スズキ、1年で燃費2.4キロ伸ばしたムダ活用法
スズキが8月25日に発売した軽自動車「ワゴンR」はわずか1年で燃費を従来比8%(2.4キロメートル)高めて32.4キロメートルに改善した。その鍵はモーターで駆動を補助する技術にある。減速時のタイヤの回転力で発電した電気を車内のカーオーディオなどに利用する仕組みを発展させたのだ。そこには工場の蛍光灯1つもムダにしないスズキの精神が垣間見える。
減速時にためた電気で走る
だがISGを中核とするS―エネチャージの開発は一筋縄ではいかなかった。最初の課題がISGのコストだ。従来のエネチャージに搭載し、発電機の役割を果たしている「オルタネーター」にモーターの機能はない。ISGは性能が高まる分、当然コスト高になる。しかもS―エネチャージを搭載するのはワゴンRのような軽自動車だ。モデルチェンジ前と比べ価格差はせいぜい数万円以内に収めなければならない。複数のメーカーに相見積もりをした結果、スズキの求める性能を実現した上で最も低額の提案をしてきた三菱電機からの調達を決めた。実際、モデルチェンジ前と比べた値上げ幅は4万円前後に抑えている。
二つ目が高い燃費性能と乗り心地の両立にある。燃費向上を最優先し開発を進めたところ、比較的早い段階でリッター32.4キロメートルの水準は実現できたという。一方でアクセルを踏み込んでも「走り感」が弱かったのだ。ワゴンRの開発責任者である鈴木直樹・四輪技術本部第一カーライン長は「お客さんに我慢を強いることだけは絶対にしてはならない。そこから乗り心地をつくり上げていった」と語る。モーターによるエンジンへのアシストを入れる最適なタイミングやアシストを入れた際でも走行にショックを起こさないようにするなど「乗り心地を高めるため、試行錯誤を繰り返した」(高柴氏)。