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  お姉さん。わたしはそれの間じゅう、栄養豊かな干草が焼かれる

火事場で、真昼の炎の燃えさかり広がり満ちつつ沈むのを見ていま

した。からだが長い間あおむけにひらかれ、この先行きを思案しつ

つ思い出したのは、少女のころ、駅員の高ぼうきをあれほどに好み、

盗み出す算段からホームに寝ころがった時の胸高に締めた帯の苦し

さでした。それにしても産後のかすかにくり返す収縮のしびれが、

たまらない快感で今も続くのです。このよろこびは終わりのない輪

つなぎの歌の歌い手、あの浮浪者の哲学のように、苦しみの果ての

笑いなのでしょうか。



妹よ。あなたが出産した晩、わたしの腹は明け方まで痛みました。

痛みが合図となる確かな血縁がわたしたちなら、あなたの胸がお乳

で張りつめる時、わたしのふくらはぎは肉がこそげ、あなたのお尻

の桃色の突起がはれる時、わたしのこめかみには青筋が立ちます。

あなたが子を産んだ時、わたしが腹を腐らせて死につつあるのも、

ものの道理というもの。そんなすべての疑問態のかたちに、赤ん坊

の手足を折り曲げるのはおやめなさい。



お姉さん。わたしの赤ん坊は産まれる時脳漿がはみ出して今やこの

ていたらくです。この空っぽの頭のまま、やがては警官にまとわり

つきその警棒を愛して、結婚出産の知らせをわたしたちに届けてく

れるのでしょうか。それともあなたの先行きのように、やがては病

院の玄関をしずしずと入り、やがては車椅子で長い廊下をひた走り、

やがては激突して胃病の老人もろともぐしゃぐしゃに骨を折り、や

がては死に際に遺言を語り終え、すっかり死んでしまうのでしょう

か。



妹よ。あなたの完璧な未来の物語のおかげで、わたしの胸の地図

の暗い海のようなアルプスは、思いがけず滑らかに息をつくことが

できました。とうに死んだわたしたちの両親から、あの街灯のはず

れのうす暗がりに、すぐにも明滅の合図がありましょう。わたしと

あなたの赤ん坊とは、まるで双児のように手を取りあい、よりそっ

て死へおもむくでしょうが、その前にわたしは、その割れた頭骸の

てっぺんから突き出た脳漿のこぶを愛撫して、このように尋ねるで

しょう。「どっちが頭なの?」 その時あなたの赤ん坊は、わたし

のやせた胸の中で、たまらずうめくほどのいやらしい睦言をささや

くはずです。





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  わたしの欲望はあなたたちの愛からははるか遠くの砂地のサボテ

  ンのようなものにあります。色彩にあふれながらもすぐにあおざ

  め、係累からも隔たり、わたしというかよわいトゲを求めていつ

  も咲いているのです。しかしわたしは見えず聞こえず面影はその

  姿をなぞることもできません。ええむしろ面影もなくあいまいな

  サボテンのままで、わたしの恋人はむなしくわたしを待っていま

  す。彼女はいつもわたしだけを身内に包みたいと願っていますが、

  彼女もわたしの姿を知りませんから、あらゆる形を包むことので

  きるように、休みなくぶるぶるとふるえながら、自分の姿を変え

  ているのです。あなたたちの愛がわたしという形をとって仮りそ

  めに現れるのを潔しとせずに、幻の恋人と思いを遂げるまで、わ

  たしは一本の単純なアンテナとなっていたい。わたしがキャッチ

  するのは、はるかな恋人の絶えまない欲情そのものです。







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林の南の一角の、あの節くれ古びた合歓の木の下で、群れる雲の影

のように花が満開になるころに、もう一度あなたに出会いたい。

そこは山腹の墓地へ続く草はらの斜面のかたすみだ。合歓のブラシ

がたっぷりと紅を含み、散るたびにひと筆ずつ、わたしたちの思い

出を刷き消して小半日。

耳朶をたどる指先のざらつきや、たえきれず吐いては飲む溜息など、

人を苦しめるあらゆるものを忘れ果てるころ、二人は出会う。

二人は、合歓の木の下の草はらにかしいで立つだろう。わたしたち

はすべての家族に先立たれている。もうふくらまない乳房とくずれ

るばかりの膝がしら。

二人は少しずつ歩み寄って、相手の影を踏まないように立ち止まる。

ちらつく木もれ陽に目をしばたたき、わたしは屈みあなたは仰向い

て、おたがいをしげしげと眺める。

そのときわたしたちは、二人の顔によろこびだけが表れているのに

気づくだろう。そしてほとんど同時に口をひらく。「あなたはどな

たですか」と問うために。







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