OpenFlowブームは本物か? ユーザーとベンダーが語る(前編)。ITpro EXPO 2012
ユーザー企業とベンダが壇上に上がり、いまネットワーク分野で最大の話題となっているSoftware-Defined NetworkとOpenFlowは役に立つのか、どのような課題があるのかについての議論が、先週都内で開催されたイベント「ITpro EXPO 2012」で交わされました。
ユーザー代表として登壇したのは、カブドットコム証券のIT戦略担当 谷口氏と、さくらインターネットでクラウドを担当する大久保氏。ベンダー側としは、NTTデータの馬場氏とブロケードコミュニケーションズシステムズの小宮氏。
世界中のどこよりも日本が盛り上がっていると言われているOpenFlowのブームは本物なのでしょうか。議論のダイジェストを紹介します。
![fig](http://www.publickey1.jp/blog/12/itproexpo01.jpg)
なぜSDN/OpenFlowに注目しているのか?
ユーザー企業にOpenFlowは必要か?
加藤氏 OpenFlowやSDNがビジネスの視点でどうなのか、というのは多くの人が気になると思います。ユーザーの立場で谷口さんはいかがですか? 谷口氏 ユーザー企業にSDN/OpenFlowは必要なのでしょうか? OpenFlow製品の営業が当社に来た場合、私が言いそうなことを考えてみました。 まず﹁ネットワーク仮想化にすればコスト削減ができます﹂というセールストーク。しかし、一体何のコストが下がるんだと。SDN/OpenFlowで運用コストが下げられるかというと、すぐにはうんと言えそうにありません。 次が﹁インフラの自由度が上がります。新規事業を柔軟に導入し、迅速な配置が可能です﹂というもの。確かに自由度は増すかもしれませんし、実際にいまの現場ではハードウェアの準備に時間がかかることもあって、︵ソフトウェアで実現できる︶SDN/OpenFlowはそれに対しては役に立ちそうだと思う。 しかしそもそも論としてインフラの自由度が高まったとして、それを生かす事業が思いつかないから困っているんだと! SIerさんにインフラを丸投げしている会社なら、そもそもビジネスのアイデアとインフラの構築が連動していない。こうした環境でSDN/OpenFlowが役立つかというと、そうでもないと思う。 ﹁集中管理が可能なので、社内に優れた技術者が不要になります﹂。でも、新しい技術を使いこなすには優秀な技術者が必要なはず。言ってることが矛盾してないか? と。 私が勝手に﹁システムコスト力学の第一法則﹂と言っているのですが、﹁孤立系のコストの総量は変化しない﹂。つまり金銭的コストが下がったとしたらその分別の何らかのコスト、例えばリスクが上昇していると見るべきだと思います。 例えば安いIaaSに丸投げしたらバックアップがなくて障害時に戻せなかったとか、アジャイル開発で速度を優先したらユーザー企業側の作業が増えたとか。 こうしたリスクを何に転化するかがビジネスでありアイデアであるのに、それを忘れて︵SDN/OpenFlowを︶営業されても何がメリットなのかが見えてきません。インフラが柔軟でもそれを活かす経営スピードの方が課題だ
馬場氏 ネットワーク仮想化で何のコストが下がるのかは、どういう運用をしているのか次第というところがあります。一般に複数のインフラを統合できるので、ハードウェアコストは下がると思いますが、OpenFlowコントローラを導入しなければならず、そこにコストがかかったら全体が下がるかどうかは微妙なところ。 運用コストについては、ユーザー自身で管理ツールのGUIでネットワークの構成ができるのでアウトソーサーへの委託費が減るところはユーザーにメリットがあるかもしれません。ただそんなに構成変更が頻繁にあるのかどうか。そんなに変更がなければインフラが柔軟であってもそれほどコストメリットはないかもしれないなと思います。 谷口氏 証券では他社さんとの接続など月に1回くらい、多いともっとあります。海外の証券と仕事をすると実感するのは意志決定が速いこと。当社は速いほうですが、それでも負けますね。だから他社さんは︵SDN/OpenFlowによるインフラの柔軟性を︶そこまで欲しがるのかなあと。 馬場氏 それよりもレイヤ8、レイヤ9にあたる経営スピードの方が課題ですね。 ≫後編に続きます。後編では、OpenFlowで機器コストが下がるか? などについて。あわせて読みたい
OpenFlowブームは本物か? ユーザーとベンダーが語る(後編)。ITproEXPO 2012
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