「海賊版サイトをブロッキングする代わりに、権利者が海賊版サイトに直接DoS攻撃を仕掛ける」――政府の知的財産戦略本部が8月10日に開催した、「インターネット上の海賊版対策に関する勉強会」で、IT関連の団体で構成する日本IT団体連盟(理事長:ヤフー社長の川邊健太郎氏)がこんな提案を行ったことが話題になった。提案資料がこのほど、政府のWebサイトで公開(PDF)され、ネットで議論を呼んでいる。
日本IT団体連盟が「インターネット上の海賊版対策に関する勉強会」に提出した資料
資料では、海賊版サイトの技術的対策として、﹁アクセス集中方式﹂がブロッキングに代わる手段になると提案。権利者が自ら、違法サイトにアクセスを集中させ、サイトにつながりにくくするという案で、いわば﹁権利者による海賊版サイトへのDoS攻撃﹂の提案だ。
この﹁アクセス集中方式﹂について、資料では、﹁1億人の権利を犠牲にして得るものが少ないブロッキングに比べれば、海賊版サイトの運営者だけが影響を受け、回避手段を講ずるにはコストがかかる構造であることが、優れている﹂﹁ISPなどの協力をあおぐことなく、権利者が自ら今にでも採用できる方策﹂だと、メリットを強調する。
DoS攻撃による業務妨害は犯罪だが、﹁麻薬販売サイトの運営を妨げても偽計業務妨害罪には該当しないという考え方などに照らせば、業務妨害罪にはそもそも該当しないという考え方もある﹂﹁最終的判断は裁判所によるが、不正な侵害行為に対する正当防衛として、違法性を阻却するという整理も可能﹂などと、違法にならない可能性について言及している。
また、同連盟は﹁参加企業数5000社、従業員数400万人に及ぶ国内最大のエンジニア集団を代表する団体であり、様々なノウハウを持っているため、より効果的なアクセス集中手段の実装について技術的支援を行える﹂とも提案している。
この提案に対するネットの反応を見ると、﹁思考実験としては面白い﹂﹁ブロッキングよりマシ﹂といった評価も一部であるものの、﹁犯罪行為だ﹂﹁正当防衛にならないのでは﹂﹁同じサーバを使っている他のサイトにも影響が出る﹂など批判的な意見が多い。
10日の勉強会では、海賊版対策として、ブロッキングの法的問題や、フィルタリングの強化、CDN事業者に対する訴訟の可能性なども整理しており、それぞれ資料が公開されている。資料に基づく議論も行われたが、15日時点で議事録は未公開だ。
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