そんな目からウロコの情報を得たのは、先日おこなわれた「第一回親子で昆布味覚授業」でのこと。
ライフスタイルの変化にともない、日本の食文化をよく知らない日本人も増えている今日このごろ。 ﹁お米や味噌、醤油のことはわからないのに、チーズとかワインは一生懸命勉強するんですよね。日本のものって何? ということを日本人が一番知らない﹂ と皮肉まじりに嘆く野崎さん。生きるということは食べていくということ。いいだしで素材を食べ、健康であることがなにより大事だと強調していた。
授業で紹介された一番だしの取り方は次のとおり。水1リットル、だし昆布5グラムを鍋に入れ、水から中火にかける。軽く泡が出て80℃になったら、かつお節15グラムを加えて火を止め、1分おく。それを濾せば一番だしのできあがりだ。
そうやって取っただしは、ここちよい香りがする。昆布とかつお節の香りがほんのりして、けっして主張しすぎていない感じ。
ポットのお湯を使った、超簡単な一番だしの取り方もある。ポットのお湯500ccをボウルや鍋に入れ、そのなかに昆布とかつお節を上記の半量入れて1分置く。たった、これだけ。
﹁手抜きでもなんでもなく、これでちゃんとしただしが取れる﹂ このあと2番だしを取るなら、半分の250ccの水に残った昆布とかつお節を入れて、5分おけばいい。
さらに、2番だしを取ったあとの昆布やかつお節も有効活用できる。細かく刻んでポン酢につければ常備調味料になるというのだ。そのまま食べてもいいし、青菜とあえたり、チャーハンの調味料にしたり、いろいろな使い方ができるスグレモノだ。
ちなみに、昆布やかつお節はケチらずいい素材を使うのがおいしいだしを取るコツ。どんなに高級な利尻昆布や羅臼昆布でも、1回だしを取るのにかかるコストはせいぜい50円くらい。
授業では、昆布をベースに、かつお節、野菜︵白菜︶、肉と組み合わせた4種のだしを使った料理も試食。名店の味に子どもたちの顔にも自然と笑みがこぼれ、なかには苦手だった食材が今回初めて食べられたという子もチラホラ。参加した親からも、 ﹁今まではだしが主張していて、食材の本当のおいしさを消してしまっていたんだなあと実感しました﹂ というコメントがでたが、いいだしは素材の味をジャマしないのだ。
最後に野崎さんは笑顔でこう語ってくれた。 ﹁いい食は味覚を発達させる以上に、コミュニケーションなんです。
料理の味の決め手にもなりうる基本のだし。1分で天然だしが取れるなら、取らない手はなさそうだ。 ︵古屋江美子︶