女の子ってなんだろう。
志村貴子原作の﹁放浪息子﹂がアニメ化されました。 原作もそうですが、物語の起承転結は非常に分かりづらい上にキャラがいっぺんに出てきます。その上原作は小学生の話から始まっているのに、アニメに至っては全部ぶっとばして中学生編からですよ、未読者置いてけぼり状態? ところがtwitterなど見ていると評判が異常に高い。……おや、どういうことだ。 そして、ぼく︵原作既読︶はこのアニメを見ました。 なるほど。
心に傷を負った子供たちが、水彩タッチで動いてしゃべる。話自体は原作を読んでないとかなり難解で、一回見て全部は理解しづらいです。しかし多くの人が﹁よくわからんけどすさまじい感情の波が来たぞ﹂とこのアニメ見て驚いていたのです。 セリフ一つ一つがやたら胸に来るので、声優さんを調べてみました。二鳥くん役の畠山航輔は97年生まれ。高槻さん役の瀬戸麻沙美は93年生まれ。
マコちゃんは女装好きな二鳥くんの良き理解者でもあり、同時に自分も女装をしたいと願う少年です。気持ちは同じでも、外見は違う。二鳥くんはかわいい、ぼくはかわいくない。憧れのまなざしで二鳥くんの女装姿を見ているんですよ。 テレビを見ているぼくはすっかりマコちゃんになったね。 にとりんかわいいよ! 気持ち悪くなんてないよ! つらいよね、苦しいよね。 だけどぼくは……二鳥くんのようにかわいい女装すらできない。ただ二鳥くんのかわいさを見て、嫉妬したりモヤモヤしたりするだけ。なんて切ないんだろう。 自分はマコちゃんの視線を通じてこの作品を見て、気がついたら興奮しながらこの文章を書いておりました。そして、憧れのまなざしで﹁二鳥くんはかわいいんだ﹂と再確認し、憧れ、嫉妬し、好きになりました。 自分は年齢的にいいおっさんですが、﹁少女みたいになりたい﹂という思いはどこかにあります。人によっては大人になってから気づく場合もあるでしょう、ああ﹁女の子﹂という﹁なにか﹂になりたかったなと。女性もまた同じでしょう。﹁男の子﹂という﹁なにか﹂になりたかったなと。そんな答えのない願望に対して、この作品は鋭く杭を打ってきます。ねえ、キャラクター達をどこに向かわせようとしているの? ぼくらをどこに放浪させるの。 原作を読んでからアニメを見る方が当然分かりやすいですし、断片的な情報も﹁あれのことか!﹂と楽しめるでしょう。しかし読んでなくてもいい、最初は何が起きているか分からなくてもいいです。このアニメを通じて二鳥くんや高槻さんと視線があうだけで、たくさん伝わるもの、ありますから。 現在は一話は無料配信中です。 ああ、どうしてぼくは女の子になれないんだろう。 女の子ってなんだろう。︵たまごまご︶