明かりの本
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生ひ立ちの歌
幼年時
私の上に降る雪は
真(まわ)綿(た)のやうでありました
少年時
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のやうでありました
十七―十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のやうに散りました
二十―二十二
私の上に降る雪は
雹(ひよう)であるかと思はれた
二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました
二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……
私の上に降る雪は
花びらのやうに降つてきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍るみ空の黝(くろ)む頃
私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました
私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のやうでありました
私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生したいと祈りました
私の上に降る雪は
いと貞潔でありました
底本‥﹁中原中也詩集﹂岩波文庫、岩波書店
1981︵昭和56︶年6月16日第1刷発行
1997︵平成9︶年12月5日第37刷発行
底本の親本‥﹁中原中也全集 第1巻 詩 ﹂角川書店
1967︵昭和42︶年10月20日印刷発行
初出‥﹁山羊の歌﹂文圃堂
1934︵昭和9︶年12月10日
入力‥浜野安紀子
1998年11月29日公開
2010年11月2日修正
青空文庫作成ファイル‥
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