米大統領報道官、メキシコ国境の壁「輸入課税で捻出」
︻ワシントン=河浪武史︼スパイサー米大統領報道官は26日、トランプ大統領が指示したメキシコ国境の壁の建設財源として﹁メキシコのような国の製品に、20%の輸入課税をかけて捻出する﹂との考えを表明した。同氏は議会共和党が検討する法人税制の改革案に言及したとみられるが、関税の大幅な引き上げと混同され、市場に混乱が広がっている。
トランプ氏は国境の壁の建設費用を﹁メキシコに払わせる﹂としてきたが、メキシコ側は明確に拒否しており、財源確保が不透明になっている。共和党上院トップのマコネル院内総務は26日、壁の建設費用に120億~150億ドル︵約1兆3800億~1兆7200億円︶かかるとの見方を示した。
スパイサー氏は米フィラデルフィアでの共和党集会に出席後、財源案について記者団に説明した。議会共和党は連邦法人税率を35%から20%に下げ、輸出事業の課税を免除する一方で輸入ビジネスは課税強化する法人税制改革案を検討中だ。スパイサー氏は同案に言及したとみられるが、具体的な説明がなく市場には混乱が広がっている。
スパイサー氏の発言は﹁検討中の包括的な税制改革案は、米国が貿易赤字を抱えているメキシコのような国からの輸入に課税する仕組みだ。500億ドルの輸入に20%を課税すれば、年100億ドルの税収が得られ﹃壁﹄の財源を簡単に賄える﹂というものだ。
議会共和党の法人税制改革案は﹁国境調整型﹂と呼ばれ、メキシコ製品に限らず、日本などすべての輸入品の課税を強化する仕組みだ。日本の消費税が輸出品の課税を免除し、輸入品には国内製品と同じく課税する仕組みと同様だ。トランプ氏は同案を﹁複雑すぎる﹂と否定的にみてきたが、税財政の決定権を持つ米議会は、新たな法人税制の導入に向けて議論を加速している。
ただ、消費税のような付加価値税と異なり、法人税の﹁国境調整﹂は世界貿易機関︵WTO︶が禁じる輸出補助金にあたる可能性がある。輸入品の大幅な値上がりにつながるため、米議会内でも新制度の導入に慎重な意見がみられる。また、議会共和党の法人税改革案は、税率引き下げによって10年間で9千億ドルの税収減になるとの試算があり、壁の建設費用が賄えるとのスパイサー氏の主張を疑問視する声もある。