対北朝鮮であらゆる選択肢 米、圧力路線鮮明に
来日中のティラーソン米国務長官と安倍晋三首相、岸田文雄外相の会談は、対北朝鮮政策が最大の焦点となった。ティラーソン氏は﹁あらゆる選択肢がテーブルの上にある﹂と表明し、武力行使も選択肢に入れながら﹁圧力路線﹂に軸足を移す構えを鮮明にした。挑発行動を続ける北朝鮮との間で緊張感が高まるのは避けられず、日米韓の連携が試される。
﹁過去20年間努力してきたが、北朝鮮の非核化は失敗した。脅威は増大しており、違うアプローチが必要だ﹂。ティラーソン氏は16日の日米外相会談後の記者会見でこう断じた。過去の政権とはいえ、米政府高官が外交政策を﹁失敗﹂と表現するのは異例だ。
北朝鮮の核危機は、1993年に北朝鮮が核拡散防止条約︵NPT︶脱退を表明したころから顕在化した。20年あまり前のことだ。当時のクリントン政権は翌94年、北朝鮮が核開発を凍結する見返りに軽水炉の提供を受ける米朝枠組み合意をまとめた。続くブッシュ政権も当初は圧力路線だったが、後にテロ支援国家の指定解除など対話路線に転じた。
オバマ政権は北朝鮮による核放棄の取り組みを待つ﹁戦略的忍耐﹂の方針を掲げたが、北朝鮮に核・ミサイル開発の時間的猶予を与える結果に終わった。トランプ政権は北朝鮮にこれ以上の核開発や弾道ミサイルの発射を思いとどまらせるにはより強い圧力が不可欠との立場を取る。
ティラーソン氏は会談で岸田氏に見直しの方向性を説明。続く首相との会談も1時間あまりに及んだ。ただ、見直しの具体策については、岸田氏は会見で﹁しっかり擦り合わせができた﹂と述べるにとどめ、内容は明らかにしなかった。
想定される最も強硬な選択肢が軍事面での対応だ。米メディアによると、米政府内では北朝鮮への武力行使や金正恩︵キム・ジョンウン︶体制の転換も選択肢に含めて政策見直しが進んでいる。
武力行使では米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル︵ICBM︶の発射実験を北朝鮮が宣言した場合、関連する軍事施設を限定的に空爆する案などが浮上。体制転換は、ブッシュ政権下の2003年にイラク戦争でサダム・フセイン政権を転覆させたケースなどが念頭にある。
こうした圧力強化には日米韓の擦り合わせが欠かせない。トランプ政権の出方をうかがうように北朝鮮は今月6日の4発の弾道ミサイル発射について﹁在日米軍が標的﹂と宣言し、揺さぶりをかけている。日米両政府は外務・防衛担当閣僚協議︵2プラス2︶を早期に開く方向で調整。米側の政策見直しを踏まえて抑止力の強化策の検討を急ぐ考えだ。
一方、韓国では5月に予定する大統領選での革新系野党の優勢が鮮明で、次期政権は北朝鮮との対話路線を取る可能性が高い。有力候補は日本や米国との防衛協力にも後ろ向きとされる。トランプ政権の圧力路線と一線を画すことになれば、北朝鮮が日米韓の足並みの乱れをついてくる可能性がある。