社員の幸福感、AIで測定・個別指南 日立が実験
﹁ちょっとコーヒーを飲んで休んだ方がいいですよ﹂
﹁上司に相談するならば明日の午前中がお薦めですよ﹂
仕事中にそんなメールが社内用スマートフォン︵スマホ︶から送られてくる時代がすぐに来るかもしれない。
日立製作所は27日、人工知能︵AI︶が社員個人に対して幸福感を高めるアドバイスを与える社内実験を始めたと発表した。名札型のウエアラブル端末に搭載した加速度センサーで体の揺れやうなずきなどの動きを毎秒50回測定し、心の状態を推定する。体の動きから社員の幸福感の数値をAIで分析したうえで、メールなどで﹁幸福感を高めるために、こう動いたらいい﹂と個別にアドバイスをする仕組み。幸福感が高い時には営業成績が向上することも分かっており、業務効率を高めるためだ。営業担当者600人で効果を詳細に分析し、今年度内の実用化をめざす。
日立の矢野和男・人工知能ラボラトリ長は加速度センサーで測定した体の動きと、﹁楽しい﹂﹁悲しい﹂といった幸福感を示す感情に関連性があることを発見した。体がゆれるような動きが一定のパターンでない場合は﹁多様で自然な動き﹂と見なされ、幸福感が高いという。一方、動きに一定の傾向があり、不自然に体が動いている場合、幸福感が低いとされる。
この技術を使い、既に名札型のウエアラブル端末を使った組織運営のコンサルティングサービスを昨年度から始めている。日本航空や三菱東京UFJ銀行など13社から受注済み。社員に端末を取り付けて、例えば﹁休憩場所を設けたほうがいい﹂﹁上司と部下の会議を開いたほうがいい﹂など、会社側に業務を効率化するような提案をしている。
今回の日立社内での実験は、個人へのアドバイスにより営業成績にどの程度、影響があるのかを調べる。名札型ウエアラブル端末に赤外線センサーなども組み合わせて、どこに誰と一緒に居るとき、あるいは毎日何時ごろに幸福感が高まっているかを推定し、業務を効率化するようなアドバイスにつなげる。個人の行動データやアドバイスの内容は本人以外は閲覧できないようしてプライバシーにも配慮したという。
日立は顧客に深く浸透するため、東原敏昭社長が営業部門の強化を訴えている。4月には営業体制の見直しを前面に打ち出した組織再編に踏み切った。今回の取り組みが営業力強化につながるのか。社内実験の動向に注目が集まる。︵多部田俊輔︶