堺屋メモ4
情報発信機能の東京集中は、放送や出版に関係する人を東京に集中させただけではない。
あらゆる分野の高級で最新のものが東京に集中しているような印象を全国に与え、
国民の東京憧れムードを煽る一方、地方には文化想像力がないような錯覚を植え付け
地方嫌悪の印象を助長した。そしてそれが原因となって、
今や地方にはファッションを生む雰囲気も、テレビ番組を造る能力も、
雑誌を出版する人材も全くないとの﹁神話﹂が作り上げられている。
だがこれは﹁神話﹂であって事実ではない。情報発信機能の欠如という不利を克服して
地方から新しい業種業態が起り、新しいファッションが生まれ、
有能なファッションデザイナーや建築家が数多く登場している。
ある総合研究所が調べたところでは、戦後の新業種新業態の発生や
流行したファッションの発生源はほとんどが地方であり、東京は人口比率よりも少ない。
ただそれが﹁流行﹂と認められるためには、
東京のマスコミが取り上げられた場合に限られる。
そしてそのためには東京の中心部、千代田、中央、港、新宿、渋谷の五区で
話題になる事が条件になっている。
同じ東京でも、台東区や墨田区ではマスコミが取り上げないのだ。
情報発信機能が東京に、それもごく狭い五区に集中したために
東京は地方の情報が入らない﹁孤独な巨人﹂になってしまったのだ。
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