「カレーライス」が日本の国民食から外れつつある現実
2008年02月11日 12:00
日本の国民食というとご飯やみそ汁、インスタントラーメンにカレーライス、牛丼などが頭に思い浮かぶ。その中でも好きな食べ物ランキングで常に上位に入っていたはずのカレーやみそ汁のみそが売れなくなっているという。その背景には「高齢化」と「核家族化」があるとのこと(【gooリサーチ:食生活に関するアンケート】)。
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●家でカレーライスを食べる回数が減った。その理由は……
参照ページでは﹁最近自宅でカレーライスを食べる回数はどのように変化したか﹂というアンケートに対する回答が掲載されている。それによると、
﹁最近自宅でカレーライスを食べる回数はどのように変化したか﹂ というように、﹁減った﹂が﹁増えた﹂を大幅に上回っている。その差17ポイント。少なくともこの17%の人の分、カレーライスの消費が減少したことになる。 原因としてはいくつか考えられるが、一つが﹁家庭の団らんが減ったこと﹂。親子が揃って食卓を囲んで食事を取る機会が減ったため、皆で食べる料理の代表ともいえるカレー(他に鍋料理なども該当するだろう)の消費量が減ったのだという。 それよりも大きな理由は、﹁カレーを食べる主力層﹃団塊世代よりやや上の世代が高齢化した﹄こと﹂にあるとのこと。いくらカレーが好きでも、年を取れば味覚が変わり、体が受け付けなくなる。元記事によればカレールーの市場は1997年の710億円から2007年には600億円、レトルトカレーも1999年の500億円から2006年の370億円に落ち込んでいる(単価減少も理由にあるようだが)。 その推測がある程度正しいことが分かるのが、次のアンケート結果。なぜカレーライスを食べる機会が減ったのかの理由を語ってもらうものだが、上位に﹁家族団らんの機会が減った﹂﹁(まとまった量を作る必要があるため)一度作ると食べ続けねばならないから﹂がついている。
﹁自宅でカレーライスを食べる回数が減った理由﹂ 要は家族団らんや食生活そのものが変化し、﹁分量が多い料理の需要が減った﹂ということになる。いちどきに大量に作るカレーよりは、小分けして少量作れる料理の方が良い、ということなのだろう。﹁ならば小分けできるレトルトカレーなら問題は無いのではないか﹂と思うが、それはそれで﹁好みが変わったから(≒年を経て味覚が変化した)﹂の部分に該当すると思われる。 ●ファンの減少という現実。増やす努力は? ﹁主力カレー支持層が高齢化しても、新たな支持層を生み出せば﹂という思いはある。ただ振り返ってみると、キャラクターグッズとしてのレトルトカレーは毎月のように新作が発売されても、新しいイメージ・ブランドのカレーはほとんど生み出されていない。かつて︻ハウス食品(2810)、油脂半減・カロリー3割減の次世代カレールウ﹁プライム﹂開発︼にもあるように︻ハウス食品(2810)︼が﹁次世代カレー﹂をうたって新しいカレールーを発売したが人気は今ひとつ。﹁ホワイトカレー﹂や﹁カレー鍋﹂﹁スープカレー﹂など新しい料理方法を生み出して人気を集めているが、かつて﹁カレールー﹂を生み出して﹁団塊よりやや上の層の人たち﹂をカレー好きにしたようなインパクトのある商品はまだ生み出されていない。 要は今のカレー(ライス)は 1.主力支持層が高齢化して味覚が変化し、ファン離れが続いている 2.新たな支持層になりうる子どもたちは﹁家庭団らん﹂の機会が少なく、カレーを食べるチャンスも減り、好物となりにくくなる。
この2点から、国民食としての地位を失いつつあることになる。この点、料理過程で同じように一定量を作らねばならない﹁みそ汁﹂の﹁みそ﹂も同じ状況にあり、みその消費量も大いに減りつつあるとのこと。この点ではインスタントラーメンや牛丼の方が有利だろう(もっともこちらにも原材料の高騰という重い十字架を背負わされているのだが)。 元記事では指摘されていないが、カレー(ライス)のアピール不足も正直あったと思う。宣伝戦略の変化もあるだろうが、かつての﹁ハウスバーモントカレー﹂のようなテレビCMが長期的に流されることはほとんどない。新製品の発売を告知するものが短期間流れておしまい。家族団らんの機会が減り、家庭で作られる回数が減るのなら、市場ニーズの変化にあった商品を開発したり、それらの商品も合わせてカレーの存在をアピールしなければならないのに、だ。 ■カレーライス業界に 求められているもの 1.現在のファンの維持 (中高齢層) 2.新しいファンの形成 (子ども達) 幸いにも︻﹁華麗舞﹂ゲットのチャンス! ハウス食品が﹁カレーでファイト!キャンペーン﹂実施中︼にあるように、日本そのものを元気付けようという名目で、カレー業界そのものの活性化を図ろうというイベントがスタートしている。また︻海上自衛隊のご自慢レシピ200品目、毎週2回・2年かけて公開︼で解説しているが、海上自衛隊のレシピでもカレーを独立したカテゴリとして設けるなど、カレーファンの底力は侮りがたいものがある。 ﹁華麗舞﹂のようにカレーそのものではなくカレーに必要不可欠なもの(ちなみに﹁華麗舞﹂はカレーライスをより一層美味しく食べられるお米)の改良から攻めてみるという手もあるだろう。また、元記事にもあるように﹁高齢化したカレーファンにも食べられるようなタイプのカレー(流動食タイプや成分などに配慮したもの)﹂の開発をし、一度つかんだファンを逃がさない新商品も求められよう。もちろん新しいカレーのファンを増やすため、特に子ども達へのアピールを忘れてはならない。 ●統計データも語る、子ども達の食生活からのカレーライスの﹁転落﹂ ちなみに3年前の統計データだが、︻平成17年度児童生徒の食生活等実態調査報告書︼によると、小学校においてはカレーライスは寿司に続き第二位の地位を占めている。
小学生が好きな料理(上位のみ転載) しかし全体で22.9%の支持しか得られていない。そこからさらに10年前にさかのぼった︻平成7年度﹁児童生徒の食生活等実態調査結果﹂ ︼では、カレーライスはハンバーグやラーメンを抜き、堂々のトップ(しかも支持率は47.0%)を占めていた。好きな料理の多様化・分散化も同時に見られるが、10年間で小学校におけるカレーライスの支持層が半減してしまっている現実がここにある。 また調査対象・方法はまったく異なるが、[このページ(nhk.or.jp)は掲載が終了しています]によれば、2007年において﹁日本人が好きな料理ランキング﹂においてカレーライスの地位は第七番目。寿司や刺し身、ラーメン、みそ汁、焼き魚、焼肉に続く位置にある。
誰もが知っている料理の一つ、カレーライス。しかし﹁誰もが知っている﹂からこそ、その地位に安穏とし、現状維持はもちろん躍進を図るための努力が足りなかったことは否定出来まい。
原材料費の高騰など、周囲の環境はますます厳しい様相を見せている。その中でいかに多くのファンを得てカレーを浸透させるか。斬新で役立つ、センスある企画や、それを世に広めるだけの実行力が求められることだろう。
(最終更新:2013/08/13)
﹁最近自宅でカレーライスを食べる回数はどのように変化したか﹂ というように、﹁減った﹂が﹁増えた﹂を大幅に上回っている。その差17ポイント。少なくともこの17%の人の分、カレーライスの消費が減少したことになる。 原因としてはいくつか考えられるが、一つが﹁家庭の団らんが減ったこと﹂。親子が揃って食卓を囲んで食事を取る機会が減ったため、皆で食べる料理の代表ともいえるカレー(他に鍋料理なども該当するだろう)の消費量が減ったのだという。 それよりも大きな理由は、﹁カレーを食べる主力層﹃団塊世代よりやや上の世代が高齢化した﹄こと﹂にあるとのこと。いくらカレーが好きでも、年を取れば味覚が変わり、体が受け付けなくなる。元記事によればカレールーの市場は1997年の710億円から2007年には600億円、レトルトカレーも1999年の500億円から2006年の370億円に落ち込んでいる(単価減少も理由にあるようだが)。 その推測がある程度正しいことが分かるのが、次のアンケート結果。なぜカレーライスを食べる機会が減ったのかの理由を語ってもらうものだが、上位に﹁家族団らんの機会が減った﹂﹁(まとまった量を作る必要があるため)一度作ると食べ続けねばならないから﹂がついている。
﹁自宅でカレーライスを食べる回数が減った理由﹂ 要は家族団らんや食生活そのものが変化し、﹁分量が多い料理の需要が減った﹂ということになる。いちどきに大量に作るカレーよりは、小分けして少量作れる料理の方が良い、ということなのだろう。﹁ならば小分けできるレトルトカレーなら問題は無いのではないか﹂と思うが、それはそれで﹁好みが変わったから(≒年を経て味覚が変化した)﹂の部分に該当すると思われる。 ●ファンの減少という現実。増やす努力は? ﹁主力カレー支持層が高齢化しても、新たな支持層を生み出せば﹂という思いはある。ただ振り返ってみると、キャラクターグッズとしてのレトルトカレーは毎月のように新作が発売されても、新しいイメージ・ブランドのカレーはほとんど生み出されていない。かつて︻ハウス食品(2810)、油脂半減・カロリー3割減の次世代カレールウ﹁プライム﹂開発︼にもあるように︻ハウス食品(2810)︼が﹁次世代カレー﹂をうたって新しいカレールーを発売したが人気は今ひとつ。﹁ホワイトカレー﹂や﹁カレー鍋﹂﹁スープカレー﹂など新しい料理方法を生み出して人気を集めているが、かつて﹁カレールー﹂を生み出して﹁団塊よりやや上の層の人たち﹂をカレー好きにしたようなインパクトのある商品はまだ生み出されていない。 要は今のカレー(ライス)は 1.主力支持層が高齢化して味覚が変化し、ファン離れが続いている 2.新たな支持層になりうる子どもたちは﹁家庭団らん﹂の機会が少なく、カレーを食べるチャンスも減り、好物となりにくくなる。
この2点から、国民食としての地位を失いつつあることになる。この点、料理過程で同じように一定量を作らねばならない﹁みそ汁﹂の﹁みそ﹂も同じ状況にあり、みその消費量も大いに減りつつあるとのこと。この点ではインスタントラーメンや牛丼の方が有利だろう(もっともこちらにも原材料の高騰という重い十字架を背負わされているのだが)。 元記事では指摘されていないが、カレー(ライス)のアピール不足も正直あったと思う。宣伝戦略の変化もあるだろうが、かつての﹁ハウスバーモントカレー﹂のようなテレビCMが長期的に流されることはほとんどない。新製品の発売を告知するものが短期間流れておしまい。家族団らんの機会が減り、家庭で作られる回数が減るのなら、市場ニーズの変化にあった商品を開発したり、それらの商品も合わせてカレーの存在をアピールしなければならないのに、だ。 ■カレーライス業界に 求められているもの 1.現在のファンの維持 (中高齢層) 2.新しいファンの形成 (子ども達) 幸いにも︻﹁華麗舞﹂ゲットのチャンス! ハウス食品が﹁カレーでファイト!キャンペーン﹂実施中︼にあるように、日本そのものを元気付けようという名目で、カレー業界そのものの活性化を図ろうというイベントがスタートしている。また︻海上自衛隊のご自慢レシピ200品目、毎週2回・2年かけて公開︼で解説しているが、海上自衛隊のレシピでもカレーを独立したカテゴリとして設けるなど、カレーファンの底力は侮りがたいものがある。 ﹁華麗舞﹂のようにカレーそのものではなくカレーに必要不可欠なもの(ちなみに﹁華麗舞﹂はカレーライスをより一層美味しく食べられるお米)の改良から攻めてみるという手もあるだろう。また、元記事にもあるように﹁高齢化したカレーファンにも食べられるようなタイプのカレー(流動食タイプや成分などに配慮したもの)﹂の開発をし、一度つかんだファンを逃がさない新商品も求められよう。もちろん新しいカレーのファンを増やすため、特に子ども達へのアピールを忘れてはならない。 ●統計データも語る、子ども達の食生活からのカレーライスの﹁転落﹂ ちなみに3年前の統計データだが、︻平成17年度児童生徒の食生活等実態調査報告書︼によると、小学校においてはカレーライスは寿司に続き第二位の地位を占めている。
小学生が好きな料理(上位のみ転載) しかし全体で22.9%の支持しか得られていない。そこからさらに10年前にさかのぼった︻平成7年度﹁児童生徒の食生活等実態調査結果﹂ ︼では、カレーライスはハンバーグやラーメンを抜き、堂々のトップ(しかも支持率は47.0%)を占めていた。好きな料理の多様化・分散化も同時に見られるが、10年間で小学校におけるカレーライスの支持層が半減してしまっている現実がここにある。 また調査対象・方法はまったく異なるが、[このページ(nhk.or.jp)は掲載が終了しています]によれば、2007年において﹁日本人が好きな料理ランキング﹂においてカレーライスの地位は第七番目。寿司や刺し身、ラーメン、みそ汁、焼き魚、焼肉に続く位置にある。
(最終更新:2013/08/13)
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