Opinion : 自称・正義の味方はタチが悪い (2008/6/16)
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例の、秋葉原で発生した殺人事件について、やれ﹁格差社会が怪しからん﹂とか﹁派遣労働の問題があーだこーだ﹂とか﹁オタク叩きがどーのこーの﹂とか、もう騒々しいったらありゃしない。今の世の中に何も問題がないなんて主張するつもりはないけれども、たとえば、一方で激安製品を求めて、他方で人件費の切り下げに文句をいうって、なんか矛盾してない?
ただ、正直いって、今回の事件に関してもっともムッとしたのは、事件に便乗して、自分のために利用している人の存在。当事者はもちろん否定するだろうけれど、傍から見るとそう見える。
つまり、今回のように世間の耳目を集める事件が発生すると、それを自分の平素の主張に、手当たり次第に結びつける人の存在。ネタが﹁オタク叩き﹂でも﹁格差社会怪しからん論者﹂でも﹁派遣労働怪しからん論者﹂でも﹁小泉構造改革怪しからん論者﹂でもいいんだけれど。
身もフタもないことを書いてしまうと、こういう人達にとって、きっかけは何でもいい。平素から﹁○○叩き﹂を生業としていて、それに結びつけられる話題なら何でもいい。﹁○○が怪しからんと論陣を張るためなら、つかみの話題は何でも良かった。今も反省していない﹂というわけ。こじつけの度が過ぎれば、秋葉原の殺人事件から﹁在日米軍は出て行くべきだ﹂に話を持って行く人だって、出るかも知れない。
こういうのって、いわゆる﹁結論オリエンテッド﹂の派生型、といえると思う。﹁自称・正義の味方﹂と言い換えてみてもよいかも知れない。何か特定の問題について取り上げる際に、問題・原因・解決策を終始一貫して考えている訳ではなくて、﹁○○を叩きたい﹂ばかりが先行している。だから、叩きのために使うネタがコロコロと変わるし、分かりやすい話題ばかり使う。
ところが困ったことに、パッと見には、本当に社会問題などについて真剣に考えている人との区別が難しい。﹁何かの問題について、事件などをきっかけにして批判的論陣を張る﹂という点については、両者に共通点があるから。手当たり次第に、キャッチーな話題に食いついている… かどうかは、平素から当人の言動を観測していないと分かりにくい。
こりゃ困った。本当なら、平素からの言動を追い続けることで区別できそうではあるけれども、それもちょいと手間がかかる。ということで、﹁自称・正義の味方﹂に共通するポイントがないかと考えてみた。つまり、単に悪役を決めてぶっ叩くことに自己陶酔を感じている人と区別できるポイントがあるんじゃないかなあと。
その 1 : 対立軸が単純かつワンパターン
﹁政府・与党・国家権力は間違っているvs庶民感情・市民の声は正しい﹂、﹁主流派・多数派は間違っているvs反主流派・少数派の自分は正しい﹂といった類の論陣ばかり張っている。もうちょっと悪知恵がはたらく人になると、﹁過去には間違った認識を持っていたけれども、いち早く目覚めて正しい方向に転じた﹂というアピールをする。
その 2 : 物事を二進法でしか考えられない
ここのところ、本館や blog で何度も書いていることだけれど、世の中の物事はたいてい、二進法ではまとまらない。現実世界というのはアナログで、単純な善悪二元論では割り切れないのだけれど、﹁自称・正義の味方﹂はそのことを無視して乱暴にぶった切る。また、そうやって一刀両断するのが格好いいと思っている。
その 3 : 分かりやすい﹁正義﹂を振りかざす
﹁私は弱者の味方です﹂とかいう類の、分かりやすい正義を前面に出す態度が目立つ。美辞麗句を武器にして他者を攻撃する態度、といいかえてみてもよいかも。﹁正義を唱える俺様は偉い﹂という思いが過剰に強いのだろうか? その割には、代案は出さない、あるいは出してもロクなものじゃない。
その 4 : 自己顕示欲が強い
なにしろ、﹁そこらの愚民どもと違って、世の中の間違いを指摘できる俺様は偉い﹂と思っているから、自己顕示欲も相応に強い傾向がある。だから、ブロガーだったら blog ランキングやアクセス数の増減について、むやみにこだわる場合が少なくない。
その 5 : 態度がむやみに攻撃的
さらに、自らの攻撃対象、あるいは自らと意見を異にするものに対して、攻撃的な態度、あるいは見下した態度、侮蔑的な言動をとりがち。俺様定義で、勝手に﹃勝利宣言﹄するパターンもよくある。
その 6 : その割に打たれ弱い
ところが、反対意見が続々とぶつけられてくると、話題そらし・コメント封殺/削除・IPアドレス晒しといった態度に出やすい。自分のいうことが正しいんだからと、ドーンと構えてスルーするならまだしも。
また、痛い点を突かれて二進も三進もいかなくなると、﹁自分みたいな小物のいうことなんて、誰も聞き入れっこない﹂とか﹁こんな場末の寂れた blog に云々﹂とかいう類の、逃げとも居直りとも取れる発言をしたり、﹁後釣り宣言﹂をして逃げを打ったり。自分が論陣を張ることで世の中を変えたいと思っている (らしい) 割には、ちと覚悟が足りない。
その 7 : 一般化が好き。ダブスタが好き
個別の事例として処理すれば済む話なんじゃないの、と思える話でも、叩きの対象に関わりがあれば一般化して利用しまくる。その割にはダブルスタンダードも好きで、同じ事象でも叩きの対象が絡むと罵倒しまくるのに、叩きの対象と対立する勢力だとスルー。
厄介なのは、二進法の罠に陥らないで現実的に物事を考える人の発言が、往々にして単純明快さを欠いてしまうこと。だから、単純明快に悪役をぶった切って済ませる、自称・正義の味方 (実は単なる破壊屋さん) に人気をさらわれやすい。
イラク情勢なんか見ていればおわかりの通り、物事を破壊するよりも立て直すことの方が、何倍も、否、何十倍も手間と時間がかかるもの。そのことを知ってか知らずか、攻撃的・破壊的な論ばかり展開する、しかも周囲を見下したような態度をとりがちな人に、ロクな人はいない。
上で挙げたような条件の全部、あるいは多くが当てはまる人のことは、とりあえず用心して見てみる方がいいんじゃないかなあ。といったところで今週はおしまい。
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