慰安婦巡る河野談話、強制裏付け資料なく 元官房副長官が証言
従軍慰安婦に関する1993年の﹁河野談話﹂発表時に官房副長官だった石原信雄氏が20日の衆院予算委員会に参考人として出席し、談話を作成する際に﹁日本政府、日本軍が︵慰安婦を︶強制的に募集したことを裏付ける資料はなかった﹂と述べた。当時の関係者が談話の作成過程での不備を指摘した形だ。
石原氏は﹁16人の元慰安婦からヒアリングし、それをもとに談話をまとめた﹂と説明。韓国政府との調整については﹁作成過程ですり合わせはあったかもしれないが、私は確認していない﹂と語った。日本維新の会の山田宏氏への答弁。
安倍晋三首相は河野談話の信ぴょう性にかねて疑問を投げかけており、第1次政権の2007年3月には﹁政府が発見した資料の中には軍や官憲による、いわゆる強制連行を直接示す記述は見当たらなかった﹂との答弁書を閣議決定している。
石原氏の証言について菅義偉官房長官は記者会見で﹁第1次政権の閣議決定の内容とあまり変わらない﹂と指摘。元慰安婦の証言の検証に関して﹁歴史学者が研究しているということも現実にある。︵誰が証言したのか︶機密を保持する中で検討したい﹂と語った。ただ政府内では﹁匿名のまま検証するのは簡単でない﹂︵外務省幹部︶との見方もある。
慰安婦問題は90年代に入って元慰安婦が日本政府を相手に補償請求訴訟を起こし、韓国政府も問題提起し始めた。元慰安婦の賠償請求権について、日本政府は65年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決したとの立場をとっている。
ただ宮沢政権の93年に河野談話を出した後、村山政権の95年に民間からの募金も含めて﹁女性のためのアジア平和国民基金﹂︵アジア女性基金︶を設立、元慰安婦に﹁償い金﹂を渡してきた。基金は役割を果たしたとして第1次安倍政権の07年3月に解散している。
韓国事情に詳しい静岡県立大学の小針進教授は﹁資料がなかったからといって強制性がないとは言い切れず、再び議論が活発になるだろう。強制性を裏付ける資料がないことを強調すれば、韓国の反発を招くのは確実だ﹂と話している。