「食べログ」から火がついた「ステルスマーケティング」問題。ステマと疑われての炎上を恐れ、ネット上でのマーケティング中止を検討する広告主が出てきている中、ステマ排除が広告業界の急務になっている。「Ameba」で1万人以上のタレントブログを運営、ブログマーケティングを手がけてきたサイバーエージェントは1月末、紹介する商品やサービスが提供されたものであると記事中に書く「関係性の明示」の徹底を決定した。口コミを利用した推奨広告、いわゆる「口コミ広告」の健全化には今、どのような取り組みが必要なのか──。
黒田勇樹さんは騒動を逆手にとって「ステマをする権利」を販売。「99%OFF」で3000円だ
﹁高いタレントのブログだと、250万円ぐらいですね﹂。2年前、広告代理店でタレントブログに商品を掲載させる仕事に携わっていた30代男性から、生々しい金額が飛び出す。﹁PVによってタレントが4つくらいのランクに分けられていました。最高で250万円、安いと50万円ぐらいだったと思います。﹃このタレントはファッションに強い﹄、﹃携帯からよく見られている﹄など細かい情報が載っている分厚い資料があり、それをクライアントに見せて営業していました﹂
男性はタレントブログを運営する会社を通じて、口コミ広告を手がけていた。案件がまとまった場合、﹁この商品はブログ運営会社から頂きました﹂といった文章が記事に掲載されていたが、﹁ネットに詳しくない一般の人がそれを読んで﹃広告﹄だと分かるかはグレー。ステマと指摘されても不思議ではない﹂と苦笑する。
悪質な例だと、ブログ運営会社を通さずに直接、タレントの所属事務所に口コミ広告を持ち込む広告代理店もある。﹁その方が安くなりますが、広告だと書かれないことが多い。ある商品が同時期、何も注釈なしに複数のタレントブログで掲載されていたら、ステマの可能性が非常に高いです﹂
こうしたステマ問題をユーザーから度々指摘されてきたのが、現在、約1万900人のタレントが公式ブログを持つ﹁Ameba﹂だ。運営会社のサイバーエージェントでは独自にガイドラインを設け、﹁関係性の明示﹂をクライアントやタレント事務所に推奨してきた。
しかし、2010年に﹁ペニーオークション﹂と呼ばれるオークションサイトの体験談を複数タレントが掲載、ネットで炎上した。サイバーエージェント広報担当者は、﹁タレント事務所に直接依頼されていたと思われ、こちらでは関与していませんでした。このように明らかに分かるものについては記事を削除していますが、細かいものは把握しきれないのが実態﹂と明かす。
また、昨年9月にも、タレントの石黒彩さんと杉浦太陽さんのブログで花王製品を紹介する記事がほぼ同時に掲載された。このケースは通常の口コミ広告だったが、記事中に﹁関係性の明示﹂がなかったことから、﹁ステマではないか﹂とユーザーの批判が相次いだ。﹁弊社と事務所担当者間でのコミュニケーション不足が原因﹂とサイバーエージェントは説明する。
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