ゲーム保存協会のイースのプロトタイプのこと
2022年11月21日
2022年11月23日
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イース・プロトタイプの研究~開発誕生秘話~ – ゲーム保存協会ゲーム保存協会
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記事に書かれているが、これはハドソンで﹃イースⅠ・Ⅱ﹄を開発するときに、ハドソン札幌にやってきたファルコムの開発資料の︵フロッピー1箱だったと記憶している︶一つだった。
中身はイース1・2製品版︵プロテクトなし︶、ソース・アートリソース・サウンドリソース・そしてこのプロトタイプと、10枚ぐらいのディスクが入っていたモノだと記憶している。
そしてⅠ・Ⅱの開発にプロトタイプなんかいらないわけで、中身の確認で進藤が一度立ち上げたのを見たぐらいにしか印象はない。
ところがだ、この33年ほどあと、驚くことが起こった。
ある日、物持ちがいい長山君が﹁イースのプロトタイプ版と書かれたFDが出てきた。これは﹃イースⅠ・Ⅱ﹄の開発をしているとき、保存していたものだと思う。どうしましょう﹂と連絡してきたのだ。
で、ちょっと考えて、最も保存がしっかりしていそうなゲーム保存協会に寄付するのがいいだろうということで、寄付することにした。
ファルコムはどうしたという話があるかも知れないが、ファルコムは初期のいろいろな資料をゲーム保存協会に渡しており、結果は変わらないと考えられる。
ならば途中、どこかでなくなるリスクがある方法ではなく、直接渡した方が安全だ。
知る限りでは、ファルコム本社にもこのプロトタイプは残っておらず、オリジナルスタッフが持っていなければ、現存する唯一のディスクだと思われるので、全く良く残していたもんだよ、長山君といいたい。
かくしてチャレアベの記事で見られたプロトタイプ版が今に復活したわけだ。
また、ちょっと書いておくと、フロッピーディスクはカビやすく、表面の磁性体がはがれると言った問題もあり、保存には結構注意が必要だ。
そしてプロトタイプは今から数えて35年以上も前の骨董品なので、保存協会でイメージ化された方が明らかに後の資料としての安定度は高いわけだ。
少なくとも僕は動作可能状態で保存しておく自信はない。
あとはゲーム保存協会の記事について、自分が知っていることを補足しておきたい。PC版の画像はゲーム保存協会からの引用だ。
まずこのプロト版が出来たのはいつ頃かと考えると、87年初頭と思われる。
というのも、当時のファルコムでは広告を始めるのはマスターアップ3か月前と言うルールがあり、イースの発売日は1987/6/21なので、5月末にマスターだったとすると5-4-3で3月。
3月に広告を入れると決めるためには2月に入稿しなければいけないので、1月には広告を入れるか入れないかが決まっていたことになり、プロトタイプは1月末には出来ていたのだろう、と合理的に推測できるわけだ。
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このニワトリを描いたのは古代彩乃さん。
山根曰く﹁モンスター描けっていったら、描いたのがニワトリですよ? モンスターでニワトリ描きますか!?﹂
と、僕には言っていたが、どうせいい加減な指示をだしたのだろうと思っている。
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マップのグラフィックが簡素なのは山根が道に拘っていたからだ。
でも道を滑らかに曲げるためにはどうしてもパーツが必要で、128個しかパーツが使えないので、とうとう諦めることになり、それで道のパーツを他に使えるようになってマップが豪華になる。
山根はよほどこれが悔しかったらしく﹃イースⅠ・Ⅱ﹄では道を作っていいかと僕に聞いてくる。
﹃イースⅠ・Ⅱ﹄は基本的にPC版の2倍のキャラクターを1つのマップで使っていて、しかもスプライトは別扱いなので遥かに豪華に出来るから聞いてきたわけだけど、僕はロダの樹やその他がちゃんと豪華になるなら﹁まあゼピック村までのコースが分かりやすくなるからいいけど﹂と答えた。
なお、なんで、そんなに道に拘っていたのかは全く不明だ。
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また山根は橋にもやたらとこだわっていて、アーチ形にして、その上をちゃんと走れるようにしてくれと頼んできたので、いいよと答えた。
なお実装は長谷川君。
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店の中や家の中の絵は一枚絵ではなく、マップと同じようにチップで作られている。これは一枚絵だと入る自信がなくて、圧縮するためだったそうだ。
これがMSX2用に移植するときに容量に余裕があるというので、古代彩乃さんが1枚絵で描き直す。
かくしてMSX2ユーザーの今日に至るまでの自慢のタネが出来上がるわけだ。
なおMSX2版のイラストはBard’s taleのAmiga版のグラフィックに影響を受けたと、証言をいただいている。
またこのプロトタイプ版ではダームの塔は小さいはずだ。下手をするとこのディスクに入っているはず。
山根は﹁5階ぐらいしかなかったはず﹂と言っていた。
これが天空篇を諦めることになり、ディスクBを全部ダームの塔にすることになって、大改築され巨大な塔になるわけだ。
言い換えると、このプロトタイプ版はスタッフがまだ﹁イース1とイースⅡを1本のゲームとして作り上げようとしていた時期﹂の最後のころに作られたディスクだったと思われる。
残念ながら誰も詳しく覚えていなかったので、これは推測なのだけど、いろいろな人の話を総合すると天空篇を諦めてダームの塔を大きくすると決めたのは2月頃らしいので、この推測はまず正しいだろうと思われる。
また、この時は女神はまだ一人でフィーナ︵に対応するキャラ︶しかおらず、吟遊詩人はただのお遊びキャラだった。
だからコンパイルの魔王ゴルベリアスのパロディのコルベリアスなんてふざけた名前がついている。これまた山根曰く﹁自分がハマってるからって、ボスキャラの名前つけますか!?﹂だ。
これが間に合わなくなって、ダームの塔を巨大して天空篇をナシにすることになり、かつ橋本さんがダームの塔から戻れなくしたことで二人の女神になり、コルベリアスさんは格上げされて女神レアになるのだけど、今回の記事のおかげで、その過程も結構具体的に想像がついた。
もともとは﹁イースの本﹂を読めるメガネはバジュリオン︵廃坑のボス︶を倒した後、手に入ることになっていたことがわかった。これは、このあと天空に行くはずで、そこではジェバに読んでもらうことが難しいと思われたので、ここで渡すつもりだったのだろう。機能はジェバにでも説明させればOKだ︵なお、メガネの機能は同じだと想定している︶。
ところが天空篇がなくなり、残りのイースの本3冊も全部ダームの塔に置かれることになる。
しかも橋本さんはダームの塔から街に戻るのはイヤだということで、ウィングを没収してしまう。
山根はずっとこれをボヤいていてⅠ・Ⅱを作っている時、機会あるごとに﹁塔からでて街に戻れるようにしてくれ﹂と僕に言っていた。これは実はゲーム的にはほぼ何も問題はないのだけど、改変の度が過ぎるということで、僕は蹴っ飛ばしていた。
そしてゴーバンが出入口を管理しているダームの塔に死体が転がっているのも不自然だが、宝箱だと機能を説明できるキャラクタがいない。
なんせダームの塔の中のNPCはラーバ・ルタ・ドギしかいない。そして説明できるのは明らかにラーバだけだ。
で、困ったあげくに出てきたのがレアを女神の片割れにするという案だったわけだ。女神ならメガネだってもっていようというものだ。
ところがこうなるとダルク・ファクトの最初のテキストがうまくハマらなくなる︵ファミコン版で確認可能だが下に引用しておく︶。なんせ女神は二人で後半部分の整合性が取れていない。しかも詩人のレアが女神なのはなんとなく匂わせているわけで、そうなるとファクトのセリフは難しい。
知らないなら﹁もう一人の女神はどこかわからんが、まあいい﹂なんてムチャになるし、知ってたなら﹁あそこにいた娘は女神だがもう捕えたので問題ない﹂、いや、メガネ渡されたしさあ、みたいな破綻したことになる。
よくも本をそこまで集めたものだ。誉めてやろう。
だがイースの本に隠された謎を知られてしまっては、私の計画が、ふりだしに戻ってしまう。
この世にダルク・ファクトの名を残すためにもお前には死んでもらう。
ここから先が出ないようになっていた。
冥土のみやげにいいことを教えてやろう。
お前が神殿から助けた娘はジェンマの章に記されるイースの国の女神。
彼女は悪魔を封印するために数百年の間、地下で眠り続けていたのだ。
私が封印を解いたため、あの娘も眠りから覚めたというわけだ。
もっともイースの時代の記憶は失っているがね。
お前を殺した後、あの娘は私がはした女としてもらってやる。
ファミコン版イースのダルクファクトのセリフ
で、修正に困った挙句に女神の下りは全部コメントアウトされることになったのだろうと、今では僕は想像している。
なお、ダームの塔のNPCの少なさや食糧事情はスタッフの間でもネタになっていたらしく、桶谷さんや倉田君が良く宮崎さんに﹁このジジイ、何喰ってんだよ﹂とか﹁どんな風に暮らしてるんだよ﹂と突っ込んでいたと証言がある。
また1では双子の女神と言う設定はなく、単純に二人の女神だった。
これが双子になるのは、双子の月との共通点を持たせるためだと思われるのだけど、双子の月を決めたのは五十嵐さん。
五十嵐さんは別世界の印象を強めるために月を2つにしただけだったという、まるで関係のない設定だ。
このように偶然が重なりあって、今のイースシリーズに繋がる設定は出来上がっていくわけだ。
ここら辺の話は若干、データが古くなりつつあるが…イース通史で一通り書いているので、興味があったらドンゾ。
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