Petite jete
ミクシィは1月21日、昨年9月に試験的にスタートした、働く20代女性向けの洋服定期購入サービス﹁Petite jete﹂︵プティ ジュテ︶を2月15日に終了すると発表した。当初1000人限定サービスとしてスタートしたが、利用者数は数百人程度にとどまり、﹁コンセプトが受け入れられなかった﹂と、同社Petite jeteプロジェクトの玉井賀子さんは話す。
同社は昨年、新規事業を創出する専門部署﹁イノベーションセンター﹂を設立。04年、ベンチャー企業の同社がmixiを生み出した当時のようにスピード感を持って新サービスを展開しようという試みで、Petite jeteは同センターからリリースした新サービスの第2弾だが、大きな成長は見込めないと判断し、早々に撤退することにした。
Petite jeteの企画の発端は、ミクシイ米国本社から仕入れた﹁米国でサブスクリプション︵定期購入︶コマースが立ち上がり始めている﹂という情報だった。﹁面白そうだ﹂と、ミクシィ経営陣が参入を決定。玉井さんを含む社員3人が担当者として春ごろに企画をスタートした。
SNS﹁mixi﹂と相性が良く、ユーザーの悩みを定期購入で解決できる商材の可能性を探る中、﹁20代女性向けのオフィスカジュアル﹂というコンセプトが浮かび上がってきた。社会人になりたての20代女性は、オフィスのドレスコードに悩む人も多く、オフィスで着られるカジュアルな服の定期購入にニーズがあるのではと判断。洋服を毎月5種類提案し、1つを選んで購入できる、月額4200円︵初月3150円︶のサービスを設計した。
外部のパートナー企業の力を借りながらスピーディに事業開発を行い、企画検討から3カ月ほどでサービスをスタート。mixi内の広告やリスティング広告、リアルイベントなどプロモーションも展開したが、ユーザーは数百人程度にとどまった。ただ、一度利用したユーザーの継続率は50%を超えていたという。
想定よりユーザーが少なかった理由について玉井さんは、﹁洋服を買うファクターは、商品の魅力でしかない。オフィスカジュアルの悩みを解決できるから買うのではなく、好き嫌いや値段などで決めるため嗜好が強く出る﹂ためと分析。実際の利用者も、オフィスカジュアルに悩む人ではなく、Petite jeteが提案するファッションのテイストが好きで購入してくれた人で、﹁想定より市場が小さく、最初のユーザーにコンセプトが刺さらなかった﹂と反省する。
ユーザーが好みに合う服を見つけやすいよう、ラインアップを増やすなど対策も考えられるが、そもそもサブスクリプションモデルは、同じ商品をできるだけ多くの人に購入してもらうことで原価を下げ、利益をあげる仕組みで、ラインアップ拡充にも限界がある。﹁ラインアップを増やしてファッションECサイトに寄せていけば売れるかもしれないが、それをミクシィがやる必要があるのかと考えると疑問がわき、続けないという判断をした﹂
同社の石井瞬イノベーションセンター長によると、同センターの目標は、mixiやFind Job!に次ぐ事業を創出すること。Petite jeteの事業は、スピード感を持って立ち上げたことなどを評価しつつも、﹁思ったほど市場規模が大きくなく、市場を拡大させるにしても、そのスピードはミクシィが望む速さではなさそう﹂と判断。﹁それなりの期間で、mixi、Find Job規模のビジネスが立ち上がるというのが見えないと継続は難しい﹂ため、終了を決めたという。
100近いスマートフォンアプリを同時並行で短期間に開発し、ヒットアプリを生み出したサイバーエージェントのように、矢継ぎ早なチャレンジから次のヒットの種を生み出している企業もあるが、ミクシィは、﹁千本ノックのようなことはやらない﹂と石井さんは言う。
﹁スマートフォン向けサービスを展開するスタートアップが増え、起業しなくても個人がサービス提供できる時代になったが、千本ノックのような手法だと世界中のエンジニアと同列でスタートしなくてはならないので逆にハードルが高い。事業を立ち上げる前に仮説を明確にし、結果を見てその都度判断していく﹂
今後も2、3カ月に1つ程度のペースで新規事業を展開し、途中経過をシビアに見て継続の可否を判断しつつ、﹁なるべく早く、3〜5年のスパンで、mixiやFind Job!に匹敵するようなサービスを作りたい﹂と石井さんは話している。
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