を続けてきた東海テレビも、10月24日、﹁番組内容の確認・修正の手続き、放送期限などの調整がつかない﹂ことを理由に、﹁放送中止﹂を正式にアナウンスした。
この﹁騒動﹂について、アニメ﹃ひぐらし﹄を制作した同人サークル﹁07th Expansion﹂の代表、竜騎士07さんが、記者のインタビューに応じてくれた。3回にわたって紹介する。
﹃ひぐらし﹄が殺人を産み出したとは思えません
────京都で次女が父親を殺害した事件が起こし、﹃ひぐらしのなく頃に﹄と関連づけられた報道が相次ぎました。その報道に接したときの感想を教えてください。
とてもびっくりしました。最初の時点では、事件そのものを知らなかったのです。よくよく聞いてみると、どうも凶器が取り沙汰されているということでした。
しかも、報道機関に私たちの作品が引き合いに出されるというのは意外でした。﹃ひぐらし﹄は、殺人を礼賛していることは決してなく、しっかりとした社会的なメッセージがある作品。あたかも私の作品が影響して事件が起きたという報道は残念でした。
────事件直後、または、事件と関連づけられた報道があった後、これまでアニメ﹃ひぐらしのなく頃に解﹄を放映していた放送局が放映休止しました。そのことについてどう思いましたか?
とても残念なことです。﹃ひぐらし﹄と事件は関係ないし、ましてや﹃ひぐらし﹄が殺人を産み出したとは思えません。
﹃ひぐらし﹄は殺人を否定している物語です。何か問題が起きた時、暴力に訴えたり、誰も相談せずに独りよがりに解決しようと暴走したら、必ず悪いことが起きるように描いています。悩みや問題が生じた時、それを社会的ルールに則って解決するにはどうすればいいか、の模範解答を描いた作品なんです。
そして、﹁困ったら大人に相談する﹂﹁しかるべき機関に相談する﹂という模範的な解決の仕方を描いている最中に事件が起き、騒ぎがあったんです。
だから、作品のメッセージが誤解されているとは夢にも思わなかった。報道によって逆の捉え方をされたのはショックでしたね。
放送局の独自の判断か、または、視聴者の方々の誤解があり、そうした︵誤解の︶声を真摯に受け止めたのかどうかはわかりませんが、放送休止は残念ですね。幸いなことに、作品のメッセージを真に理解してくれて、放送を続けてくれた局があってうれしかった。もちろん、休止した放送局も相当に苦慮されて判断があっただろうと思います。
私たちも作品は誤解されたくない
────公式サイトの﹁制作日記﹂で、﹁たくさんの応援メールを本当にありがとう﹂と題したタイトルで、ファンの方々のメールに対しての返事を書いてますね。
メールはたくさんきました。実はそのころ、次作﹃うみねこのなく頃に﹄に取りかかっていたので、ニュースには完全に疎かったんです。事件の一報を知ったのは、ファンの方のメールでした。
事件後に届いたメールは、暖かい応援の言葉ばかりでした。ネガティブな内容は1通もなかった。日本以外にも、アメリカや韓国からも来ました。なかにはクウェートからも届いたものもありました。まさかそんな遠い国の方まで応援してくださっていたとは。とても驚きました。
あまりにも多くのメールが届いたので、個別に対応できる許容量を超えてしまいました。そのため、全員への返事という意味で、﹁日記﹂で書かせていただきました。
悲しい事件ではありましたが、作品のメッセージがファンの方々にちゃんと届いていることが分かったことは、とてもうれしかったですね。
────事件後、オープニングシーンで、凶器の鉈が映るシーンをカットするなど一部配慮することで、アニメの続きを放送する局もありました。表現したいことと、発表のズレについて、何か葛藤がありましたか?
私はあくまで原作者です。絵コンテなどを監修しますが、︵事件があったことによって、どのような配慮をするかなどの︶政治的な判断をする立場にはありません。
私たちも、作品は誤解されたくない。作品に込めたメッセージは社会的なものだと自負している。たしかにエンターテイメントの見地から、サスペンス的な展開になっているし、ホラーとして作品を描いている。
そうしたシーンがPR的に最も露呈しているため、内容をご存知ない方々が誤解されるのも無理はない。そのため、オープニングの差し替えは、放送局さんの努力の結果出てきた妥協点だと思います。
︵つづく︶